14「犯した罪の後・・・」
14「犯した罪の後・・・」
今年も、寒く厳しく長い冬の時期が訪れる
灰色の空から、白い粉雪が舞い降りて来るのを見て
黒猫のヨシュアが・・・
『初雪だ!』と、子猫の様にはしゃいで
次々と落ちて来る雪と転がり回りながら戯れている
モルスはベファーナに頼まれて裏庭で薪割りをしていた。
今は、モルスが参加するトートの部隊の出陣待機の時間帯・・・
モルスが薪割りをしている間に
アンジェリカが活動する地域への出陣命令が届く
「嫌な予感」を感じたトートとラ・モールは・・・
ベファーナに事情を話し、屋敷にモルスを残して
念の為、トート以外のトートの部隊のメンバーを全て残し
ラ・モールと、ラ・モールの部隊の数人を引き連れ
買い出し名目の「少数部隊」で出掛ける事にした。
出掛けた先は標高の高い海沿いの街、雪が降り積もっている
辿り着いた先は「修道院」
トートを待っていたエンゲルが、教会の屋根の上で1人
表情暗く、少し悲しそうな表情で2人を迎えてくれる
『もしかして・・・
あのアンジェリカも、ターゲットだったりするのかな?』
苦笑いしているラ・モールの言葉に、エンゲルは無言で頷く
『今日の仕事は?』
トートの声掛けで、エンゲルは溜息混じりに言葉を紡いだ
『狩猟だ・・・この教会内に居座る7人の天使を狩ってくれ』
一呼吸置いて・・・
『ここの神さん・・・
「自由が過ぎた小鳥達に風切羽は必要ない」との要望なんだ
翼を刈り取ってから冥府に送ってくれ』
エンゲルは吐き捨てる様に言った。
『後で怒るかもしれないが、モルスを置いて来て正解だったな』
辛そうなトートの表情と・・・エンゲルの様子に・・・
ラ・モールは暫く何も言えなくなってしまった。
3人それぞれ、モルスを気に入り可愛がっていたので
モルスの大切な子を狩ると言う事が、辛く感じる
意を決してラ・モールが、エンゲルに「狩る理由」を訊き・・・
『死なせてでも心を救ったに違いないのに、少し不条理だな』
と、ラ・モールは零し
『婦女暴行犯への制裁を加えた6人にとっても十分不条理だろ?』
この地を仕切る神の判断に・・・
別の地域の神に仕えているエンゲルは納得できない様子だった。
トートは、この場にラ・モールを残し
『ここでの予定がキャンセルになった』と、一緒に来た
ラ・モールの部隊の死神達に伝え
買い出しの名目・・・
今晩のサラダ用の「チコリー」と「トレビス」を預けて
先に、ベファーナの家へと帰らせる事にした。
『ラ・モール、あのアンジェリカは俺が狩る・・・
悪いが・・・幼馴染の誼で仕事を手伝ってくれ』
トートの苦肉の決断に、ラ・モールは悲しげな笑顔で答えた
『トートは、一人で背負い過ぎだよ・・・
手伝うだけじゃなくて、僕にも仕事させてよね?』
同じく2人の幼馴染である天使のエンゲルは
『この仕事の上の担当は、神が違う「だから忍耐が必要だ」
って言ってもコレは忍耐が必要過ぎだよ・・・我が神様』
自分の仕える神に向かって小さく呟いた。
天から・・・この地域担当の神の声が催促する様に聞こえて来る
『「鎌」を入れよ、「刈り入れ」の時は「熟」した』
エンゲルは舌打ちして、御決まりの文句を適当に早口で言い
その場に潜伏する天使達に伝え・・・それぞれの罪を伝え
『苦しみは「神からの試練」として、敢えて受けねばならない
それを勝手に免除する事は「神への反逆」天使にあるまじき行為』
と・・・最後に若干、この事例に対し心にもない事を
例のアンジェリカにも罪として伝えた。
いつの間にか自分達の神に裁かれていた事に気付いた天使達は・・・
神の力で、潜伏していた修道院の中に閉じ込められ
刑を実行されたくない為に、逃惑う
トートは・・・
瞬時に間合いを詰め翼を刈り取り、そのまま命まで狩っていく
ラ・モールは・・・
天使と見紛う笑顔で近づき、優しく触れる様に刈り取り
相手の心と一緒に命も狩っていった。
死神の2人が3人づつ天使を狩り、残る一人の天使
・・・モルスが恋するアンジェリカは・・・
「幸せな永久の眠りの中にある修道女」の「眠る棺」の前
自分が仕える、自分を狩る事を命じた神に祈る
『神よ!この娘にはもう、試練を与えないで下さい』
嘘偽りの無い・・・言葉と祈りは、エンゲルに届いた
生粋の天使ではないトートとラ・モールにも届いたが・・・
アンジェリカが仕える神様には、届かなかった。
同じ一つの神とは思えない非情な言葉が
見届け役にされた・・・天使のエンゲルと
天使を狩りに来させられた・・・トートとラ・モールに届けられる
エンゲルがトートに謝った、トートは黙って骸骨の仮面を被り
アンジェリカの翼を刈り取った。
・・・アンジェリカの翼が刈り取られようとした時・・・
アンジェリカの胸元に飾られていた
モルスの作った「スノードロップの花飾り」がモルスを召喚する
モルスは、アンジェリカの翼が刈り取られる瞬間を目の当りにし
トートが、アンジェリカの命まで狩る事を阻止する
それでも、アンジェリカは堕天させられてしまった。
モルスが作った「スノードロップの花飾り」は
モルスの意思でアンジェリカを護る
その「スノードロップの花飾り」とモルスを見て・・・
トートは、骸骨の仮面の内側で嬉しそうにホッとして微笑んだ
ラ・モールも、こっそり微かに微笑んで・・・
エンゲルは、困っていなさそうに笑い『困ったなぁ~』と
大きな声でワザとらしく言った。
『このアンジェリカの死の担当者は、このモルスだ・・・
我々では対処できない、死神のルールの乗っ取って退散する』
仮面を外したトートが、そう宣言して・・・
見届け役のエンゲルも、狩り手のラ・モールも・・・
この地の神から依頼された仕事から、正当に正式に手を引いた。
・・・アンジェリカの犯した罪は、消える事が無い・・・
それでも、アンジェリカが仕える神の束縛から少しでも離れた
偶然生まれた今の状態、半分モルスの所有物になっている状態が・・・
トートを始め、ラ・モールも、エンゲルにも喜ばしかった。
『苦しみは「神からの試練」として、敢えて受けねばならない』
と・・・どこぞの神の信者の人が言ったのを聴いた時
「そんな神・・・滅びれば良いのに♥」って、心の中で思ったねw




