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聖装士学園の異端者  作者: 綿砂雪
第三章
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第百話 頂点者の舞台

「アラッチ……生きてたんだ」


再起したアランを見て、シエルは安堵すると同時に驚愕していた。

アランの力量が爆発的に上昇した。おそらくこれがアランの本当の最終奥義なのだろう。シエルは感覚的に理解した。


『──シエル、聞こえるか』


その時、シエルの脳内にアランの声がした。魔法で念話とは如何なる理屈か。シエルですら、すぐには理解できなかった。


『ひとまず聞こえてる前提で話すぞ。今、俺が使ってる魔法は俺の最終奥義。発動中は俺が扱える全ての魔法がフルオートで発動して、俺の理想を擬似的に具現化する。言わずもがな強力だが、体の負荷と消費魔力量が多い。持続時間は八分程度だ。封印まで保つ事はない』


そこでシエルはアランの意図を理解する。同じく聖装能力で思考を伝達し、念話を図った。


『なるほど。私が後方支援のバフや回復の効果配分を操作して、アラッチが戦い続けられるようサポートすれば良いんだぁね』


『そうだ。正直に言うと、この魔法はまだ未完成だ。魔法の制御で俺は手一杯になるだろう。周りを気にすることは出来ない。だから周りの指揮とサポートを全面的にお前に頼みたい。もちろんリヴァイアサンの解析と抑制もだ』


出来るか?とアランが問う。シエルは笑って答えた。


『モチのロン。全力でぶちかましてよ』


念話はそれで終わった。

アランの再起により、場が良い方向に乱れている。

リヴァイアサンはアランをかなり警戒している。真っ先にアランを始末しようと動くだろう。

好都合。これならシエルもアシストに専念できる。今度はこの場の全員に念話を繋いだ。


『全員、アラン・アートノルトに合わせて攻撃して。ダメージにならなくていい。ちょっとでも気を逸らせたら十分だから。私とアラン・アートノルトでリヴァイアサンを移動させる。アリシア・エルデカとグレイ・フォーリダントはリヴァイアサンを移動させるまで《真髄解放》は温存しておいて。移動させた後に畳み掛けたいから』


封印魔法の再起動と補強が始まってから、既に五分ほどが経った。再起動と補強が終わるまで残り五分。

この五分でリヴァイアサンを徐々に移動させる。少しでも範囲内に留められるよう、なるべく体の大部分を封印魔法の範囲内に入れるべきだ。その後は封印に必要な十分間を全員の総攻撃で耐える。

これが唯一にして最後の勝ち筋。だが、この規模の戦いに付いて行くには、シエルも出し惜しみは出来ない。


「仕方ない、久々にやるかぁ」


シエルの聖装具たちが強く煌めく。迸る魔力に呼応するように、彼女の周囲を蒼雷と光が駆け巡っていた。

異界にて生まれた超技術。その本質は全てを解き明かし、適応と進化を続ける究極の可能性の体現。

だからこそ彼女は『超越の機巧者』なのだ。


「《制限完全解除(リミットオーバー)》───《真髄解放》!!」



***



滞空しながらアランは目の前の怪物と睨み合う。

その名は完全(アルティメット)無欠の絶対王者(オーバードーズ)》はまだ未完成の最終奥義。アランの手が回らない部分も出てくるだろう。

そこはシエルたちが補ってくれる。アランは仲間を信じ、ただ目の前の怪物を退けることだけを考えた。


「───ッ」


深く息を吸い、イメージする。

自分の理想、その理想の体現に関わる魔法、法則、概念など。ただ想像するだけでなく、理想に関わる全ての要素を考え出し、緻密に理想を織り上げる。

そして、


「─貫け─」


理想の出力。理想を体現するべく、自動発動された魔法がリヴァイアサンを襲う。

次の瞬間には、リヴァイアサンに大きな負傷があった。体の所々が抉れている。リヴァイアサンは苦悶の声を上げながら血を流していた。


(流石に、理想通りとは行かないか)


もっと深手を負わせたつもりだったが、結果は理想に届かなかった。

単純にリヴァイアサンの防御力が高過ぎる。アランの理想通りのダメージを与えるのは難しいだろう。

それでも効いている。この力がリヴァイアサンに対して有効な手段であることは確かだ。


「─捻れろ!─」


リヴァイアサンの巨体が不可視の力に圧迫される。体が無理矢理動かされ、次第に雑巾のように捻れていく。

これなら防御力は関係ない。アランはそのままリヴァイアサンの体を捻り切ろうとするが、リヴァイアサンはそれを許さない。


「オォォォォォォォォガァァァァァァッ!!」


吠えた瞬間、莫大な衝撃波が全方向に放たれる。アランの魔法を弾き飛ばすつもりだ。

アランも即座に対抗する。瞬間的にイメージした『この衝撃波を掻き消す』という理想。それを出力し、リヴァイアサンの衝撃波を相殺した。

だがその時には、リヴァイアサンの束縛が解けていた。


(クソッ、二つの理想を同時に実現させるのは無理か)


今の完成度では一度に具現化できる理想は一つまでだ。リヴァイアサンの衝撃波を相殺した時点で、束縛が解けていた。

つまり攻撃と防御の両立はできない。アランは常に偏った戦い方が求められる。


「ッ!!」


アランの姿が掻き消える。次の瞬間には、アランはリヴァイアサンの額の前にいた。

瞬間移動だ。振りかぶった拳をリヴァイアサンに叩きつけた。


「─爆ぜろォッ!!─」


拳が触れた瞬間、リヴァイアサンの体内に大量の魔法が流れ込んだ。打ち込まれたアランの理想がリヴァイアサンの体内で暴れている。

リヴァイアサンの体が何度か揺れた。口から血が漏れている。

アランは続けて拳を振り上げた。

しかし、リヴァイアサンも只者ではない。魔法の影響を受けながらも、アランに反撃する。

アランの横合いから砲撃が突っ込んできた。

アランは魔法で砲撃を受け止める。砲撃に突き飛ばされながらも出力を上げ、砲撃をかき消した。

だが、


「ガァァァァァァァァァァッ!!」


光線の向こう側から、リヴァイアサンが突っ込んできた。

既に目の前まで迫っている。アランは瞬間移動で回避を試みるが、その必要はなかった。

リヴァイアサンの動きが突然、緩慢になった。何かに押さえ付けられているかのようだ。

この隙にアランはもう一度、理想を乗せた拳を叩き込む。再びリヴァイアサンが大きく怯んだ。


「グゥゥゥァァァ……ッ!!」


何が起こったのか。何に動きを妨害されたのか。

揺れる視界の中、リヴァイアサンは確かに見た。アランの後方に浮かぶ一人の少女を。


装いは機械的な白黒のドレス姿に変化していた。ピンクの短髪には、花の結晶のような髪飾りが付いている。

頭上の銀の輪は三重の虹色の輪に変化し、背部の電子的な翼は四対に増えた。

彼女の周囲には、幾重にも法陣が展開されている。


「実は私、アシストが一番得意なんだぁよね。マジでアシストは自信あるよぉ」


これがシエル・グレイシアの《真髄解放》。

彼女の聖装能力は解析と適応を得意とする。単騎でも十分に戦えるが、本来の得意分野は仲間の援護。解析して得た情報で仲間を助けつつ、敵を弱らせる。その点において、エルデカ王国でシエルの右に出る者はいない。


「─ぶっ飛べッ!─」


怯んだリヴァイアサンに、アランは次手を刺す。

リヴァイアサンを正面から衝撃波や砲撃の数々が襲う。それらが強引にリヴァイアサンを後退させていた。

だが、移動距離は本当に僅かなものだ。これでは遅すぎる。


『シエル!』


『分かってるよぅ!』


後方にいるシエルに呼びかけつつ、アランは干渉範囲を拡張する。

物理的な衝撃ではなく、今度は空間そのものに魔法を作用させる。

リヴァイアサンの周辺の空間の景色が大きく歪み始めた。リヴァイアサンが主権を持つこの空間に改変を加え、リヴァイアサンがいる空間ごと、リヴァイアサンを動かそうとしている。

容易なことではない。リヴァイアサンの干渉力は絶大だ。真っ向勝負ではまず勝ち目はない。

故にシエルが全速力で空間に(ほころ)びを入れ、アランがそこから空間を捻じ曲げる。それもリヴァイアサンに対応する暇を与えないほどの早業でだ。


瞬間、パキンッと何かが割れるような音が響いた。

空間構造の改変が成し遂げられる。その時には、リヴァイアサンがさらに後方に移動していた。

移動距離は五十メートルほど。成果としては悪くない。


「はぁ……はぁ……!」


アランは肩で息をする。今の空間干渉を含め、この一連の攻撃でかなり体に負荷がかかっていた。

魔力と回復は十分に供給されているが、この力に肉体が耐えられていない。定期的にクールダウンを挟む必要がある。あと三十秒近くは動けないだろう。


リヴァイアサンはその隙を見抜く。アランが動けない内に反撃を仕掛けようとした。

だが、そこへ数多の攻撃が襲い来る。グレイやアリシア、リフレイムの聖装士たちがアランの隙を補うように攻撃し、全力でリヴァイアサンの邪魔をしていた。

ダメージは無いが、リヴァイアサンの動きを邪魔することは出来ている。リヴァイアサンとしては驚くべきことだった。

なぜ自分が格下の攻撃で怯んでいるのか。ただアリシアたちの攻撃力が上がっているのではない。むしろ自分の力が落ちているような感覚がした。


「海の中にある命を生贄にした自己強化かぁ。急に強くなったからビックリしちゃったけぇど、単純な仕組みで助かったよぉ。これくらいなぁら、むしろ私が逆に利用できちゃうねぇ」


先程、リヴァイアサンが急激に強化された理屈をシエルは早々に見抜いていた。

今も海中から昇り、リヴァイアサンに集約されている赤い霧。これは海の中にある命を生贄にし、魔力に変換した姿だ。

要は単なる魔力の塊。もちろん変換された魔力を取り込めるのはリヴァイアサンだけだ。他の誰にもこの魔力は扱えない。この供給を絶たない限り、リヴァイアサンは無限に強化と回復を繰り返すだろう。


供給を絶つのは難しい。海中の命を絶滅させるのは困難だ。リヴァイアサンの海への干渉を阻害するなど、それこそ絶望的である。

そこでシエルは発想を変えた。供給は絶てないが、供給される魔力に少しだけ改変を加えることなら出来る。

シエルはリヴァイアサンが魔力を吸収する前に、浮上した魔力にリヴァイアサンにとって毒となる要素を混ぜ、リヴァイアサンに取り込ませることで、少しづつ弱らせていた。


「ゴォォォォォォガァァァァァァァァッ!!」


リヴァイアサンがさらに出力を上げる。少しずつ弱体化しているが、それでもリヴァイアサンの力は彼らの遥か格上だ。リヴァイアサンから連続で全方位へ放たれる衝撃波が、アリシアたちを強引に引き離した。


アリシアたちの負傷も軽いものではない。ただでさえ空間全域に、今まで以上に強大な概念領域による攻撃が作用している。加えて圧倒的な概念性と物理的威力を誇る砲撃や衝撃波の数々が絶えず放たれている。

リヴァイアサンの攻撃は、後方支援のアシストや、シエルとアリシアによる概念防御があっても、防ぎ切れる次元を超えていた。

全員が何度も肉を抉られ、骨を折られている。内臓が損傷している者も少なくない。

後方支援の回復はあるが、治療は追いつかない。彼らもかなりギリギリの状況だった。彼らだけでは一分も保たないだろう。

だからこそ、


「次は俺の番だッ!!リヴァイアサン!」


アランが戦っている間に他の者が傷を治し、また他の者が戦っている間にアランは魔法の負荷から回復する。交替して戦線を維持しようとしていた。

回復したアランはリヴァイアサンの背部に瞬間移動し、背中を思い切り殴った。先程と同じく、打撃に合わせて伝った魔法がリヴァイアサンの体内で暴れている。

次いでリヴァイアサンに手を(かざ)す。今度はリヴァイアサンの全身が斬られた。不可視の斬撃が全身を絶えず襲っている。

今ならできる。アランは再びリヴァイアサンを転移させようとした。

だが、


「グオォォォォォォォォォォォッ!!!」


咆哮はアランの頭上から聞こえた。

リヴァイアサンの背部にいながら、頭上から声が聞こえるという矛盾。咄嗟に上をアランが見ると、そこにリヴァイアサンの頭部があった。

その時、リヴァイアサンの首から先が欠けていた。まるで穴に入ったかのように見えなくなっている。

これが空間接続による芸当だと、アランは瞬時に理解する。リヴァイアサンの空間干渉をもってすれば、この程度の技は容易である。

リヴァイアサンは口から巨大な砲撃を放った。


「いいぜ、そっちがその気ならッ!」


アランは瞬間移動で砲撃の軌道上から離脱する。そして移動した先で、またリヴァイアサンに打撃と魔法を叩き込んだ。

あらゆる点に於いてアランはリヴァイアサンに圧倒的に劣るが、一つだけ互角に並べる要素がある。それは移動面だ。

アランもリヴァイアサンも、距離を無視した移動が可能だ。この利点を活かさない手は無い。


アランは瞬間移動を繰り返す。リヴァイアサンの周囲に移動しては打撃と魔法を叩き込む。リヴァイアサンは何度も空間接続によって、アランの周囲に体の一部を出現させては、攻撃を放つ。

回避しきれなかった攻撃もあった。アランは《その名は完全(アルティメット)無欠の絶対王者(オーバードーズ)》の反動から完全に回復したわけではない。あくまで、最低限動けるようになっただけだ。万全からは程遠い。


負傷と回復を繰り返しながら、アランは何度もリヴァイアサンに理想を叩き込む。

如何にリヴァイアサンが強大であろうと、生物であることに変わりはない。アランたちと同様に臓器や血液、神経、細胞がある。

体内の組織を狙った攻撃は有効だった。リヴァイアサンが確実に怯んでいる。


「アァァァガァァァァァァァァァッ!!」


しつこく(まと)わり付くアランに、いよいよリヴァイアサンは(ごう)を煮やした。本気でアランに対抗するべく、長大な体を渦状に巻く。

初速の時点で音速を超えていた。動くだけで衝撃波が拡散する。

さらにリヴァイアサンは体表に暴風や雷撃、水流を旋回させていた。徹底的に守りを固めている。

アランは右拳を叩き込むが、弾き返されたしまった。それどころか右手の指が全て消し飛んだ。


「チッ……!」


欠けた指と『虚空の手』を瞬時に修復する。ここまで高速で移動されていては、動きを止めることも、ダメージを入れることも難しい。何よりこのまま移動を許せば、先程の転移が無駄になる。


『俺が無理矢理リヴァイアサンの速度を落とす。あとは頼むぞ』


『おけおけ、任せてよ』


シエルに念話で意図を伝える。彼女ならこれで十分理解してくれるはずだ。

アランはリヴァイアサンの正面に移動する。正面なら、高速移動によって上昇している防御能力の影響を受けにくい。

右手に魔力と理想を集中させ、超高火力の一撃を具象する。


リヴァイアサンもアランへ超高速で突撃してきた。

真っ向勝負のぶつかり合い。前提としてアランに勝ち目はない。如何にアランが強化され、リヴァイアサンが弱体化しようと、単純なステータスでアランがリヴァイアサンに追い付くことは絶対に無い。

少しでも動きを止められたらそれで良い。アランは全力でリヴァイアサンに殴りかかった。

だが、


「ごッがァア“……ッ!?」


直後、横腹を大きく抉られた。

アランを抉ったのは、リヴァイアサンの爪だった。空間接続によってアランの横に現れた爪が、アランの意表を貫いた。

負傷した反動でアランの体勢が崩れる。手元に蓄えていた魔法も離散してしまった。

抵抗は間に合わない。次の瞬間には、アランはリヴァイアサンに噛み殺されているだろう。


「《断罪之鉄槌》ッ!!」


しかし、そこへ劫火が割り込む。

グレイがリヴァイアサンの目の前に現れた。太陽の如く輝く大剣を、全力で頭部に振り下ろす。


「ぐっおぉぉぉぉぉッ!!」


グレイは渾身の力でリヴァイアサンを止めようとするが、圧倒的に力不足だった。

グレイの自己強化に限界はない。しかし能力の強化向上には時間がかかる。彼の強化速度がリヴァイアサンの攻撃に追いついていなかった。

グレイが出来た事といえば、僅かにリヴァイアサンを減速させたくらいだ。

それはアランが回復してから反撃するには、十分な時間だった。


「─潰れろォッ!!─」


アランはリヴァイアサンの頭上に移動し、理想を集約した魔弾を放つ。

狙ったのはリヴァイアサンの右目。魔弾が着弾した瞬間、大量の魔法が右目に炸裂した。


「オォォォォォガァァァァァァァァッ!!」


右目が陥没した。眼球の裂け目から血が溢れている。

リヴァイアサンは苦痛に暴れていた。空間の接続点の向こう側に後退し、元の状態に戻っている。リヴァイアサンの速度を大きく落とすことには成功した。


「《天帝七聖宝(グランドエクリプス)天鎖縛権之印(オールフォースクリア)》!!」


その隙にアリシアと天使たちが動いた。リヴァイアサンの周囲の空間から飛び出した大量の光の鎖が、リヴァイアサンに絡み付く。

リヴァイアサンの行動や能力が少しだけ抑制された。鎖は五秒も保たないだろうが、今は大きな好機だ。


「シエル!」


「ほい来た!」


先程と同じ手順で、アランとシエルはリヴァイアサンの転移を試みた。

しかし、二度も同じ転移を許すリヴァイアサンではない。今度は即座に二人の空間干渉に対抗してきた。

二人の干渉力を上回る力で空間に干渉し、彼らの転移を防いでいる。


「クッソ!空間を操作できない……!」


「ホンットめんどくさいなぁ!なんで無駄に頭良いだよぅ!」


どれだけ出力を上げても変わらない。それ以上にリヴァイアサンの力が強すぎる。彼らだけでは、転移は不可能だ。

だからこそ、


「彼らに続け!リヴァイアサンの気を逸らすんだ!」


リフレイムの聖装士たちが前に出た。アランと交代して回復に努めていたリフレイムの聖装士たちが、渾身の攻撃を何度もリヴァイアサンの全身に叩き込む。

やはりダメージにはならないが、攻撃の衝撃でリヴァイアサンの集中を削げた。転移させるなら今しか無い。


「「ぶっ飛べぇぇぇぇぇッ!!」」


大きく歪む空間の中、何かが砕ける音と共に光が瞬く。

次の瞬間には、目の前にあった巨体が消えいてた。リヴァイアサンは百メートル以上後方に転移させられていた。


同時に、海底の地面から光が放たれた。

光が海面に円形の法陣を映す。円の内側には紋様が幾重にも重ねられていた。

これはリヴァイアサンを封印していた法陣だ。それが出現したということは、封印術式の補強と再起動が完了したということ。


「やっと、十分経ったか……」


全員が安堵の息を吐き、すぐに気を引き締める。

ここからが重要だ。今の転移で、リヴァイアサンの体は封印の範囲内に入っている。

今から十分間、アランたちはリヴァイアサンを封印の範囲内に留めなければならない。

もし一度でも範囲外にリヴァイアサンが出れば、封印はやり直しだ。その時には、アランたちの余力は確実に尽きている。それは敗北と同義だ。

チャンスは一度きり。正真正銘、最後の攻防。

リフレイム皇国の行く末を決める、決着の十分間が始まった。

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