第10話 意外な同志
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なんだかんだ言って、カレー作りは楽しかった。 後片付けを終えて一旦部屋に戻ろうとしていると、班のリーダーである山田蓮が話しかけてきた。
「水瀬も部屋に戻るのか?」
彼は一人だった。クラスの中心にいる彼が、一人でいるのは少し珍しい気がする。
「あ、うん」 「じゃあ、俺も戻るところだから一緒に行こう」
理由もないし、俺は「う、うん、行こう」と短く返して歩き出した。
(クラスの人気者の山田と二人きりなんて、何を話せばいいんだ……)
沈黙を埋めるように、山田がふと問いかけてきた。
「水瀬って、普段は何して遊んでるんだ? あんまり自分のこと話さないから、少し気になってたんだよ」
「え……まあ、動画を見たりゲームをしたり、かな」 「ゲームか。俺はあんまりしないんだよな」
だろうな、と納得した。彼はスポーツ万能で、外で遊んでいるイメージしかない。
「あー、でも動画は結構見るよ」 「動画? 何系のを見てるの?」
意外な言葉に、思わず聞き返してしまった。すると山田は少し言いづらそうに、周囲に誰もいないかを確認してから声を潜めた。
「……これ、他のやつには内緒だぞ?」 彼がスマホの画面を見せてきた。そこには可憐な美少女のイラストが映っている。
「この、『月城しずく』っていうVTuberなんだけど……」
俺は絶句した。目の前にいる陽キャの権化のような男が、登録者106万人を誇るトップライバーの配信を見ているなんて。
「え……? 山田も、しずくたん見てるの?」 「『も』ってことは、水瀬も見てるのか、しずくたんを!?」
山田がパッと顔を輝かせ、ぐいっと距離を詰めてきた。
「実は、俺も見てるんだ」 「マジか! 周りに隠してたから、こんな近くに同志がいるなんて思わなかったよ」
山田がこんなにニコニコで喋るのを初めて見た。さっきまでの「完璧なリーダー」という壁が崩れて、一気に親近感が湧いてくるのを感じた。
「俺もしずくたんを見てはいるんだけど……」 俺は言葉を詰まらせながらも、思い
切って白状した。 「俺、この『星夏愛』っていうVTuberを推してて」 スマホで『あいりん』のイラストを見せると、山田は「おっ」と目を細めた。
「あいりんかー! 知ってはいるけど、配信はあんまり見たことないな。……へぇ、水瀬はああいう元気系がタイプなのか?」
「タイプっていうか……声を聞いてると落ち着くんだよ」
「わかるわ。俺もしずくたんのASMRで毎日寝落ちしてるし
な!」
思った以上に会話が盛り上がり、気づくと部屋に着いていた。
「そういや、次はいよいよ肝試しか」 「そうだね」 「山田って、怖いの苦手な方?」 「うーん、普通かな。まあ、驚かされるのは心臓に悪いけどさ」
なんて会話をしていたら、ドアの向こうからノックの音が響いた。山田が応対に出ると、そこには担任の先生が立っていた。どうやら運営の手伝いをしてほしいとのことらしい。
「ごめん、先生に呼ばれたから行ってくるわ」 山田は申し訳なさそうな表情で言った。 「大丈夫だよ」
「悪いな。……帰ってきたら、また続き話そうぜ!」 山田は明るくそう言い残して、部屋を出ていった。
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