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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第八章 王者・無双編

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770 月兎の足輪


「シャマン、大丈夫なん?」


 試合場を後にし、シャマン、レッキス、ウィペットは出場戦士に用意された控室へと向かう通路にいた。


「あ、ああ。ちょっと身体が痺れてるが、まあ一晩寝りゃあ治るだろう」

「二回戦が今日じゃなくてよかったんよ」

「ところでウィペット、お前さん何をさっきから見てんだ?」


 ウィペットは指に挟んだ青白く光る小さな球をさすったり、光にかざしたりとしきりに観察をしていた。


「それ飴玉?」

「イエティが最後に吐き出したものだ。お前に蹴り込まれたときにだ、レッキス」

「イッ? 持ってきたん? ばっちくない、それ?」

「おそらくこれは魔道具だろう」


 レッキスがイヤそうな顔をするのも構わずにウィペットは観察を続けた。


「氷のブレスを吐けるショウジョウ族などいない」

「そりゃそうだ」

「てことはその球が?」

「うむ。あとで魔法横丁へ行って宝物鑑定を依頼するとしよう」

「あの闇市?」

「そうだレッキス。お前のその、月兎の足輪のときと同様だ」


 レッキスは自身の足首に装着した、細い鎖と軽い銀細工であしらわれた装飾品を見定めた。


「使いこなせていたじゃないか」

「確かにあの鑑定屋の目利きは確かだったんよ」

「嘘つきでもなかったな」


 ウィペットがニヤリと笑った。


「値は張ったけどね」


 レッキスが唇を尖らせて言う。


 月兎(げっと)の足輪。

 シャマン一行がエスメラルダからこのコランダムの街へと向かう途上で偶然発見した古代遺跡より持ち帰ったいくつかの魔道具の中のひとつだ。

 遺跡自体は数百年から数千年前のものらしく、最近群発していた地震の影響で埋もれていた地中より姿を現したのだと推察している。

 といっても断崖の一部に岩の崩れた形跡があり、そこに遺跡の一部がせり出していたにすぎず、発見したのも偶然であった。

 とはいえ彼らも冒険者。

 未盗掘らしき遺跡を放置できるわけもなく、大闘技会への到着がひと月遅れることになろうとも、きっちり探索を済ませてきたわけなのだ。

 いくつか持ち帰った魔道具は、コランダムに到着すると闇市に軒を連ねる魔道雑貨店へ持ち込み鑑定を依頼した。

 正体のわからないアイテムをむやみに装備してはどんな悪影響があるか知れたものではない。

 そうして効果の判明した魔道具のひとつが今レッキスが装備している、今日の試合を決定づけることとなった月兎の足輪なのである。


「空気を蹴る力を得られる、兎耳族専用の装備品。空気を蹴って空中を二段、三段とジャンプでき、あまつさえ宙を駆けることまでできてしまう。さらに空気を蹴った力=衝撃は蓄積され、最後に蹴ったモノにそのダメージが全て乗っかるんよね」

「例えば空気を二回蹴れば次に接地する場所に通常の蹴りプラスその二回分のパワーが上乗せされるわけだ。それが地面に着地した場合も同様で、そうなると地面を強く蹴り込んだことと同じになる」

「足場の悪いところでは危険なんよ。それにパワーを貯めすぎると蹴った足にも当然反動があるし」

「強い力で殴れば拳も砕けるのは一緒。状況に応じて歩数を見誤らんようにせねばならんな」

「何考えてこんなもん造ったのやら」


 鑑定屋によればこの足輪に魔力を付与したのは〈空を睨むベルデ〉という名の古代の付与魔術師(エンチャンター)らしい。

 たしかに他のいくつかの魔道具も空に関する魔力を付与されたものがほとんどだった。

 空に憧れがあったのか、そんな古代の魔術師の遺跡が地中に埋まってしまっていたというのはなんだか皮肉である。


「まあバニー専用装備らしいし、気を付けて使うんよ。で、シャマン……本当に大丈夫なん?」


 先ほどからレッキスとウィペットの会話にシャマンが入ってこないのだ。

 見れば明らかに辛そうである。


「ああ……とりあえず、ねぐらへ戻りてえな」


「いよぉ、おめでとうさん、おまえらァ」


 シャマンたちに声を掛けてきた者たちを見て、三人は即座に舌打ちした。


「祝辞を述べにやって来てやったんだぜぇ。辛勝だったな」


 それは何かとシャマンたちに突っかかってくるジャーレム三兄弟こと三人の鳥騎士たちだった。


「またアンタら! いい加減しつこいんよ」

「そう言うなって。これでも応援してるんだぜ、オレたちはよ」


 笑いながら三人の鳥騎士は無遠慮に近寄ってくる。


「なんよ?」

「ヘッヘッ」


 三人の歩みは止まらない。


「そこで止まりな! こっちに来るなよ」

「そこのデカイの、調子が悪そうじゃねえか。心配だなァ」


 三人のリーダー格であろう、ルフが言うとおり、シャマンは先程よりもさらに具合が悪そうに見えた。


「ぐ……なんでも、ねえよ。向こうへ行け」

「そうは見えねえな。手を貸すぜ」

「くるな」


 見るからにお互いの攻撃の間合いに近付いていた。

 いつの間にやら三人の鳥騎士は銘々が剣の柄に手を掛けている。


「止めておけ」

「ッ!」

「む」


 唐突に制止する声が割って入った。

 落ち着いた声だがわずかに怒気を含んでいる。


「テメェ」


 ルフの目に嫌悪が滲む。

 そこには両の拳を左右の腰に当てた赤い出で立ちの鳥騎士が仁王立ちしていた。


「タイラン」

「それ以上オレの友を愚弄するなら今この場で斬って捨てるぞ」


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