03「アンジェリカとの出会い」
03「アンジェリカとの出会い」
クリスマスマーケットの喧騒を聞かない様に
子猫に翳した手と逆の手で、耳を覆う
子猫が持つ欲求が・・・求めるモノが聞こえて来る
モルスは・・・子猫の魂を極力、幸せな状態で救い上げる為に
自分に叶えられそうな願いを探していた。
『ネコニャン達を殺さないで!』誰かの声で、集中が途切れる
視線を声のした方向に向けると、モルスと同じくらい幼い天使が
猛突進で走って来ている
「立ち上って避けよう」と、思ったのだが
疲労し反射神経が鈍っていたモルスには、そんな体力が残っていない
結局、天使に体当たりをされてしまい
道を除雪してできた、雪山に向かって転倒する事になった。
雪山にぶつかり、座り込む様な形で尻餅をついたモルスの上には
近い体格のアンジェリカがのしかかっている
身動きが取れない・・・
モルスは溜息を吐き、体当たりしてきた天使に声を掛けた
『どいてよ・・・このままだと、その「ネコニャン」とやらが
ゾンビになって、他の生き物を襲ってしまうよ?』
モルスの言葉にアンジェリカは驚き、モルスの上から飛び起きた。
『御願い!ネコニャン達を助けて!』
アンジェリカは泣きながら「猫の入った木箱」を抱え込み
悲痛な程、真剣に懇願してくる
見える人が見たら・・・
モルスがアンジェリカを虐めている様にしか見えなかっただろう
それにしても・・・このままでは、仕事にならない
モルスは胸の前で腕を組み、打開策を必死で考えた。
死神を「殺して命を奪う者」と、信じて疑わない天使を
説得するのは難しそうだ・・・
『君は天使だよね?奇跡は起こせないのかい?』
モルスの言葉にアンジェリカはしょんぼりする
『私には死んだ子を連れて行く事しかできないの・・・
それに・・・この子達はバプテスマを受けて無いから
私には、死んでも連れて行く事も出来ないのよ』
『バプテスマ?』モルスは怪訝な顔をした
『罪を洗い清めて、神の子としての新しい命を貰う儀式よ』
アンジェリカの説明にモルスは少しだけ納得した。
『信者以外は救わないんだ・・・
天使の仕事って言うのは案外、非情で無情なんだね』
モルスの素直な感想にアンジェリカは傷付いているみたいだった
『じゃあさ・・・そのバプテスマって言うのを君が
強制的に猫達に受けさせる事は出来ないのかい?』
モルスは、名案だと思ったのだが・・・
アンジェリカの表情から、それができない事が伝わってきた
それ以前に、「神を信じたから」と言って・・・
救われるとは限らないのが現実である。
2人が会話している間に・・・
猫達の「命の炎」から上がる「黒い煙」が白へと変化していく
「そろそろ、仕事をしないと不味い」
でも、アンジェリカは猫達を・・・渡してくれない
「体力を無駄に消費したくなかった」のだが・・・
モルスは「自分に負荷」を掛けて、無理して仕事に取り掛かる
目を閉じ猫達の深層心理へと語りかけた。
母猫の願いが一番強い・・・
「1匹でも良いから子供を救って欲しい」のだそうだ
子猫達は・・・皆、「温もり」を求めていた。
「白い煙」が「消え去る前に」願いを少しでも叶え
魂を刈取らないと・・・
この世に未練を残し、魂がこの世で彷徨う事になってしまう
「死神」に「先入観」を持った「天使」に
「死神の仕事」を説明して「理解させる」には時間が足りない
・・・説明していたら猫達全員が・・・
モルスは天使の持つ「感情」に懸ける事にした
『その箱の中は、凍える程に冷たいよ?
君は天使なのに慈悲を与える事も出来ないの?
子猫だけでも箱から出して抱締めて温めてあげるべきじゃない?
それとも、信者じゃない者は・・・
そのまま苦しみだけを与え続けて、見殺しにしなきゃいけないの?
君は・・・そんな悪魔みたいな事ができる子なの?』
天使が嫌うキーワードを織り交ぜ、アンジェリカに伝える。
天使が「地上の生き物に触れる事」を「禁じられている」のは
知らない事も無かったのだが、
モルスの仕事の邪魔をした「アンジェリカが悪い」し・・・
今は、時間が無い「緊急事態」だ
モルスは「アンジェリカ」に・・・
子猫を抱締めさせて、子猫が求める「温もり」を与えさせ
母猫の魂に語り掛け約束を交わし・・・
証拠に1匹だけの運気を上げてから、母猫の魂を刈取る
子猫達を膝の上に乗せ、体と翼で覆い被さる様にして
子猫達を温めていたアンジェリカが、それに気付き・・・
顔と悲鳴を上げる、その隙を衝いて・・・
モルスは子猫達の魂も刈取った。
モルスの行動に驚き、死体に恐怖し・・・
泣き叫ぶ天使が・・・死体を放り投げ、天に帰って行く
モルスは死体の中から・・・まだ、生きている子猫を拾い上げる
母猫の願いだ・・・
この子猫は暫く、死なせる訳にはいかないのだが
『しまった、黒猫か・・・』
アンジェリカが見せてくれなかったが為に
感覚だけで「一番、寿命のある子猫」を選んだのだが
しかし、寄りにも寄って「黒猫」を残してしまうとは・・・
モルスは懐に震える子猫を押し込みながら心底、後悔した。
黒猫は不幸の象徴として、この地域で忌み嫌われている
運気を上げても人間の飼い主が見つかるかどうか・・・
モルスは脱力し、最初に猫の入った箱が置いてあった
その付近の街灯を背に、座り込んで休憩を取る事にする。
もう、1歩も動けない・・・
『それにしても、後味の悪い仕事だったなぁ・・・』
天使の・・・アンジェリカの泣き顔が、脳裏にちらつく
『さっきのが、トラウマにならなければいいけど・・・
せめて、引き留めて説明してあげればよかったかな?』
体力も精神力も限界を越えていた、眠気がモルスを襲う
『ヤバイ』と、思った時には・・・時、既に遅く
モルスの意識は完全に飛んでしまっていた。
「誤解」って解けないもんですよね
一度、思い込んだら・・・よっぽどの事がない限り・・・
誤解したまんまの事柄を信じ続けるモノだからw




