第14話 看板
第14話です!
いよいよ、三組目の優と冬月さんの番だ。 冬月さんは少し緊張した様子を見せつつも、
「い、行こうか……」
としっかりとした足取りで声をかけてくれた。優は頷きながら立ち上がり、二人で入り口の前まで進んだ。
そこには担任の先生が待機しており、なぜか妙に浮ついたテンションで声をかけてきた。
「よし、この班も最後だな。気合を入れて行けよ!」 「……はい、頑張ります」
何がそんなに楽しいのか。優は短く答えて、冬月さんと共に暗い森の中へと足を踏み入れった。
懐中電灯の細い光で足元を照らしながら、優が少し前を歩き、その後ろを冬月さんがついてくる。
「思った以上に、雰囲気ありますね……」
優が独り言のように呟くと、後ろから「そ、そうだね……」と少し硬い声が返ってきた。
「流石に肝試しってなると、ホラー映画を見るよりずっと怖いね」
彼女はそう言いつつも、パニックになる様子はない。以前、ホラー系は平気だと言っていた彼女の言葉を思い出し、優は(確かに、悲鳴を上げたりはしないんだな)とその落ち着きに少し感心した。
その時、周囲の木々を揺らす風が急に強くなった。ザワザワと騒ぐ葉の音が、まるで誰かの囁き声のように聞こえて背筋が凍る。 少し歩くと、古びた立て看板が現れた。そこには手書きのような文字で、**『この先、左』**とだけ書かれている。
「……本当に、左かな?」
冬月さんがそう言い、優も事前に聞いていたルートと少し違うような気がして、思わず疑問を口にした。
「確かにそうですね……。ちょっと不気味です」
冬月さんも、懐中電灯の光を看板に当てながら冷静に頷く。
光の先には、さらに深く暗い森が口を開けて待っていた。二人は顔を見合わせ、意を決して左の道へと足を踏み出した。 しかし、さっきまで来た道と違って道は険しく、草木が足に絡みつく。
「本当にこの道なのかな……」
彼女は不安げにそう漏らした。
「看板にも書いてありましたし、多分大丈夫だと思いますよ」
優は自分に言い聞かせるように答え、先に進んだ。
だんだんと風が強くなってきた。どれだけ歩いても一向にゴールに辿り着く気配がない。 「ホラーは平気」と言っていた冬月さんも、流石にこの異様な状況が怖くなってきたのか、声が震え始める。
「ほ、本当に大丈夫だよね……?」 今にも泣き出しそうな、心細い声だった。
実際のところ、優にも自信はない。けれど、ここで自分が弱気を見せるわけにはいかなかった。
「大丈夫、きっと大丈夫だよ」 そう彼女に言い、前を向いた。
その直後、背後からぐいっと服を引っ張られる感覚があった。 振り返ると、冬月さんが震える手で優の服の端をぎゅっと掴んでいた。 優は一瞬驚いたが、彼女の不安を察して、そのまま歩くペースを少し落とした。暗闇の中、服を通して伝わってくる彼女の震えが、優の心臓の鼓動を速くさせていた。
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