第24話 松葉杖
病院での診察を終え、優は担任の先生の車で自宅まで送ってもらった。 助手席で松葉杖を抱え、窓の外を流れる景色を眺める。たった数時間の出来事のはずなのに、一階半の高さから飛び降りたあの一瞬が、遠い昔のことのように感じられた。
家に着くと、担任の先生は優を支えながら玄関まで運び、出迎えた母親にこれまでの経緯を説明した。
「本当に、申し訳ありませんでした。私の監督不行き届きで、優くんに大怪我を……」
先生は玄関先で、これ以上ないほど深々と頭を下げた。
「そんな……先生、顔を上げてください。この子は、困っている人を助けるために自分で動いたんですから」
母親は驚きつつも、優の無事を確認して静かにそう言った。
先生を見送り、ようやく自分の部屋に戻った優は、ベッドに倒れ込むようにして息を吐いた。
「……はぁ、疲れた。本当色々あった一日だったな」
体中が痛む。特にギプスで固定された右足は、ズキズキと熱を持って疼いている。 一段落ついたところで、優はふと思い出した。
(そういえば、バタバタしすぎて『あいりん』のSNS、全然確認してなかったな……)
スマホを取り出し、お気に入りの画面を開く。 しかし、目に飛び込んできたのは、予想だにしない文字だった。
投稿は三日前で止まっており、そこには一言だけ添えられていた。 『しばらく配信をお休みします』
「え……何があったんだろ」
いつもなら毎日欠かさず更新されていたはず。具体的な理由も書かれていない短い報告に、優は胸のざわつきを覚えた。自分の足の痛みも忘れ、画面をじっと見つめ続ける。
優が憧れる「あいりん」に、一体何が起きているのか。 そして、このタイミングでの休止。窓から飛び降りてまで彼女の動画を見ようとした優にとって、それは足の骨折以上にショックな出来事だった。




