第25話 週明けの学校
週が明け、優はギプスで固定された足を引きずりながら、母親の車で学校へと向かった。 いつもなら徒歩20分の道のりも、今は車に頼るしかない。窓の外を流れる見慣れた通学路が、これまでとは違う景色に見えた。
校門に着くと、母親に荷物を持ってもらい、優は慣れない手つきで松葉杖をついて校舎へと進んだ。一段ずつ、慎重に階段を上り、ようやく自分の教室に辿り着く。
ガラリ、と音を立てて教室の扉を開けた瞬間、クラス中の視線が一斉に優へと集まった。
「あ……水瀬くん。来たんだね」
真っ先に駆け寄ってきたのは、最川さんだった。 彼女は優の痛々しい松葉杖姿を直視し、申し訳なさで顔を曇らせる。そして、付き添っていた優の母親に深々と頭を下げた。
「本当に、すみませんでした……! 私のせいで、水瀬くんにこんな大怪我をさせてしまって……」
消え入りそうな声で謝る彼女に対し、優の母親は優しく微笑んで答えた。
「最川さんね。そんなに謝らないで。優は、あなたを助けるために自分から動いたんだから。あの子が決めたことなのよ」
母親の温かい言葉に、最川さんは驚いたように顔を上げ、言葉を詰まらせた。
そこへ、班のリーダーの山田と、同じ班の村岡もやってきた。
「おい水瀬! 大丈夫かよ。あとから先生に聞いて、マジで心臓が止まるかと思ったぞ!」
山田が本気で心配そうに声をかける。
「本当だよ。昼休みの間、どこ行ったのかと思ってたけど……まさかそんなことになってたなんて」
村岡も、呆れ顔ながらも安堵したような表情を見せた。
教室中が騒がしくなる中、優は松葉杖のグリップを握りしめながら、少し照れくさそうに笑った。 「……みんな、心配かけてごめん」
多くの視線にさらされる気恥ずかしさはあったが、仲間の温かさが、昨日までの不安を少しだけ和らげてくれた。
「水瀬、荷物は俺が持つよ。お母さん、預かります!」
班のリーダーの山田が、優の母親の手から手際よくカバンを受け取った。
「あ、ごめんね。ありがとう、助かるわ。……山田くん、優のことよろしくね」
「任せてください!」
山田が頼もしく応える中、優は松葉杖を慎重に操作しながら、ようやく自分の席へと辿り着いた。
「水瀬、ここに荷物置いとくからな」 「……ありがとな、山田」
クラスメイトのさりげない気遣いに感謝しながら、優が椅子に腰を下ろしたその時だった。
「……大丈夫? その足」
隣の席から、心配そうな声がした。 見ると、冬月さんがじっとこちらのギプスを見つめている。
「……まあ、今はなんとかな」
優は少しだけ強がって、短く答えた。 昨日の救護室での再会とは違い、クラスメイトたちが周りにいる教室の中。 二人の間には、同じ「怪我人」という境遇と、あの夜を共有した者同士にしか分からない、少し特別な空気が流れていた。




