第5話 アルバートとデューの会話
「お前……少し変じゃないのか? 」
「何がだ? 」
アルバートの講義が終わった直後から、散々白猫状態のミタリーと、狼男のデューの毛で「もふもふ」を堪能した深愛は――。
自室でミタリーに淹れてもらう――極上のミルクティーを味わうために戻っていった。
勉強部屋に残っていたアルバートに、デューが話しかけた。
「今日はジャスミンの香りか? よほどお前の方が変だぞ、デュー」
「うるせぇ、うるせぇ、うるせぇぇぇっ!! 」
冷静に反撃したアルバートに、デューが今にも噛み付かん勢いで叫んだ。
「嘘だよ……」
普段深愛にはけして見せない――自嘲した笑みでデューに呟いた。
「……お前さ……どうしてミアにはあんなにキツく当たるんだ?
厳しく育てようとしているのかもしれないが、この世界に連れてこられてきたばかりでもよくやっていると思うぜ……新米の「ソフィア」様にしてはよ」
「……わかっている」
「んじゃどうしてだよ? お前が連れてきたんだろう?
いつものお前なら、ああもキツい態度で当たったりはしないだろう。
上辺だけでもうまくやるじゃねぇか。だからお前らしくないと俺は……」
デューはここまで言って――アルバートの表情を見て驚き――唖然とした。
ただじっと――デューの顔を、アルバートは見つめたまま。
「……何だよ……気持ちわりぃな……」
「お前が……羨ましいよ。デュー」
寂しそうな微笑みで、デューを見て。
デューはふぅと――ため息をついた。
「なぁ……まさかと思うがさ。お前……ミアに……」
そう言いかけるデューに、アルバートは急に背を向けた。
「デュー。明日、ミア様を連れて、「ハイドランジア」へ行ってみようと思う」
「……何を突然? 人の街に連れて行ってどうすんだよ?
下々の暮らしを見学する……ってか? 」
「そんな感じだ。
ミア様には「アイコーン」の血は四分の一だけだぞ。
後は人の血を色濃く継いでおられる。
いくらあの「アイディール」様のお孫様とは言え……王宮に閉じこもっているばかりでは、息が詰まってしまうだろう? 」
「だけどよ。
オーガストの連中がどう出るかわかったもんじゃ……」
「だからお前とミタリーにもついてきてもらう。
その後の勇者たちの動向も気になるしな……」
「あの「おバカ勇者」かぁ。
俺は気にする必要なんざ、さらさらないと思うがね」
肩を竦めて呆れるデューに、アルバートは皮肉っぽく笑ってみせる。
「あの勇者はバカでも、周りが放っておかないだろう。
特に……今まで俺たちを散々食物にしてきた「冒険者ギルド」の連中が……だ」
「……なるほど。そういうことか……」
デューの口元が大きく上がり――挑戦的な笑みを作り出す。
「だから……ミア様を護ってくれ」
「言われずとも……それが「プレーローマ」たる俺たちの使命だろうが」
「……その通りだ」
アルバートは、デューに小さく頷いてみせた。
◆◆◆
「うーん、美味しい」
甘い香りに、濃厚なミルクと紅茶が絶妙に絡み合う――ミタリーの淹れてくれるミルクティーは、まさに「極上の味」だ。
それを味わいながら、深愛はしばしの休息の時間を楽しんでいた。
「疲れている時に、ミタリーのミルクティーは最高だわ」
「ありがとうございます、ミア様」
白猫のミタリーが大好きだけど――こういう時の侍女姿のミタリーも、深愛の心を仄かに癒してくれる。
「……ふぅ……」
ミルクティーを味わいながらも、深愛は――勇者たちへ言ってしまったことを思い。
小さなため息をついた。
「ねぇ……ミタリー。
どうしてあなたたち「アイコーン」一族は、人と一緒に生きようとしないの?
それはアルバートもなかなか教えてはくれないの……」
深愛の質問に――ミタリーの手は止まり、しばしの沈黙を守る。
「ミタリー? 」
「……いずれはミア様も知らねばならない事でございましょうね……。
わかりました……お話しいたしましょう」
真顔で――笑顔もなく。
ミタリーは驚く深愛へとはっきりと言った。
「ええ。お願いいたします……」
深愛も腹を括り――ミタリーに頼んで見せた。




