756 可愛いペットさんチーム
「Cブロック一回戦第二試合を前に、闘技場は不穏な空気に包まれているぞッ」
実況のピースウイングが声を震わせて会場を煽った。
それでなくとも第二試合の出場戦士が入場するや、観客たちがざわつきだしていた。
そして観客たちよりもいっそう心をざわつかせていたのは、これから戦う一方のチーム、ネコマタの剣士ウナナ、大柄な体格の格闘士ウッドマン、重戦士ゼニスのベテラン剣闘士チームの三人だった。
三人とも長らくこの街のコロッセオで剣闘士として戦い抜いてきた強者だ。
その三人がこれから対戦する相手チームを前にして激しい怒りを隠さずにいる。
「と、とりあえず剣闘士チームと対戦する戦士たちをご紹介しようッ! しゃべる灰猫ジャック! しゃべるフクロウのオーヤ! え~、チーム名は可愛いペットさんチーィムぅ」
精一杯盛り上げようとしたピースウイングだったが、さすがに無理があった。
なんといっても予選を大いに盛り上げたあの、炎に身をやつして縦横無尽に駆け回ったカエル族の若者がその姿を現していないのだ。
数合わせの猫とフクロウだけが、ちょこんと闘技場にたたずんでいる様は、おふざけが過ぎて笑い話にもならない。
観客はあのカエル族の自称勇者を見世物として楽しもうとしていたし、実力も未知数ながら期待値も高かった。
当然それを考慮して掛け金も上積んでいる。
この大会はギャンブルの対象としても大きな額が動いているのだ。
剣闘士がベテランであるだけでどれほどの実力を備えているかは誰もが承知している。
猫とフクロウなどというお飾りが失笑すら得られないのもしかりであった。
「ずいぶんと舐めたマネをしてくれるものだ」
「ああ。奇妙な術技を操るカエルだと気を引き締めてきてみれば、なんでペット二匹しか来ていないんだ?」
「でもウチ、猫とフクロウしばくなんて嫌だにゃあ」
「お前だって猫みたいなもんだろ、猫耳族はよ」
「亜人と小動物を一緒にするにゃ」
「ていうか不戦勝だろ、こんなもん。それとも本気でペットと戦わされるのか、オレたち?」
三人の剣闘士がボヤキと愚痴を織り交ぜているころ、反対側にたたずむテンガロンハットをかぶった猫と黄金の毛並みのフクロウもボヤいていたところだった。
「なんでアイツは来ていないんだ、魔女さんよ?」
「知らないわよ。あなたこそ聞いていないの、狩人さん?」
「ハァ……」
二人してそろってため息を吐く。
「てことはオレたちであいつらと闘う必要があるんだな」
「まったく、こんな雑用押し付けられるなんて」
何とも勝手な言い草に聴こえるものだとジャックですらアマンに同情したほどだ。
とはいえ気乗りしないのはジャックも同じ。
「オレの用事は逃げた女吸血鬼エリスを討つことだが、魔女さんよ、あんたの用事はどうした?」
「私? それがちょっと厄介でね」
ドオッッッォォン!
そのとき試合開始の銅鑼が鳴り響いた。
「おい! 本気でオレたちにペットと闘わせる気かよッ」
ウッドマンが激しい怒りと動揺を露わに吠えたてる。
しかし大会進行に変更は見られない。
「おい、仕方ない、やるぞ」
「とっとと終わらせようぜ」
三人の剣闘士は横一列に並んでジャックとオーヤに向かい駆け出した。




