06「周りの大人達」
06「周りの大人達」
「弱い者・弱い立場の者」を発見すると放置できない
モルスの保護者のトートが・・・拾ったり、引取ったりして
いつの間にか構成された「ベファーナの家」を拠点とする
色々な死神や、生き物が所属している「今のギルド」
モルス以外の子供は
ケルベロスの仔犬と、子猫のヨシュアしか存在しなかった。
それでも、モルスにとっては・・・
大人達に遊んで貰い十分、楽しい毎日を送っていたのだが
モルスが前に所属していた「元のギルド」の体制が変わり
休憩時間ができて・・・
子供のモルス達が、今まで無かった暇を持て余している
と、聞き付けたトートの提案で・・・
犬橇訓練の序に、保護者のラ・モールに連れられて
時々、「元のギルド」に遊びに行く事になった。
元のギルドの近くには、天使が意外と近くに存在している為
万が一の為、単独で遊びに行く事はトートに禁止されたが
連れて行ってくれる保護者達の気遣いがモルスは嬉しい
『エンゼルや、エンジェルみたいなのが居るんじゃないんだね
小天使の「アンジェリーナ」や・・・その下の位の
「アンジェリカ」程度しかいないなら、大丈夫そうだ
この辺で、皆と一緒に遊ぼっか?』と、ラ・モールが・・・
一緒に遊んでくれ、今までにない幸せを味わっていた。
遊びを憶えると・・・一緒に、悪戯も覚えて
悪戯もしたくなってくる
で・・・時々、怒られもってモルスは成長していった。
但し、ベファーナは物凄く・・・本気で怒る
『この世界には「謝っても許して貰えない事」って言うのが
「一見して判別できるモノ」から・・・
どう考えても、「罪には見えない不条理過ぎるモノ」まで
多種多様・・・星の数程、存在しているの・・・
私もね「謝っても許して貰えない罪」を犯した事があるのよ』
・・・怒る時、ベファーナは自分の過去を話してくれる・・・
道を尋ねに我が家を訪れた者達に、親切心で道を教えて
『尊い御子の誕生を一緒にお祝いに行かないか?』と誘われ
年末の忙しさから「それ」を断って・・・
『「態々、褒美として誘ってやった」のに
「私達の誘いを断る」と言う「大罪を犯した愚か者」め』と・・・
「誘いを断った」故に「罪」に問われ・・・魔女にされた
・・・それは、不条理過ぎる種類の許して貰えない事・・・
『「些細な事」が、「許されぬ大罪」となる事があるのよ』
そう・・・辛そうにベファーナは語る
『御蔭で、私に血で繋がる子孫達は・・・
今も続く魔女狩りで、全て刈取られてしまったわ』そう言って
ベファーナは古ぼけた「クリッペ」を・・・
傷だらけの「三賢者の人形」と
「夫婦と赤ちゃん」そして「羊・馬」の人形が全部セットとなった
「厩を模したドールハウス」を見詰める
『今でも、あの時・・・直ぐに
「一緒に行く」と、言えなかった事を後悔している時があるわ
問われた罪に納得なんて・・・今でもできないけどね』
一呼吸置き、溜息を吐(つ」)いて・・・憂いを秘めた笑顔で
目を見て・・・ベファーナは必ず、諭すように話す
『理解できなくても、「やっていい事か、悪い事か」を
知っておかなければイケナイの!それだけは憶えておいて
「やってはイケナイ事」を絶対にしては駄目だから・・・
それは、相手によっても変化するから気を付けるのよ』
モルスは何時もここで不思議に思う
『ベファーナは・・・
ベファーナを貶めた人間を恨んではいないの?』
この時のベファーナの答えは、何時も一緒だった
『私は魔女狩りで狩られてしまった血族の分まで
私が生きる事に決めているの・・・
納得できなくても、誰かを恨んで生きるなんて無駄だわ
私は今、血族の分の人生を生きているのよ
血族達の人生が・・・
誰かを恨んで生きる人生であって良い筈が無いでしょ?
それに多分、恨んでたら飼い猫の名前を「ヨシュア」に
したりしないわよ「ヨシュア」は・・・
「キリスト」の名前の1つなんだもの』
ベファーナの得意げな笑顔がモルスは大好きだ
怒られる度に、モルスにとってベファーナも
特別な存在になっていった。
優しくて、統率力があり力強く周囲を引張って行く
トートが「父親」の様に・・・
臨機応変に色々教えてくれて、一緒に遊んでもくれる
ラ・モールが「兄、時々姉」の様に・・・
そして、ベファーナは・・・
モルスの為にモルスを怒り
モルスの為にモルスの周りの者に怒り
モルスに起きた、過去の不条理を怒りながら
愛し・護り・叱り・躾・・・モルスを我が子の様に育て
「母親」の様にモルスを大切にしてくれた。
モルスはその御蔭で・・・
実の両親の事は何とも思わなくて済んでいるのかもしれない
モルスの両親は・・・
「できちゃった婚」で、無計画に子供を年子で数人作り
自分達では、ちゃんと面倒見切れなくなって・・・
『お兄ちゃんなんだから我慢しなさい』と
『邪魔』とかしか、モルスに個人に対して声を掛けなかった
モルスも・・・その程度しか、声を掛けて貰った記憶が無い
基本、子供は蔑ろにされ続けていたのだ。
モルスには・・・本当の両親に愛された記憶、処か
実の両親に愛された事が・・・もしかしたら、無いのかもしれない
何時も一緒に蔑ろにされてた兄よりも
モルスは、親に・・・家族に・・・
元々、何の感情を持っていなかったのかもしれないと
今になって特に感じる
当時、幼かったモルスにも分かった事は・・・
両親は夫婦で愛し合っていたけど、「それだけだった」と言う事
愛し合って生産された副産物に対する愛は無かったのだろう
その証拠かの様に
モルスの両親は、自分達の保身の為・・・
多分、多少はモルスの兄と弟や妹達の為にも・・・
処分を受けたモルスを躊躇なく、簡単に切り捨て
素性を隠して・・・
即刻、他のモルス系のギルドに移籍していた。
その事を知ったベファーナは、理不尽に子供達を奪われた経験から
『子を捨てるなんて理解できない』と嘆き悲しみ
捨てられたモルスの代わりに、泣いて両親に対して怒ってくれた
モルスは密かに、親が「自分を捨ててくれた事」に感謝していた。
直接関係ない説教を垂れる人の話も
ちゃんと要点だけ確認すれば・・・的を得た話だったりする昨今
貴方には「真実」が見えていますか?
不幸そうに見える人が「意外な所で幸せを感じている」
そう言うのが、私は好きです。




