第17話 オリエンテーション(後編)
後編です
試合の熱気が嘘のように、日陰の空気はひんやりとしていた。 優は芝生の上に腰を下ろし、火照った顔を手のひらで仰ぎながら、遠くで続く次の試合を眺めていた。
(……なんとかなったな)
自分のパスが鈴木に渡り、山田がそれを認めてくれた。 中学の頃の、あの突き刺さるような沈黙とは違う、爽やかな空気。 そんなことを考えながら、ただぼーっとグラウンドの土埃を追いかけていると。
「――水瀬くん、お疲れ様。……意外と、頑張ってたね」
背後から届いたその声に、優の肩がびくりと跳ねた。 透き通るような響き。一瞬、昨夜助けた「彼女」が保健室から戻ってきたのかと錯覚し、心臓が大きく脈打つ。
だが、驚いて振り返った優の視界に入ってきたのは、少し意外な人物だった。
「……最川さん?」
同じ班の最川さんが、スポーツドリンクのボトルを手に、ひょいと隣に腰を下ろした。 彼女は自分の試合を終えたばかりなのか、少しだけ呼吸を乱しながら、優と同じ方向を眺める。
「冬月さんのこと、気にしてるんでしょ? さっき先生に聞いたら、午後からは見学くらいなら合流できるかもって言ってたよ。さすがに競技に出るのは無理みたいだけど」
最川さんは少しだけ表情を和らげ、優の反応を伺うように首を傾げた。 優は図星を突かれたようで、慌てて視線をグラウンドへと戻す。
「いや、別にそういうわけじゃ……。ただ、班のメンバーが欠けてるのは、なんとな
く落ち着かないっていうか」
そんな下手な言い訳を口にしながらも、優の胸のうちは、最川さんが教えてくれた「見学での合流」という言葉に、少しだけ救われていた。




