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第30話 推しバレ!?

第30話です、ここまで読んでいただきありがとうございます、ぜひ感想など書いてもらえれば嬉しいです!!


放課後、校門の前にはお母さんの車が停まっていた。 優が事情を説明すると、お母さんはパッと顔を輝かせて嬉しそうに言った。


「あら! 優の友達が家に来てくれるなんて。もちろん大歓迎よ、みんな乗りなさい」


「ありがとうございます!」


山田、最川さん、冬月さんの三人はお礼を言い、車に乗り込んだ。 家に着くと、お母さんは仕事へ行く準備をしながら言った。


「じゃあ、お母さんはこれから仕事だから。あとはごゆっくりどうぞ。優、しっかりおもてなしするのよ」


「……わかってるよ。行ってらっしゃい」


「ありがとうございます、お邪魔します!」


三人が見送ると、お母さんは仕事へと向かっていった。

エレベーターで上がり、家の玄関に着く。


「お邪魔します……」


三人が靴を揃えて中に入る。優はリビングの扉を開け、みん

なを招き入れた。


「リビングの方が広いから、ここで勉強しようか」


(自分の部屋を見られたら、星夏愛のグッズとかで引かれるかもしれないしな……) そんな不安を抱えながら優が言うと、最川さんが部屋を見渡した。


「わあ、広いね!」 「そこの椅子、適当に座っていいよ」

「水瀬の部屋はあるのか?」 山田が何気なく聞くと、優は言葉を濁した。 「あるにはあるんだけど、散らかっていてさ……」 「えー、水瀬くんの部屋、見たかったな〜」


最川さんが冗談めかして笑い、みんなでリビングのテーブルを囲んだ。

優は、冬月さんの隣に座った。 それから一時間半ほど、ペンを走らせる音だけが響く集中した時間が過ぎた。

時刻は五時半。最川さんがふとスマホの時計を見て顔を上げた。


「あ、ごめん! 弟が帰ってくる時間だから、私そろそろ帰らなきゃ」 「あ、うん。全然大丈夫。家、近いの?」


「うん、実はここから結構近いんだよね」


最川さんが参考書をカバンにしまい始めると、それを見ていた山田が


「あ、そういえば」と席を立った。


「ごめん水瀬俺も帰らなきゃ」

(もしかしてしずくたんの配信か) あからさまな山田の態度に、優は内心で苦笑いしながら「了解」と応えた。

二人がリビングの出口へ向かおうとした時、最川さんが冬月さんに声をかけた。 「冬月さんはどうする? 一緒に帰る?」

冬月さんは少し迷ったように、手元のノートを見つめた。


「え……私一人だけ残ったら、迷惑かな……。私も、お暇しようかな……」

それを聞いた優は、自分でも驚くほど自然に、でも必死に言葉を返していた。

「全然迷惑なんかじゃないよ。むしろ誰かと勉強したほうが捗るし……。」

「じゃあ水瀬くんがいうなら……」



冬月さんは少し驚いたように目を見開き、それから小さく微笑んだ。


山田と最川さんが帰り、リビングは急に静まり返った。 二人きりになってから三十分ほど、ペンを走らせる音だけが響いていたが、ふと冬月さんが顔を上げて質問してきた。


「ねぇ、水瀬くんは……勉強、得意なの?」 「うーん、正直普通かな。全然、自慢できるほどじゃないよ」


そんな他愛ない会話をしていた時、冬月さんが少し申し訳なさそうに切り出した。


「水瀬くん、お手洗い……借りてもいい?」 「うん、全然いいよ。リビングを出てすぐ左にあるから」 「ありがとう」


冬月さんが席を立つのを見届け、優はふとスマホのSNSを確認した。


(今日は、配信休みか……) 「あいりん」の投稿を見て、少しだけテンションが下


がる。ふと画面の端を見ると、バッテリーの残量がわずかだった。


「あ、スマホの充電がない」


優は自分の部屋にある充電器を取りに行こうと、席を立った。 リビングを出て、廊下の先にある自分の部屋へ向かう。すると、なぜか部屋の扉が少し開いており、中から明かりが漏れていた。


(あれ、なんで電気が付いてるんだ? 消し忘れたかな……)


不審に思いながらも、何気なくそのドアを押し開けた。 しかし、そこにいたのは、いるはずのない人物だった。


「ふ、冬月さん……!? なんでここに」

「あ……っ!」


そこには、優の部屋の中を呆然と眺めていた冬月さんが立っていた。 優は一瞬で血の気が引いた。部屋には「星夏愛」のポスターやグッズが飾ってあり、自分が熱狂的なファンであることが一目でバレてしまう状態だった。


「ご、ごめん! お手洗いの場所を迷っちゃって、ここかなって開けたら……」


冬月さんは顔を真っ赤にして焦っている。伝え方を間違えた自分のせいだとは分かっていても、優はパニックで頭が真っ白になった。


「あ、えーと……これはその、推しっていうか、なんというか、その……!」


必死に言い訳を探す優。引かれる、キモいと思われる――。 最悪の想像が頭をよぎったその時、なぜか冬月さんはすっと落ち着きを取り戻し、どこか嬉しそうな、優しい表情で言った。


「知ってるよ。……星夏愛あいりんでしょ?」


優は、心臓が止まるかと思うほど驚いた。まさか、あの大人しい冬月さんの口から、その名前が出てくるとは夢にも思わなかったからだ。

「え……!? 冬月さん、知ってるの……?」 「あ……うん。私も、たまに……見るかなって」

冬月さんはそう言って、はにかむように笑った。 自分の隠していた世界を肯定された安心感と、まさかの共通の話題。 優の部屋に漂っていた気まずい空気は、意外な展開によって少しずつ変わり始めていた。

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