第19話 薄暗い倉庫の探しもの
第19話です!
佐々木先生に頼まれ、優と最川さんはグラウンドの隅にある古い倉庫へと向かった。 目の前に現れた建物は、木材が剥き出しで、あちこちの塗装が剥がれ落ちていた。
「……結構ボロいね」
最川さんが少し顔をしかめて呟くと、優も「そうだね」と同意した。 彼女はどこか不安そうな表情を浮かべたが、すぐに気を取り直したように鍵を差し込んだ。
「よし、中に入ってささっと終わらせよう」
「うん」
優が頷くと、最川さんは重い扉を押し開けた。
中に入ると、照明らしきものは見当たらなかった。隙間から差し込むわずかな光だけが、埃の舞う室内を照らしている。 すると背後で、立て付けの悪い扉が風にあおられたのか、「ガタン!」と大きな音を立てて閉まった。
「うわっ、びっくりした……。なかなか雰囲気あるね、ここ」
急な暗転に驚きながら、優が周囲を見渡して漏らす。
「……本当。よく壊れないね、この建物。チャチャっと見つけよう」
最川さんも少し声を震わせながらそう言い、二人は手分けして棚を探し始めた。
優は入口近くの棚の隅に、まとめられた白い塊を見つけた。
「あったよ、軍手」 「お、ナイス!」
最川さんの声が暗闇に響く。残るは着火剤だけだ。 しばらくカサカサと奥の方を探
っていた最川さんが、突然、大きな声を上げた。
「あった!」
「うわっ!?」 静かな空間に響いた声に、優は思わず肩を跳ねさせて驚いた。
「見つかった?」 優が尋ねると、最川さんは「ほら、これでしょ。奥の方に隠れてたよ」
と、埃を払いながら得意げに長方形のパッケージを差し出してみせた。 暗がりの中でも、彼女の目が少し自慢げに輝いているのが分かった。
「見つかったし、戻ろうか」 「そうだね。……扉、開くかな」
優は少し不安になりながら、閉ざされた重い扉へと歩み寄った。
優が重い扉に手をかけ、ドアノブを回そうとした。
「……あれ、ドアノブが回らない」 カチャカチャと音はするものの、ノブは硬く、石のようにびくともしない。
それを見かねた最川さんが、横から手を伸ばした。 「え? 嘘でしょ」 そう言って彼女も力任せにドアノブを回したが、結果は同じだった。古い金属が嫌な音を立てるだけで、扉が開く気配は微塵もない。
「え、なんで回らないの!? さっき入ってきた時は普通だったのに」
焦った最川さ
んの声が、狭い倉庫の中に響く。 優ももう一度、全体重をかけるようにしてドアノブを思い切り回し、肩で扉をぐいぐいと押してみた。だが、古びた扉は冷酷なほどに動かなかった。
「やばい、どうしよう……」
暗闇の中で立ち尽くす二人に、沈黙が降りかかる。 しかし、最川さんはハッとしたように顔を上げた。 「そうだ! 誰かに連絡すればいいんだよ」 明るい声を取り戻した彼女に、優も
「……あ、そうか。その手があった」
と胸を撫で下ろした。 ドアのことに必死になりすぎて、スマホの存在をすっかり忘れていた。
最川さんはポケットからスマホを取り出し、画面をタップする。 だが、その指先が止まった。
「……ここ、圏外だ」
絶望的なトーンで彼女が呟く。 優も慌てて自分のスマホを確認したが、アンテナのマークには無情にも「×」がついていた。
(……そういえば、昨日迷った時も電波が悪かったよな)
ここは山奥だ。しかもこ
の倉庫は、みんながいる校庭から森を一つ挟んだ裏手にあり、周囲には木々が立ち並んでいるだけ。 ここまで離れていては、スマホの電波も届かないし、叫んだところで誰にも気づかれない。
「誰かー! いませんかー!?」
最川さんが扉を叩きながら叫び声を上げた。 それに釣られるようにして、優もこれまでの人生で出したことのないような声量で、喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「誰か――ッ!!」
しかし、二人の叫びは厚い木製の扉と深い森の静寂に吸い込まれ、誰に届くこともなく消えていった。




