第18話 途切れた言葉と鍵の音
第18話です!
……まあ、心配だったら救護室に行って様子を見てきたら?」
最川さんは、からかうような、それでいてどこか複雑な色を帯びた表情でそう言った。
「……そうだね。後でちょっと行ってみようかな」 優が少し照れくさそうに答えると、彼女はふっと思い出したように顔を上げた。
「そういえばさ、前にキャンプファイヤーの話したの覚えてる?」 唐突な問いかけに、優は昨夜の騒動の前の記憶を手繰り寄せる。 「うん、覚えてるよ」 「あのさ……」
最川さんが何かを言いかけ、その瞳がまっすぐに優を捉えた、その時だった。
「おーい、そこの二人! ちょっといいかな?」
背後から太い声が響き、二人の間の空気が弾けた。振り返ると、作業着姿で薪を抱えた事務の佐々木先生が、額の汗を拭いながらこちらを見ていた。
「今、手は空いてるかな? もしよければ少し手伝ってほしいんだが」 佐々木先生は
足元の木材を置きながら、困ったように笑う。 最川さんは、言いかけた言葉を飲み込み、すぐにいつもの明るい表情に戻って「はい! 大丈夫ですよ!」と元気よく返事をした。
「実は、今夜のキャンプファイヤーの準備をしてるんだが、あっちの倉庫に着火剤と軍手を忘れてきちゃってね。重いもの運んでる最中で動けなくて。取ってきてくれるか?」
「わかりました。お任せください!」 「ごめんよ、助かる。これが倉庫の鍵だ。
持ってきたら、正面玄関の受付にある机の上に置いておいてくれればいいから」
佐々木先生は、最川さんの手に金属製の鍵を預けると、また忙しなく作業へと戻っていった。
最川さんは受け取った鍵をジャラリと鳴らすと、まだ少し呆然としている優の肩を軽く叩いた。
「よし、水瀬くんも一緒に行くよ!」 「えっ、俺も?」 「当たり前でしょ。一人じゃ寂しいし、意外と重いかもしれないしね。ほら、行こ!」
最川さんの勢いに押されるようにして、優は立ち上がった。 結局、彼女があの時何を言おうとしていたのか……。それを聞き返すタイミングを逃したまま、二人は誰もいない静かな倉庫へと向かうことになった。




