16「愛しい者の為に」
16「愛しい者の為に」
『手伝おうか?』誰かの声が聞こえてきた・・・
振り返ると、トートとラ・モールが
我が身の苦しみであるかの様に辛そうにこちらを見ている
人一倍、感受性の高いエンゲルは・・・自分の事の様に泣いていた
『ありがとう・・・でも、でもね・・・彼女の願いは
できるだけ私自信の力で、彼女の為に叶えてあげたいんだ・・・』
背を向けてトートから借りた仮面を外し、涙を拭ってから
モルスは今できる精一杯の笑顔を・・・3人に見せた。
『それなら僕は勝手に僕の願いを叶える事にするよ
丁度、君に雲一つない澄んだ夜空をプレゼントしたかったんだ』
ラ・モールは・・・
モルスがやろうとしている事の邪魔になる障害物を片付けた
『良い考えだ、俺等も・・・
自分達の願いを勝手に自分達で叶えさせて貰う事にしよう』
トートはエンゲルの肩を叩き、2人は頷き合い・・・
全世界に広がる風の道を作った
『準備ができたらコレを使って、大切な人を送り出すと良い・・・
コレは俺とトートからの・・・
お前への、ほんの少し気の早い「クリスマスプレゼント」だから』
モルスは3人の優しさが・・・
3人の御節介が嬉し過ぎて泣きながら微笑んだ。
モルスは・・・
教会内を漂う密度の高い紅い闇に自分の全ての力を注ぎ込む
土に帰る事を知らない「天使の欠片」と
本来、土に帰る事ができない筈の「魂」を「モルスの力」で
大地で「他のモノを育む事ができる存在」に変化させて
トートとエンゲルが準備してくれた風の道へと送り出した。
「天使の欠片」が、トートとエンゲルの生み出した風に乗り
ラ・モールが作り上げた雲一つない夜空まで舞上がり
ジェット気流に乗って、全世界に薄く散り散りに広がっていく
モルスは、彼女を思い微笑んだ
空に広がった「天使の欠片」は、核となり水分が集め
雲一つない快晴の空に、雨雲を生み出した
彼女を支配していた「神」にでも
普通に見付けられないくらい、小さくなり・・・
発見できない程、広い世界に送り出された粒子は・・・
トートとエンゲルの力に守られ、雨となって大地に滲み込んでいく
「モルスの大切な天使」は無理矢理、土に帰らされ隠された。
無事に送り出す事ができたモルスは、石の床に大鎌を落とし
糸が切れた操り人形の様に脱力して、膝を床に落とし
崩れ落ちる様に倒れゆく
逸早く動いたのはトートだった・・・
自分の大鎌が落ちるのを、床でリバウンドしているのを無視して
モルスを一番最初に愛おしそうに抱き止める。
『トートは・・・本当にモルスが一番、大好きだね
モルスに「愛してる」って言う、「愛の告白」はしないの?』
ラ・モールの言葉にトートは頬を染め、嫌そうな顔をした
『俺に「御子様を驚かせて遊べ」とでも言うつもりか?』
2人の死神の会話を聞きエンゲルが笑う
面白そうなので、エンゲルもその会話に参加する事にした
『でも、モルスを「愛してる」んだろ?』
2人に突っ込まれ、トートは眉を顰める
『お前らなぁ…「母性愛」って言うのを知らないのか?
俺はこいつを、自分の子供みたいに愛してるだけだぞ・・・』
溜息を吐きながら言うトートに、エンゲルが追い打ちを掛ける
『それなら、モルスの「母親」になれば良かったのに・・・
手続きすれはなれたんだろ?』
トートは困り果てて笑うしかなかった
『「モルスのママ役」は、ベファーナに任せているんだ・・・
だから、俺は「モルスのパパ役」で良いんだよ
それに・・・貧乳で、一番の長身の俺が「女」で
「今日から君のお母さんは俺になりました」とか言われたら・・・
ちょっと嫌だろ?それ以前に、俺が自分で「女」だと認めるのが嫌だ
お前らが、変な気を回すなよ・・・ややこしくなるから・・・
知る必要性の無い事は、モルスが知らなくてもいぃ~だろ?』
幼馴染の3人組は、眠るモルスを中心に笑い合った。
『俺等の御姫様は、今も昔も天邪鬼で困ったお嬢さんだ・・・
トート・・・俺達に御願する事は無いか?』
エンゲルの申し出にトートは遠慮するつもりも無い
『俺は、モルスの叶えたい願いを叶えてやりたい・・・
これからもずっと、モルスの為に手を貸し続けてやってくれ』
トートとモルスが大好きな2人は、笑顔で請け負った。
空に送った力が自然に相殺され、雨が霙に・・・
霙から真っ白い雪へと変わった
トートはラ・モールにモルスを預け
目覚める事の無い永久の眠りに付いた修道女の魂を引き上げる
『お前には白雪姫みたいな眠りをプレゼントしよう・・・
「モルスの天使」の身代わりとして
ガラスの棺に入って好きなだけ眠っていればいい』
ラ・モールとエンゲルが、他にも何か言いたげに同時に問い掛ける
『その眠りに「王子様」は、現れるのかい?』
トートは魂を御姫様抱っこし、不敵な笑みを浮かべた
『冥府での姿は、心の描写・・・
冥府の住人が恋する程、こいつの心が綺麗なら現れるかもな』
トートは「6つ」の「天使の魂」と「1つ」の「人の魂」
そして、「特別誂え」の「修道女の魂」を抱え・・・
2人に『後は、頼んだぞ』と言って中空に消えた。
『天の神様に寵愛を受けた「天使の小娘ちゃん」も
冥界の神の寵愛を受けた、我等が「死神の姫君」も・・・
何故に「ルール違反」に手を出して大丈夫と思うのかね』
トートを心配するエンゲルに、ラ・モールが言う
『トートは、きっと大丈夫だよ・・・僕が保証する
僕達の神様は、仕事のできないケルベロスを冥界の規定道理
「殺処分」できなくて、大量保有してしまう様な神様だよ?
小娘ちゃんの所の神とは器が違う』
エンゲルは顔を引き攣らせて笑う
『え?もしかして・・・
そんな理由で、お前らのギルドに犬が溢れてたのか?』
『ベファーナが駄目って言わないからね・・・
トートが際限なく仔犬を預かって来てしまうんだ』
笑顔で答えるラ・モールにエンゲルは安心し
翼を羽ばたかせ舞上がる
『それなら、ちゃんとした天の神の器も見せなきゃな
俺の神様の器だって、大きいんだぞ』
エンゲルは天へと帰って行った。
力を使い果たし、意識を無くしたモルスを・・・
ラ・モールが大切そうに抱上げ、ベファーナの家に連れ帰る
トートは・・・
自分が仕える冥界の神に、ちょっと交渉事を持ちかけに出掛け
エンゲルは・・・
自分が仕える天の神に、後ろ盾になって貰えるよう頼みに帰った。
「男装の麗人」って・・・良いですよねw
その為に「メインの性格設定」を
トートとベファーナには、同じ物を使用しています。
そしてこの物語は、「微妙な片思い」を主体としているので
エンゲルとラ・モールにも、それぞれで「片思い」をして貰ってます。




