第百十六話 非モテの集い
どうも、夏休み真っ只中の綿砂雪です。
最近、この作品をプロローグから順に全話改稿を進めています。
この話を投稿した時点で、第八十話くらいまで改稿してます。描写や設定を調整しつつ、より読みやすくなるよう改良しているので、気が向きましたら覗いてみてください。
第二中継地点に着いた後、アランたちは第一中継地点の時と同じく、教師から物資を貰った。
既に体の限界が近い。とにかく足腰を休めるために、休憩所の椅子に座った。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……いやなんか言えよ」
アラン以外は椅子の背もたれに体を預けて、無言で天を仰いでいた。
「僕も何か話したいんだけどね……もう話す気力が残ってないんだよ」
「逆になんで貴方はまだ元気があるのよ……山に慣れてるってだけで、ここまで差が出るものなの……?」
「キミ、よっぽと山で過酷な目に遭ってたんだな……」
「もしかして、山暮らしとか、してたの……?」
「まぁそんな感じだ。ちょっとだけ山に籠もって修行してた時期があった」
実際はちょっとどころか、六年間に及ぶシリノアとの山暮らしだったが、気にされたくないので嘘をついた。
「へぇ……そうなんだね……」
そもそも、リオたちにアランの過去を深堀る気力は残っていなかった。
「なんというか……お風呂、入りたいわね……道中でたくさん汚れたし、汗もかいたし……」
「でも中継地点って風呂場無いんだよな……ボクたちに出来るのは、脱衣所で着替えて、支給品のタオルと衛生用品で体を最低限、綺麗にするくらいか……」
「脱衣所作るなら、お風呂も作って欲しかった……」
「同感だよ……どうやら今回の定期合宿は、休憩も最低限しか用意されてないみたいだ。先生たちは徹底的に僕たちを追い込むつもりみたいだね……」
「『水浴びしたければ、外でやってこい』って先生言ってたもんな。これがまだ初日……少なくとも、あと二日はこれが続く。少しでも回復するために、早く着替えてその辺で寝るしかねぇな」
アランは椅子から立ち上がった。
「俺は先に脱衣所行ってくるけど、お前らはどうする?」
「僕はもう少し休むよ……今は足腰が動きそうにないんだ……」
「私も無理ね……あと十分くらい休んだら、行こうかしたら」
「私、も……」
リオたちが椅子に座り込む中、アランに続いてレオンも立ち上がった。
「ボクも、今から着替えに行く……臭ったままでいるのは、イケメンとして許せないからな……」
「理屈が謎すぎる……まぁ無理はするなよ?」
「当然だ。そうと決まれば、早速行こうじゃないか……」
疲弊しながらも歩くレオンを心配そうに眺めながら、アランは共に脱衣所に向かった。
***
二十分後、脱衣所で着替えを済ませたアランとレオンは休憩所に戻ってきた。
「……ん?リオたちがいないな」
「俺たちと入れ違いで脱衣所に行ったんだろうな。少しは足腰が回復したってことか」
この後は支給された軽食を摂って寝る。寝具の支給は無いので、寝る場所は休憩所の床の上である。
「こうして見て分かったけど、思ったより生徒がいるな。生徒の半数近くはいる気がするぞ」
「初日は皆、似たような結果になるだろうな。差が出るのは二日目以降だ。こんな環境だと、休憩しても回復できる体力は限られる。計画性が無い奴は、時間が経つに連れて置いて行かれるだろうな」
アランたちは床に座ると、持参した鞄から支給品を取り出す。
「先に飯食うか。第二の支給食料はどんなのかな〜」
「これはフルーツ入りのシリアルバー、こっちはゼリー、あとは塩飴とドライソーセージ……ボクらが第一で貰った物とほぼ同じだな」
「登山食の王道だな。質素だが栄養は摂れる。質素だけどな……」
二人は支給された食料を食べ進めていく。
美味しいという程では無いが、不味くもない。本当にただ栄養を摂るためだけの食事だ。
「……なんつーか、アレだな。お前と二人きりで飯食うのも久しぶりだな」
「確かに随分前のことだな。今となっては、懐かしく思えるよ」
「俺はまだ覚えてるぜ。お前が喫茶店でテーブルに顔面突っ伏してたの」
「嫌な過去を思い出させるんじゃない!」
「今もあんま変わってない気がするけどな。まぁお前はそれくらいの方が合ってるよ。うんうん」
「それくらいって何だ。褒めてるか?貶してるのか?」
「どっちでもねぇな。俺たちはただ、現状のお前が好きだって話」
「ボクは女性としか恋愛する気は無いぞ」
「違げぇよ恋愛的に好きってことじゃねぇよ。友達としてだよバカ」
おかしな方向に発想を飛ばすレオンに、アランはいつものようにため息を吐く。
彼らが二人きりで食事を摂るのは初めてではない。初めて飲食を共にしたのは数ヶ月前、彼らが一年生の時だった。
前期の終わりが近づきつつあった頃、当時一年生だったアランは学園外の王都を出歩いていた。
暇な生徒が王都を出歩くことはよくある。アランもその時は暇潰しに王都に出ていた。
(……腹減ったな)
時間は昼頃。昼食を摂りたいと思ったアランは、近くにあった喫茶店に入った。
「いらっしゃいませー!何名様でしょうか?」
「一人です」
「かしこまりました。お席にご案内します」
店員は店内を見回すが、空いている席は無かった。
昼時だからだろう。ほぼ全ての席で客が昼食を摂っている。
「申し訳ありません。少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
「あ、はい」
アランの前から離れると、店員はあるテーブルに向かった。
そのテーブルには二つの座席が向かい合うように置かれている。既に片方の席には金髪の少年がテーブルに突っ伏しながら座っているが、もう片方の席は空いている。
そこ以外に空いている席は無い。店員は少年に声をかけた。少し少年と話すと、また店員はアランの前に戻ってきた。
「只今、お席がほぼ全て埋まっておりまして……あちらのテーブルのお席でしたらご用意できるのですが、相席でもよろしいでしょうか」
「はい、構いません」
店員の案内に従い、アランは空いてる席に向かった。
テーブルでは変わらず少年が突っ伏してる。彼の側には、コーヒーが入ったカップが置かれている。
「お向かい、座らせてもらいますね」
突っ伏してる少年に声をかけ、アランは席に座る。少年は何も言わずに右手でグッドサインを作った。おそらく挨拶のつもりだろう。
メニュー表を見て注文を決めたアランは、店員に食事を注文した。
注文したものが届くまでの間、暇になったアランは前を見る。
目の前ではどういう訳か、少年が突っ伏している。外見はアランと同じくらいの年齢だ。
アランはすぐに気づいた。この少年の魔力量は一般人よりずっと多い。聖装士並みの魔力量だ。
(もしかして、同じ学園の生徒か?)
可能性としては十分あり得る。同じ学園の生徒なら、多少は話しかけてもいいかもしれない。
このまま目の前で伏し続けられるのも気まずいので、アランは意を決して声をかけた。
「……あのさ、どうして突っ伏してるんだ?」
「………っ」
少年は僅かに反応を示した。だが、まだ顔を上げない。
「何か悩み事があるのか?俺でよかったら……その、話聞くぞ?力になれるかは分からないけど」
アランの言葉を受け、今度こそ少年は顔を上げた。
とても整った顔立ちをしている。美しい金髪とこの顔立ちは人の目を惹くものがある。
「キミは……アラン・アートノルトか」
「それを知ってるってことは、やっぱり同じ学園の生徒ってことか」
「そうだとも。ボクはレオン・アルバート。キミと同じ一年生だ。レオンと呼んでくれ」
そう言って、レオン・アルバートと名乗った少年はコーヒーを飲んだ。外見も相まって、コーヒーを飲む姿はなかなか様になっている。
「キミが聞きたいのはボクの悩み事だったかな?」
「ああ。流石に無視できそうになかったからな。気になって食事摂れねぇよ」
「それは悪いことをしたな。なら率直にボクの悩みを話そう」
一泊を置いてレオンは言った。
「アラン・アートノルト、なぜボクはモテないと思う?」
「知らねぇよ」
知っているわけがない。
「なんだよその悩み。喫茶店で突っ伏すくらいだから余程の悩みなのかと思えば、クソくだらねぇじゃねぇか」
「くだらないとはなんだ!ボクにとっては深刻な話なんだぞ!」
「逆にアンタは自分がモテるに足る器だと思ってるのか?」
「もちろん。なにせボクはイケメンだからな!」
「………」
この僅かなやり取りで、アランはなぜレオン・アルバートという人間がモテないのか理解した。
「自分で言うのもなんだが、ボクは容姿が良い。君のような傑物と比べれば劣るだろうけど、文武共に秀でていると自負している」
「自負し過ぎだろ」
この男、あまりにも自己肯定感が高すぎる。
「だから女の子には度々声をかけられるんだ。だが少し話すと、すぐに彼女たちはどこかへ行ってしまう。一体何がいけないというんだ!」
「そのナルシストみたいな性格以外に原因ないだろ」
逆になぜここまで明らかな原因がありながら気付かないのか。
「ボクの性格が悪いっていうのか?」
「そうだけど。アンタみたいな自己顕示欲が強い奴なんて、俺だって敬遠する」
アランですらそう思うのだから、彼と同年代の女子が敬遠しないはずがない。
「そうかそうか。性格に改善点アリ、か」
レオンはポケットから取り出したメモ帳に何かを書き込んだ。
「まさか、俺が言ったことをメモってるのか?」
「そうだぞ。ボクはモテるためなら如何なる努力も惜しまない。顔も性格も武力も頭脳も、全てを磨き上げると決めているんだ」
「へぇ〜」
顔だけの男かとアランは思っていたが、努力家でもあるらしい。アランは少し感心した。
「正直、男の意見はあまり参考にする気は無いんだが、キミの意見となれば話が違うからな」
「いや何が違うってんだよ」
「キミは賢いだろ?この前の定期試験の総合順位は学年一位。入学試験の筆記試験は満点。第二回序列戦では、あの超天才シエル・グレイシアと半日以上も知恵比べを続け、最終的に降参させてみせた。キミの頭脳はボクも見習うところがある。流石に聖装具を使わないのは、どうかと思うけどな」
「随分見てるんだな。俺のこと」
「キミが思うより、キミは有名人なんだ。何もしなくても、勝手に情報が耳に入るくらいにはね……!」
レオンはひどく恨めしそうに言った。明らかに怒っている。
「なんで、そんな顔してんだ……?」
「なんでも何も、キミが羨ましいからに決まっているだろ!」
「は?」
「キミは有名人だ。誰もが認め、注目している。《真髄解放》を使った聖装士を聖装具抜きで圧倒する実力。あまりにも人間離れした頭脳。あとルックスもそこそこ良い、もちろんボクほどじゃないけどな!それでも人間としては完璧と言っていいスペックだ。まったく羨ましい限りだよ」
「いやいやいやいやいや。俺は人気者ってわけじゃないからな?良くも悪くも有名になってるだけだから」
当時のアランは既に有名人だったが、人気者というわけではない。聖装具を用いずに規格外の実力を発揮する彼への周囲の評価は賛否両論。
彼の実力を認め、魔法だけでここまで強くなれる可能性を示してみせた彼を尊敬する者もいる。逆に聖装具を用いずに戦う彼を、常に手を抜いて相手を馬鹿にしている愚者と思い、嫌っている者もいる。
「人気者っていうのはリオみたいな奴のことを言うんだ。俺は悪目立ちしているだけの異端者だ」
「ボクからすれば、そんなの些細な差異なんだけどな……確かに、どちらかと言えばボクの敵はキミではなくリオ・ロゼデウスだな。キミと同じく、彼の人気っぷりも勝手に耳に入ってくる。容姿端麗、才色兼備、性格良好、文武優秀、特にこの歳で《真髄解放》を会得してるのは驚くべきことだ。モテるための必須条件を完璧に満たしている」
(真髄の会得ってモテるのに必須なのか……?)
だとすれば、あまりにも条件が厳し過ぎる。
「それに、最近のリオ・ロゼデウスは変わっていると聞くな。魔法や勉学にさらに励むようになったそうじゃないか。第二回序列戦でも、知略で相手を翻弄して勝ったらしいし……もしかして、キミの影響か?」
「まぁ、多分な」
第一回序列戦でアランに負けて以降、リオはアランを目標として成長するようになった。
時にはアランから勉学を教わったり、演習場でアランと鍛錬している。成長の方向性がアランに似るのは必然だ。
「ボクも負けられないな。もっと鍛錬と勉強を積んで、自分を磨かないと」
「いやアンタの場合、それ以外に磨くべき点があると思うぞ……?」
努力家なのは大いに良いことだが、まずそのナルシストのような性格を改善しない限り、彼の願望が叶うことは無いだろう。
「こちら、ご注文のマカロニグラタンとメロンソーダになります」
「あ、どうも」
その時、店員がテーブルに注文したものを置いた。
早速アランは注文したものを食べた。空腹を満たすべく、次々に料理を口にしていると、レオンが話した。
「そういえば、知ってるか?今朝掲示板に貼られてた新聞で見たんだが、王都で強盗が起きてるらしいぞ」
「強盗?聖装士が多い王都で強盗なんて、よほど度胸がある奴だな」
「もう四件も被害に遭ってる店があるそうだ。王都の警備隊も警戒してるそうだけど、まだ捕まっていないらしい……気分の良い話じゃ無いな」
強盗事件が最初に起きたのは三週間ほど前。四人組の男によって犯行が行われた。
以降も同じ四人組に三つの店舗が襲撃され、金銭を強奪されるという事件が続いている。
「レオンは解決したいと思うのか?」
「もちろん。イケメンとして、人の不幸は見過ごせないね!」
「イケメン関係ねぇだろ、それ」
おそらくこの男はイケメンという単語を万能の言葉だと思っている。
「逆にキミはどう思うんだ?あまり関心の無さそうな顔をしているが」
「関心はあるさ。アンタと同じく、嫌な話だとは思う。でも俺は……アンタみたいに、綺麗な事は言えないよ」
それがアラン・アートノルトという人間だ。人並みの誠実さと優しさを持ちながら、無意識に多大な悪意を抱えている矛盾に満ちた暴虐者。
彼を一つの器とするなら、彼の中には常に善意という熱湯と、悪意という冷水が溜まっている。熱湯と冷水が互いに影響し合った結果、器に残るのはぬるま湯のみ。
それは何かを冷ますことも、何かを熱する事もできない。中途半端にしか何かを為せない物だ。
彼の行いには、どこまでも無意識に悪意が付いて回る。そうである限り、彼が心から善行に臨むことは無い。
「そうか……」
その言葉に批判や肯定の意は含まれていない。ただ静かにアランの意思を受け入れている。
「……何も言わないんだな。てっきり批判されると思ったんだけど」
「思うことが無いと言えば嘘になる。でもボクにはキミの価値観に口出しする権利は無い。ありのままにキミの在り方を受け入れるだけだ」
器量の広い奴だ。アランはそう思った。
自分の感性を押し付けず、他者に理解を強要することもしない。理解されないのなら、自分が理解される存在になれば良い。彼はそういう心構えで生きている。彼の努力家な性格も、そうした心構えによるものなのだろう。
だからこそ、同時に惜しい奴だと思う。ナルシストのような言動さえ無ければ、リオに劣らぬ人気が得られたはずだ。
「良い奴だな、アンタ」
「当然だ、ボクはイケメンだからね」
「イケメンはそんな万能な言葉じゃねぇぞ」
小さく笑い、アランは料理を食べ進める。
数分後には料理は食べ終わっていた。そろそろ店を出る時間だ。
「あとは会計だけか……俺はそろそろ店出るけど、アンタは?」
「ボクも出よう。これ以上居座ると店に迷惑をかけてしまうからな」
二人はテーブルに置かれた注文票を持って立ち上がった。
その時だった。
「全員、席に座れ!その場から動くな!」
荒々しい声を共に何者が店に入ってきた。
人数は四人。頭には覆面を被り、衣類で肌を完全に覆っているが、体格からして男だ。
「お前ら、今すぐ金を出せ!じゃねぇとコイツでお前らごと、この店吹き飛ばすぞ!」
男たちは手に持っている者を店員に見せつける。
おそらく魔導器だ。魔力の気配からして、手に持っている物以外にも服の中やポケットにも装備していることが分かる。
先手を打たれた。これでは誰も動けない。抵抗したとしても、何かする前に店を吹き飛ばされる。
(なるほど、魔導器で戦力を上げていたのか。だからここまで強盗が上手くいったのか)
アランとレオンは何も言わずに座った。
今はこの場にいる全員が強盗犯たちの人質だ。店内の従業員は強盗犯に怯え、客は注意を向けられないよう黙って座っている。
「…………」
アランはレオンの方を向いた。
明らかにレオンは怒っている。目の前には強盗を為そうとしている外道がいる。それを黙って見過ごす真似は彼にはできない。
だが先手を打たれた故に、安易に動けないのが現状だ。レオンはどうするべきか悩んでいる。
「………っ」
レオンはアランの目を見た。
──協力してくれ。
彼の目がそう訴えている。自分一人では解決し難い状況でも、アランの助力があれば突破できると信じていた。
(……やるしかないか)
アランは静かに頷いた。そして右手を机上に上げ、人差し指、中指、薬指を立てる。
カウントダウンだ。人差し指を曲げ、中指を曲げ、最後に薬指を曲げた瞬間。
「《結界・閃光》」
強盗犯を除き、店内にいる全員の体表にアランは結界を張った。同時に彼の手元から天井に打ち上がった光が炸裂し、店内を激しい光で覆う。
「な、なんだッ!?」
強盗犯たちは光に注意を削がれた。他の者たちは結界によって見える光量が削減されているため、視界は確保されている。
故に今だけ、アランたちは自由に動ける。
しかし強盗犯たちが隙を晒すのは五秒にも満たない僅かな時間だ。その後は容赦なく店を爆破するだろう。
だが、彼らには十分な時間だ。
「《瞬間超強化》ッ!」
アランが魔法を発動した直後、レオンもその場から動いた。
身体能力を一時的に底上げすることで、一瞬で強盗犯との距離を詰める。
まず一番手前の強盗犯の鳩尾を殴った。強盗犯は悶絶して伏してしまった。
「クソッ!このガキ!」
強盗犯の一人が武器型魔導器をレオンに向ける。だがレオンは攻撃させる暇を与えず、男の手を薙ぎ払った裏拳で弾く。握っていた魔導器は男の手から弾き飛ばされた。
そのままレオンは強盗犯の顎を殴り上げた。強盗犯は衝撃で昏倒し、仰向けになって倒れた。
「《雷撃》」
既に強盗犯の意識は完全にレオンに向けられている。その隙にアランはその場から雷撃を二発放った。
直撃しても、感電して動けなくなる程度の威力に抑えている。
不意を突いた雷撃はまだ立っている二人の強盗犯に直撃した。衝撃で壁に吹き飛ばされた後、感電した強盗犯たちは壁にもたれたまま動けなくなった。
「一応、キミたちにも使っておこう。《麻痺電流》」
先に倒した二人の強盗犯にも、レオンは雷魔法を使って無力化させた。
要した時間は二十秒にも満たない。僅かな時間で、彼らは強盗犯たちを無力化してしまった。
アランはレオンに近づきながら言う。
「アンタは王都の警備隊員を呼んで来てくれ。その間、俺がコイツらを見ておく」
「良いけど、会計はどうするんだ?ボクまだ料金払ってないぞ。勝手に店を出るのは……」
「この場は俺が立て替えとく。あとでアンタの分の料金を払ってくれ」
「分かった。なら行ってくる」
レオンが店の外に出たのを見て、アランは会計所に立っている店員に声をかけた。
「そういう訳なんで、会計お願いします」
「あ、はい……」
***
その後は色々あった。
強盗犯を警備隊員に突き出したり、現場に居合わせた店員や客から感謝されたり、警備隊員から事情聴取を受けたりと。全てが終わった時には夕方になっていた。
「暇潰しで出かけたつもりだったんだけどな。なんか疲れちまったな」
「でも強盗犯を捕えられた。これはこれで、良い暇潰しになったじゃないか」
街中にあるベンチに座りながら、二人は休んでいた。
「……改めて考えると、おかしな話だな。俺たちは偶々喫茶店で相席になっただけだ。そんな奴らが一緒に強盗犯を捕えて、今こうしてベンチで休んでる。こんな偶然に見舞われたのは初めてだぜ」
「確かに偶然続きだけど、これは良い偶然だ。流石ボクと言うべきか。やはりイケメンは運も良いみたいだ」
「それは無いだろ」
ルックスと運気に因果関係を見出すのは、流石に無理がある。
「だけど、そうだな……せっかく親睦を深められたんだ。今度また一緒に飯食おうぜ。次は俺の友達も交えてさ」
「それは良いな。その時はぜひ誘ってくれ。喜んで同席させてもらおう」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
***
「食べ終わったけど……なんつーか、口の中が微妙な感覚だ」
「スープが欲しいな。もう少し温かい物が食べたい。支給食料は冷た過ぎるぞ」
アランたちは第二中継地点で貰った支給食料を食べ終えた。
リオたちはまだ帰ってきていない。アランは床に仰向けになって転がった。
「あ〜床硬いな。マットレスくらい用意してくれても良いだろうに」
「こんな床で寝たら明日の朝には体のあちこちが痛んでそうだ……アラン、毛布とか持ってないのか?」
「あるぞ」
「あるのか!?」
「合宿で何が必要になるか分からないからな。ブランケットを『虚空の手』に入れておいた。そんなに大きい物じゃないけどな。五枚以上あるから、リオたちが戻って来たら出すよ」
「ありがたいけど、用意が良すぎて、もはや恐怖を感じるな……」
その後、戻ってきたリオたちも食事を摂った。就寝の準備を整えた彼らは、床で眠りにつくのだった。




