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第36話 真夏の海


揃ったところでみんなで海に入った


「ひゃっ、つめた……っ」

「つめたっ……。」


冬月さんも、寄せては返す波にそっと足を浸しながら、どこか楽しげに目を細めた。 いつもは教室の隅で静かにしている彼女が、少しだけはしゃいでいる姿。そのギャップに、優の心臓はさっきからうるさいほど鳴っている。


「でしょ? ほら、山田も早く入りなよ!」


最川さんが、砂浜で準備運動


(のふりをしてポーズを決めている)蓮に向かって声をかける。


「おう、今行くぜ最川さん! ――優、準備はいいか。今日は泳ぎまくるぞ!」


蓮が女子たちの前で「山田」として振る舞いながら、優にだけ分かるようなニカッとした笑みを浮かべて駆け寄ってきた。


「ちょっと、山田! 勢いよく来すぎだって!」 バシャバシャと大きな水しぶきを上げて突っ込んできた蓮に、最川さんが笑いながら水をかけ返す。


「わわっ、やったなー! 優、援護しろ!」 「えっ、俺も!? ……わかったよ、蓮!」


気づけば、四人で激しい水の掛け合いが始まっていた。 優は必死に水をかき分けながら、ふと隣で控えめに、でも確実に楽しそうに水をパシャパシャと飛ばしている冬月さんを見た。


「水瀬くん、見て!」


冬月さんが、海面に浮かぶ綺麗な貝殻を見つけたのか、嬉しそうに指をさした。 その無邪気な瞳に見つめられ、優は疑惑を抱えながらも、今はただこの「夏の奇跡」のような時間を壊したくないと強く思った。

しばらく体を動かして昼ご飯を食べることになった

波打ち際ではしゃいだ後、心地よい疲れと空腹を感じた四人は、砂浜の端にある海の家へと向かった。


「あー、お腹空いたぁ……!」 最川さんがお腹を押さえながら、潮風にたなびく「氷」の旗を目指して歩く。 四人はそれぞれ、焼きそばやラーメンなど思い思いの

メニューを買い込み、潮の香りが漂うテーブル席についた。


「「「「いただきます!」」」」


勢いよく食べ始めたその時、最川さんが箸を止めて、優と蓮を交互にジロリと見た。 「ねぇ、前から気になってたんだけど……山田と水瀬くんって、いつからそんなに仲良くなったの? さっきから呼び捨てだし」

その問いに、蓮が「あ……」と口に含んだ焼きそばを飲み込んだ。 「あー! いや、ほら! 男ってのは、一度お互いの『本気』を見せ合えば、昨日まで他人でも親友になれるもんなんだよ! な、優!」

蓮は焦りを隠すように、強引な理論を展開して優に同意を求めた。優も慌てて言葉を繋ぐ。


「あ、うん。そうだね……なんていうか、波長が合ったっていうか……。気がついたら、こうなってたんだ」


「ふーん……本当にかな〜? 男子って単純だね」


最川さんはまだ少し疑わしそうだったが、優はその隙に、隣で静かに箸を進めていた冬月さんに話を振った。


「冬月さんは、夏休みは何してるの?」 「ええと……家でゆっくりしたり、図書館に行ったり、かな」

優の胸の中で、また「あいりん」の残響が心地よく響いた。


「最川さんこそ、夏休みは何してるの?」


蓮の問いに、最川さんは「私は家の手伝いかな。意外と忙しいんだよ」と答える。 そういえば、村岡とさやちゃんも来られればよかったのにね」 最川さんがポツリと言う。 「まあ、あいつらは仕方ないよ。部活が忙しい時期だろ?」

蓮の言う通り、バスケ部のエースである村岡と、バドミントン部の青山さんは、今が大会前の追い込み時期のはずだ。

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