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第21話 優の覚悟

21話です



閉じ込められてから、すでに一時間半が経過していた。 時刻は午後一時を過ぎた頃。本来なら昼食の時間だが、今回は各自で自由にとる形式のため、二人がいないことに誰も気づいていないようだった。


(このままじゃ、時間だけが過ぎていく……)


頼みの綱だったスマホのライトも、長時間照らし続けたせいでバッテリーが残りわずかになっている。


「……本当に、助けに来てくれるかな」


最川さんが、溜まっていた不安を吐き出すように呟いた。その目からは、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちている。


「もう一時間半だよ……。なんで、誰も来てくれないの……っ」

いつも明るい彼女が、暗闇の中で泣きじゃくる姿。優は胸が締め付けられる思いだった。


「大丈夫だよ、きっと誰かが異変に気づいてくれるから……」


精一杯の前向きな言葉も、今の彼女の心には届かない。


「じゃあ、なんで…… なんで誰も来ないの」


不安が限界に達した彼女の叫びに、優は言葉を失った。

沈黙のまま、さらに三十分が過ぎた。 閉じ込められてから二時間。絶望が色濃くなる中、優はふと顔を上げた。 暗がりに目が慣れてきた視界の先、扉の真上に、小さな正方形の窓があるのが見えた。


「……あの上に、窓がある」 「えっ……窓?」


最川さんが、涙を拭いながら上を仰ぎ見る。

優は周囲を必死に探し、棚の陰に立てかけられていた古いハシゴを見つけ出した。


「あったハシゴ……!」


優は重いハシゴを引きずり、扉の上の窓に向かって慎重に立てかけた。


「……水瀬くん、何をするつもりなの?」


最川さんが不安そうな声で問いかける。


「あの窓まで登って、外に出るよ。外に降りられたら、ドアが外から開くかやってみる。もし無理でも、誰かを呼びに行けるから」


優の計画を聞いた最川さんの顔が、さっと青ざめた。


「そんなの、危険すぎるよ! あの窓から降りるなんて……っ」


窓から外の地面までは、一階半ほどの高さがある。 着地の仕方が悪ければ、骨折は免れないだろう。


「水瀬くんにもしものことがあったら……!」


震える声で止める最川さんに向き合い、優は自分の震える手を隠すように、ハシゴの脚を強く握りしめた。


「これしか方法はないんだ。このまま何時間も閉じ込められるわけにはいかないから」


優だって、本当は足がすくむほど怖い。一階半の高さから飛び降りるなんて、運動の苦手な自分にとっては無謀な賭けだ。 けれど、下で見上げている彼女の怯えた瞳を見て、優の心に静かな決意が宿った。


「大丈夫だよ。……最川さんの足が傷つくより、僕の足に少し傷ができるくらいの方が、ずっとマシだから」

「水瀬くん……」


最川さんの呟きを背中に受けながら、優はハシゴの最初の一段に足をかけようと、深く息を吸い込んだ。


優は意を決して、ハシゴの一段目に足をかけた。一段、また一段と慎重に登っていく。


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