クレヨンの夢
そこに広がっていたのは、洋風な廊下だった。
薄暗く、灯がないと心許ない。
僕はリュックサックの中身を漁った。しかし入っていたものは、先ほどの宝石、親からの手紙、ハンカチ、水筒と、灯になりそうなものはなかった。
「もしかしたら手掛かりもあるかもしれないのに…」
僕はぼそっと呟くと、あの宝石が眩い金色の光を発したのだった。
これなら十分周りが見える。しかしこの宝石にどのような機能があるのかは、僕にはまだ分からない。
僕の足音だけが響く廊下の右端にまた部屋があるのが確認できた。
そしてまた、ドアノブを捻った。
僕の視界に現れたのは、子供の落書きをそのまま出したような、クレヨンで描かれた世界だった。お世辞にも上手とは言えない。
道、ぐちゃぐちゃと混ざり合った何か、家、そして人だと思われるものが三人。その中の一人だけは背が低かった。
僕は取り敢えず道に沿って歩いた。あの三人は、僕なんか視界に入っていないようだ。その方が有難いからいいのだが。
更に道を歩いていくと、クレヨンで描かれたような三メートル程の大きな顔がいた。ポロポロと涙を流すばかりで、なんだか見ている僕も哀しくなってしまう。
「寂しいよ、寂しいよ。だってお外に行けないから」
その声は、性別不明の幼児の心の叫びのように聞こえた。弱々しく、儚い声だ。
「ねぇお兄さん、お友達になってくれる?お兄さんとならお友達になれる気がするの」
申請されたが、正直どうすればいいのか分からなかった。人ではないし、悪魔の可能性だって十分ある。冷や汗が流れる。
「なってあげたいけど多分この屋敷を出ることになっちゃうから…だからごめんね?」
「屋敷から出るの?…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!お願い、置いて行かないでっ!!帰りたいよぉ!!」
更に涙が溢れ、機嫌が悪くなったようだった。
そして大きな顔は、歪んで花の怪物へと姿を変えていった。口があり、鋭くナイフのような牙をちろりと見せる。蔦を出し、僕に目掛けて伸びてくる。
僕は確信した。目の前にいる生物は『悪魔』だと。




