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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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485 自由騎士タイランその18 砂上を進む


 ディバマント山の五氏族連合(フィフス)側をある程度下りると、アナハイは懐から出した巾着袋から地面にいくつもの特殊な小石をばら蒔いた。

 小石はそれぞれが勝手に振動し、不思議なリズムを響かせた。


砂漠の小石(サハラ・ハジャル)という石です。砂の上で踊るように跳ねて地面に振動を伝えます。ちょっとお待ちを」


 しばらくすると地中から、小石とは別の大きな揺れが近付いてきた。

 小石の躍る足元の地面を割って巨大な砂虫(サンドワーム)が顔を出す。


「よしよし。よく来てくれた、サンドワン」


 アナハイが声を掛けると目も鼻もないが大きな口は笑ったように見えた。

 胴体の大きさは直径三メートル。

 体長は大部分が地中の為わからない。

 手も足もないが皮膚は象牙色の硬い岩肌をしている。


「お、おい。本当に大丈夫なのか?」

「ええ。意外と大人しい奴なんです」


 一層口を大きく開きより笑顔になったような気がした。


「さあみなさん、彼の背中に乗ってください。大丈夫。ちゃんと地上の砂の上を走ってくれます。馬よりも速いですよ」

「お、おう」

「おら、行けよ坊や」

「そっちこそ先に行けよ、おっさん」


 さすがにボンドァンもクロウも尻込みする。


「じゃあお先に」


 するとバイド=バイタが真っ先に飛び乗り、次いでタイランが乗り込んだ。


「大人しい」

「見張らしもいいな」


 二人とも臆したりもせず実に上機嫌だ。

 タイランが下の二人を覗き込む。


「どうした? 乗らないのか? 走って行く気なら遅れるなよ」

「クソ、テメェふざけんなよ」

「あんたは飛べるからそう気楽なんだろ」


 悪態をつきながら二人はどうにか砂虫(サンドワーム)の背に乗った。


「さあ出発しますよ。行くんだサンドワン」


 アナハイは砂虫(サンドワーム)の頭を軽く叩いて合図を送る。

 すると巨大な砂虫(サンドワーム)は砂上に躍り出て上下に蠕動(ぜんどう)しながら前進を開始した。

 一行は座っていたが、縦に三メートルばかり上昇したかと思うと三メートルばかり下降する。

 それを何度も繰り返しながら前進していくのを実感した。


「うげぇ、これは慣れるのにしばらく掛かりそうだ」

「なるべく前方、遠くを見てた方がいいですよ」


 顔色の悪くなっていくボンドァンにアナハイが忠告する。


「水面を走る海竜(シーサーペント)に乗ってると思えば楽しめるわよ」

「目や口に入るこの砂が、ペッペッ……波しぶきなら快適だったろうが」


 はしゃぐバイド=バイタにクロウ・リーはしかめ面で怒鳴り返す。


「それにしても砂虫(サンドワーム)を呼び出し操るなど、特異な能力を身に着けたものだな」


 タイランがアナハイに尋ねる。


「実はこれもあの薬師のサクラさんに教わったのです。さっきの小石も彼女に貰いました」

「つくづく変わった女だな、ありゃあ。一体何者なんだ」


 クロウ・リーの質問にはアナハイも首を横に振る。


「よくはわかりません。ただ無償で僕たちに良くしてくれました。この恩は一生かけても返したいと思っています」

「サンドワンって言うのは?」


 珍しくバイド=バイタが質問する。

 よほど乗り心地が気に入ったのであろうか。


「ボクが最初に手懐けたのがコイツです。一番最初のサンドワームだから、サンドワンと呼んでます」

「単純だ。二匹目以降はサンドツー、サンドスリーか?」

「惜しいです。サンドッツにサンドスリです。どちらもあなた方に斬られてしまいましたが」


 そりゃ悪かったな、と真っ青な顔でボンドァンは小さく返し、遠くの青空を眺めることに集中することにした。


 砂上を走る砂虫(サンドワーム)のスピードは確かで、半日は掛かる行程を二時間強で走破した。


「よぉしよくやった。頑張ったな、サンドワン」


 全員が降りるとアナハイは砂虫(サンドワーム)を労い、地中へと帰してやった。

 地に足を着けてもまだ、身体には揺れる感覚が残っている。

 力強く大地を踏み締め、目を大きく開き、深呼吸を繰り返すことで平衡感覚を取り戻そうと苦心した。


「さて、ここからが本番か」


 クロウの発言で全員が空を見上げた。

 直上にどデカイ岩が浮いていた。

 大きさは数百人の兵士が駐屯する砦ぐらいは余裕である。

 似たような大岩が周囲に浮遊していた。

 砂漠だというのに無数に浮いている岩のお陰で辺りは暗く涼しかった。


 浮遊石地帯に到達したのである。


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