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聖装士学園の異端者  作者: 綿砂雪
第三章
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第八十九話 祈りと血欲

皇都はリフレイム皇国の端にあると同時に海に面しており、皇城の(そば)には海が広がっている。アランと魔鎧騎士(フォカロル)は今、その海の中にいた。正しくは海の底にある大地に立っている。

範囲にして半径三十メートル。両者の周囲にある海だけが、くり抜かれたように消えていた。


「酷いザマだな、お互い」


アランが《獄王災禍(ゴクオウサイカ)天魔月葬(テンマゲッソウ)》を使用した後、両者はここまで落ちてきた。それもただ落ちてきたわけではなく、剣戟や光線による激突を繰り返しながら落ちてきた。

今の両者の負傷はその結果だ。

アランは身体の所々が(えぐ)れ、折れた骨が肉を破って露出し、さらに左目が潰れている。

これらはあくまで外見から分かる負傷に過ぎない。体の内部は折れた骨が内臓や筋肉を裂いたり、衝撃で内臓が潰れかけている。

だが満身創痍なのは魔鎧騎士(フォカロル)も同じだ。左腕と頭部が消し飛ばされているだけでなく、アラン以上に体の至る所が抉れ、穴を空けていた。


常人の戦いなら、既に両者共に戦闘不能という結果で決着が付いていただろう。だが彼らは違う。

同時に両者は治療を始める。死にかけだった体はすぐに完治を果たした。


(これでも治るか……)


既に超高熱で軟化していた魔鎧騎士(フォカロル)の鎧は回復している。状況はまた振り出しに戻った。




───本当に厄介な相手だ。最大の難点は殺し方が分からないという点にある。

一通り体は抉った。体の司令塔になりそうな頭も潰した。だが生きている。魔力の流れを読んでも、どこかに急所があるようには見えない。

少しでも体が残っていたら復活できるのだろうか。なら完全に魔鎧騎士(フォカロル)の体を消し飛ばせば勝てるかもしれない。試したいところだが、俺の攻撃力では魔鎧騎士(フォカロル)を完全に消し飛ばすとなると『奥の手』を全て出し切る必要がある。

無いと思いたいが、魔鎧騎士(フォカロル)を倒した後にオルレアたちが想定外の事態を起こす可能性も捨て切れない。なるべく余力は残しておきたいので、これは本当の最終手段だ。


他の殺し方と言えば、魔鎧騎士(フォカロル)のエネルギー切れがある。

魔鎧騎士(フォカロル)は言うなれば魔装具の上位互換的な存在。まさか生物のように栄養を補給しているわけではあるまい。おそらく魔力を生命維持に用いている。

その場合、魔力が尽きたら死ぬかもしれないが、総合的な持久力で劣っている俺が魔鎧騎士(フォカロル)の魔力切れを期待して持久戦を挑むのはあまりに無謀だ。

ならば他に魔鎧騎士(フォカロル)の生命維持に欠かせない要素になりそうなものは──。


(生贄の破壊……それしかないな)


当然、如何に強大な力でも、力を扱う器がなければ意味をなさない。それと同じく魔鎧騎士(フォカロル)も器が無ければ戦えないはずだ。

恐らく魔鎧騎士(フォカロル)は『リヴァイアサンの断片』の力を生贄にされた大量の人間たちに宿すことで作られた兵器。魔鎧騎士(フォカロル)の根幹を成すのが生贄であるなら、ピンポイントに生贄だけを魔鎧騎士(フォカロル)から消し去ることが出来れば殺せるだろうか。

魔鎧騎士(フォカロル)のような敵と戦うのは初めてであるため、どの手段も確証が持てない。そもそも、その方法すら(さだ)かで無いのだが。


(……使うか、()()


アランは(たび)重なる負傷でボロボロになったローブを脱いで『虚空の手』に収納した。次いで手を組み、指を鳴らす。魔鎧騎士(フォカロル)も何度か首を(ひね)った。

誰の目にも明らかな程、魔鎧騎士(フォカロル)から感じる殺気が増している。理性が無くとも、魔鎧騎士(フォカロル)は兵器としての本能から、アランの変化を理解していた。


アラン・アートノルトという人間は自発的に本気を出せない。その理由は彼の切り札と性格に起因する。

他人の聖装能力から学んだ術式を利用して一般的な魔法をさらに進化させた『改良魔法』や、概念を封じる封印魔法の発展版に当たる《封印領域解放(インペリアルオーダー)》など、彼の切り札はどれも超高度な術式と演算を含む。戦闘中にマトモに扱いたければ凄まじい集中が必要だ。それこそ一切の余情を含まず、戦闘に全神経を注がなければならない程だが、アランは自らそれが出来ない。

アランの人間性が故だろう。不真面目かつ面倒くさがりな性格に由来する、常に低い戦闘モチベーションに加え、自他の命を軽んじ、他者の救済と殺戮を等しく望む歪んだ価値観。それが戦闘への集中を妨げる。

逆に彼のモチベーションが上がるほど、迷いや余情などの無駄を思考から省くほど、彼の集中はより冴え、戦闘能力は跳ね上がる。

いつしかアランはこの集中状態を『必死になると稀に訪れるめっちゃ調子が良い状態』と解釈し、本領を発揮できたらラッキーくらいに考えるようになった。致命的な欠陥だが自主的に直しようが無いため、運と流れに身を任せるしかないのである。


今のアランは恐らく今までで最も戦闘のモチベーションがある。一切の迷いを排した思考はどこまでも戦闘に費やされている。どんな切り札でも難なく使用可能だ。魔鎧騎士(フォカロル)が最大限に警戒するには十分な相手である。


「考える事は同じ、か」


現状、互いに丸腰。武器を使っても互いに破壊される事はもう分かった。

ならばここから先の戦い方は決まっている。武器は他でもない自身の身体。砲撃を()じえながら、思いっ切り打撃を叩き込む。


「「ッ!!」」


直後、両者は地を蹴った。




***




一方、その頃。


「ヒャッハハハハハハハハハハァッ!!!」


爆裂する哄笑(こうしょう)。瞳を赤く輝かせながら、ヴァッシュ・ガーバランドは力のままに砲台を地面に叩き付けた。

《真髄解放》──魔装具や聖装具の力を100%以上引き出す、真の達人にのみ許された至高の御技(みわざ)。それを発動させた今のヴァッシュの力は先程までの比ではない。

凄まじい量の赤い棘が彼の周囲から突出してきた。その物量は小さな山と言っていい。

少しでも触れれば、棘の波に飲まれて刺殺される。しかし今のアリシアに迎撃できる規模でもない。出力の差があり過ぎる。


アリシアは思い切り地面を蹴り、ヴァッシュの前から飛び退いた。

一蹴りで飛び上がった高度は百メートルほど。遠距離からの攻撃を試みるが、


「遅せェぞクソガキィィィィッ!」


次の瞬間には背後でヴァッシュが砲台を振り下ろしていた。予知が無ければ直撃していたに違いない。振り向きながらアリシアも剣を薙ぎ払い、ヴァッシュの砲台と激突させる。

今のアリシアは双剣に十分な奇跡を宿している。自身の障害を無条件で焼き払う『金色の炎』と、触れた衝撃を全て反射する奇跡。加えて予知の奇跡もあり、魔法と聖装能力で出力も身体能力も大幅に向上させている。接近戦ではまず負けることはない。

そんなアリシアが、今明確に押されていた。


無論、《真髄解放》による出力差の問題もある。アリシアの奇跡も無敵ではない。過度にアリシアの出力を超えた攻撃をぶつけられれば、流石に対応にも漏れができる。

それを考慮しても、これは異常だった。触れられているだけで奇跡が弱まっていくのを感じる。

否、それだけではない。魔力の他にも、体中の力が抜けていくような感覚に陥っていた。


(まさか、これは……ッ!)


次第にアリシアの力が落ちる。これでは鍔迫(つばぜ)り合いを制することは出来ない。ヴァッシュに競り負けたアリシアは凄まじい勢いで落下した。

彼女の落下先にあるのは地面ではなく、山のように重なる針地獄だ。このまま落ちれば今度こそ刺殺は避けられない。

咄嗟に聖装能力と《浮遊(フロート)》の合わせ技で落下の勢いを殺し、空中に対空する。


「はぁ……はぁ……」


皇城の適当な屋根に着地する。その時にはかなり息が乱れていた。

たった数秒のやり取り。そこに大した力は使っていない。それにも関わらず、体には信じられない程の疲労が溜まっている。まるで深海にいるかのような息苦しさと強い圧迫感が常にあった。


「苦シイかぁクソガキ。そうダロうヨ、そレが俺の《傲血たる簒奪者(ブラッドグリード)》の真髄なンだからナァ」


次いで空中からヴァッシュが屋根に落下する。アリシアとは反対に、彼はすこぶる調子が良さそうだ。


「吸収ですか……それに加えて赤い結晶、随分と奇妙な魔装能力ですね。貴方のような(かた)は初めて見ました」


「まぁ俺みタイな奴は珍シいだロうな。実際、過去に俺ノ魔装能力を正確に言い当てラレた奴はいねェ」


先程までのヴァッシュは触れた魔力を自身の魔力に変換していた。その効果が《真髄解放》によって超強化されている。

今のヴァッシュは触れたものだけではない。一定範囲内に存在する全ての生物から、魔力を含むあらゆるエネルギーを吸収して自分のものとしている。

彼を相手に長期戦はマズい。時間を掛けるほど、不利になるのはアリシアだ。


「さァ次々いクぜッ!精々足掻ケやクソガキィィィッ!!」


ヴァッシュが砲台を向けた直後、今までの規模を遥かに上回る光線が放たれた。瞬間的に出せる威力だけならアリシアの知る限りではヴァッシュはトップクラスだ。

予知に従い、ギリギリでアリシアは攻撃を(かわ)す。近くにあった壁の後ろに回り込んでヴァッシュの視界から外れるが、そんなものはヴァッシュには障害にすらならない。

ヴァッシュは光線を放ちながらその場で一回転する。光線が通った場所にあったものは爆発と共に(ことごと)く消し飛んだ。


「おいオイ、まさカこんクラいで死ンデねぇよナぁ?」


アリシアがいない。姿が見えないだけでなく、気配すら感じられなかった。

まさか今の一撃で死んだのかと、落胆と共にそんな考えが思考によぎった。

だがそれは束の間の出来事に終わる。


直後、ヴァッシュの足元の屋根が吹き飛んだ。屋根を突き破ったのは光線や鎖、光剣の数々。それらはヴァッシュのいる場所より下、皇城の一階から飛来していた。


「イイねぇ!やるジゃねェかァ!」


アリシアはヴァッシュの視界から外れてからすぐ一階へ床を突き破って降りていた。

それだけの距離があれば、いくらヴァッシュでもすぐには気づけない。その意表を突いて、一階から溜め込んだ攻撃を放出していたのだ。ヴァッシュは素直にアリシアの知恵に感心した。


既に足場は崩壊している。空中にいるヴァッシュに今から攻撃を回避する方法はない。ヴァッシュもこれを避けようと思わなかった。

避ける必要がないからだ。


「しッカしこの程度じゃなァ」


鎖が絡みつく。剣や光線が直撃する。

無抵抗で数百に及ぶ攻撃を身に受けて尚、ヴァッシュの体には傷一つ付いていなかった。そのまま何事もなかったかのように一階に着地する。


それなりに上澄みの聖装士や魔装士でも十分に仕留められる威力はあった。それでも彼は全てを吸収してみせる。

なら次にアリシアが取る行動は、


「単調にナってルゼ?」


いつの間にかアリシアがヴァッシュの背後に回り込んでいた。薙ぎ払われた剣の一振りをヴァッシュは振り向きもせずに砲台で受け止める。そして反動で僅かに硬直したアリシアの隙を突いて赤い棘を突出させる。

だが、


「……ァ?」


棘が(くう)を切った。触れた瞬間、アリシアの体が光の粒子と化して霧散したのだ。

幻惑かと思ったが、今の一撃に確かな質量があった。ただの幻惑ではないようだ。


奇妙な現象は一度で終わらない。何度もアリシアが周囲に現れて攻撃してくる。その(たび)にヴァッシュは反撃を試みるが、一度も届かなかった。


(まだだ!あと数秒耐えれば!)


奇跡による光の幻影を駆使して連撃を仕掛ける。だが次第に彼女の速度は落ちていた。

たとえ幻影と未来予知があっても、それに体が追い付かなければ意味がない。


「トロくなっテんぞクソガキィ!」


数合の後、遂にヴァッシュの生成した赤い結晶がアリシアの足を捕らえる。

(かわ)しきれなかった棘が足に刺さった。攻撃に直撃してさらに動きが鈍ったアリシアに、ヴァッシュは砲台を振り下ろす。


「ッ゙……!」


寸前で双剣で受け止めたが、長くは保たない。

身体中の力を根こそぎ奪われていく。アリシアの力が弱まる一方なのに対して、ヴァッシュの腕力はさらに増していく。既に先程空中で鍔迫り合いをした時より威力が倍近く上がっていた。


「ホらホラどうシたァ!!このマまじゃ潰レちまうぜェ!?」


まだまだ余裕だと言わんばかりに声を張り上げるヴァッシュ。あと数秒もすれば、アリシアは彼の言う通りに潰されて死ぬだろう。

それでも、


「生憎、ですが……!」


アリシアは少しだけ笑みを浮かべ、言ってみせる。


「潰れるのは……貴方の方です!」


「アぁ?」


疑問の声を漏らした直後、天井が吹き飛んだ。

降ってきたのは巨大な光の柱。反応が遅れたヴァッシュに避ける暇は無い。轟音を響かせながら、超高密度の閃光がヴァッシュを穿った。


「がッウ“……グ、アァァァァッ!!」


流石のヴァッシュにもこれは効いていた。

これはアリシアが幻影を駆使して接近戦をしながら、空中を起点に溜めていた超高火力砲撃。今のヴァッシュに確実に効くだけの威力を持たせるために、溜めにかなりの時間を要したが、それだけの効果はあった。


「ハッ……イいじゃネェか……!だがナァァァ!」


光の中でヴァッシュが叫ぶ。残酷な事に、彼が負傷する速度 に、彼の回復速度が追い付きつつあった。

所詮は魔力で固めた砲撃だ。時間をかければヴァッシュに吸収される。

彼を一瞬で消し飛ばさない限り、如何なる砲撃もヴァッシュを強化するだけだ。無論、アリシアもそれは分かっている。

故に───。


「─主よ、御国(ミクニ)より雷炎を(タマ)わせ給え。我が身を荘厳なる極光とし、万夜(バンヨ)を裂いて駆け抜けよう─」


彼女は二撃目を備えていた。

ヴァッシュは莫大な魔力の砲撃に包まれている。周囲の魔力探知など出来たものではない。だからこの大火力の不意打ちが通る。


「《超瞬間強化(ハイバースト)聖剣よ、闇夜を砕け(ヴォーパルソード)》」


極光を(まと)う双剣。爆発的に膂力(りょりょく)を上げる少女の肉体。

全ての奇跡を一点集中させる。これが通らなければ諦めるしかない。未だに満足に動けていないヴァッシュに向けて、


「《彼方へ謳え、煌々たる(ライトオーバー)──」


人外の脚力で一歩を踏み込んだ瞬間───だった。








「一瞬、遅カったなァ」


まさにアリシアが地面を蹴る瞬間、ヴァッシュの拳が光の中から伸びた。

アリシアは攻撃する寸前だ。今更防御も回避もできない。

ヴァッシュが放った正拳をアリシアはモロに腹に受ける。そのまま衝撃に吹き飛ばされ、皇城の壁すら突き破って外の地面に放り出された。


「う“ッ……ぐ、アが……ッ」


何度か地面を転がった後、ようやく体を起こす。

骨が何本か折れている。内臓も潰れた。壁を突き破った拍子に当たった瓦礫に肉も抉られている。回復しなければ立つことも出来ない。


「ヘェ、マだ意識あルのか。根性ある奴ハ好きだぜェ」


「貴方、に、褒められても……ウ“、げホッげほッ“……はぁ……嬉しく、ありませんよ」


ヴァッシュも外に出てきた。血反吐を吐き、苦痛に悶絶しながらも傷を治療するアリシアを興味深気に眺めている。


(アラン君なら、もっと上手く戦えたのでしょうね)


ヴァッシュを足止めするまでは良かった。だがその後、アリシアは焦り過ぎた。

早期決着と一撃の高さを意識し過ぎた余り、防御や未来予知に回していた奇跡を全て攻撃に注いだ。それはあまりに危険な賭けであり、実際彼女はその賭けに負けた。

今にして考えれば、もっと早く撃てる技も、もっと安全な方法もあった。これは経験不足が故の判断ミスだ。


(私も、まだまだですね)


改めて自身の未熟を自覚しながら、アリシアは立ち上がる。


「そレよりよォ……お前いつにナッたら全力出すンだ?」


「なんの話ですか」


「見りゃ分かル。お前、まダ切り札残してるダろ。例エバ《真髄解放》だ。エルデカ王国最高峰の実力ヲ持つ聖装士なら《真髄解放》くラい出来るハずだ」


ヴァッシュの言ってる事は正しかった。

今、アリシアは明確に押されている。一度見せた不意打ちに二度目はない。そしてこれ以上の策もアリシアには無い。

さらに強力な切り札を使わなければ、アリシアの敗北は明らかだ。それは彼女が一番良く分かっている。


(仕方ありませんね……)


小さくため息を吐く。

出来るだけ余力は残しておきたかったが、追い詰められたからには使うしかない。

アリシアは片方の双剣を掲げ───。


「───告げる」


瞬間、空気が変わった。

大気や地面が震撼(しんかん)する。膨大な力の気配と共に、アリシアを中心に周辺に無数の光の粒子が漂い始めた。


「─汝ら、天に支えし御使(ミツカイ)よ。地平を照らす高潔なる守護者よ─」


紡がれる祈り(ごと)に応えるように、周囲はさらに強い輝きに包まれる。

その光に暴力的な気配は感じない。これは人を守護し、正道へ導く、温かさを感じさせる恩寵(おんちょう)の輝き。だがヴァッシュはその光に恐ろしいモノを感じた。


「─今再び、この地に舞い降り給え。そして示し給え。汝らの美徳を、その奇跡を、悲哀に嘆く者を照らすために─」


何かとてつもない事が起ころうとしている。彼の直感が嘗て無いほどに警鐘(けいしょう)を鳴らしていた。今すぐにでもアリシアを止めるべきだと。

だが彼は動かなかった。それどころか、その圧倒的な力の気配に目を奪われていた。


(……ッ!面白れェ!)


恐怖を遥かに上回る興奮と高揚。根っからの戦闘狂に、この場を冷ます思考は微塵も無かった。たとえその結末がどうなろうとも。


「《天園解放(ゲートセット)》───」


瞬間、世界にヒビが入る。ヒビは瞬く間に拡大し、遂には世界の境界を砕き割った。

その向こうに見えたのは目を覆う程の(まばゆ)い輝き。光を背に受けながら、『極光の神格者』は紡ぐ。



「───《至高七煌天(セブンスヘブン)二翼至天(セカンドオーダー)》」

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