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17.官能的に〜Voluptuoso〜

ビビですわ。先週はお読みいただき、感謝いたしますわ。今週は本編に戻りますの。

私の召使い(下僕)は何を考えて行動するのか予測不可能ですのよ。心配ですわ。

いまいち締まらない会話をした数日後、響はとある5階建ての建物の入り口に立っていた。

エントランスを抜けたエレベーター前に、フロア案内図がある。一見するとおしゃれな建築デザイン会社のようにみえるこの建物、1階が警備会社事務所、2〜3階が法律事務所、4〜5階が24時間営業のジムが入っている。響はエレベーターに乗り込むと、4階で降りた。そこに、スリーピーススーツを着た40代くらいの男性が立っていた。背が高めの響よりさらに大きく、細身ながら薄っすらとついた筋肉、わずかに波打つ髪は綺麗に整えられている。端正な顔立ちで、街を歩けばきっと10人中9人は確実に振り向きそうだ。響はこの男性に付いて応接室に入った。その男性は上着を脱いで、それをソファに雑に掛けると、おもむろに両手を広げた。


「響ちゃ〜ん!会いたかったわ〜っ!!」


その男性は和臣だった。


「わー…会いたくなかったわー…」


棒読みの響の受け答えを気にもせず、無理やりギュッと抱きしめる。そして、抜け出そうともがく響を無視して、そのまま話を始めた。

「この前メールで頼まれた件だけど、調べといたわよ。本気でやるの?」

響がモゴモゴとくぐもった声で答える。抵抗は諦めたらしい。

「やるよ。ちょっと強引だけど、今のところはその方法が一番成功率が高そうだから。まあ、荒療治ではあるけど。」

「ふ〜ん…放っといて良いのに。そのうち、事務長が捕まれば目が覚めるかもじゃないの。そりゃ引き離すのは早い方が良いけど、失敗したら余計に依存しちゃったりして『みみちゃん』が事務長の片棒を担ぐことになりかねないわよ。やるからには慎重にやるのよ、分かった?」

(馬鹿力め…いい加減に放して欲しい。)響は心の中で毒づく。

「分かってるよ。はいっ、じゃあ『みみちゃん』の住所とか詳しい情報を教えてよ。『直に事務所まで来たら教える』って約束したよね?あと、いい加減に放せ…苦しい。」

「…ダ〜メッ。もう少し味わわせて。私たちの可愛い末っ子ちゃんを充電したいのよ。」


「………」


けっして柔らかくはない和臣から、ラベンダーのリネンウォーターの香りがする。

響は、チェロに触れる優しい温度で和臣の背中に手を回した。和臣が驚いて響を放す。響は和臣のベストの襟にそうっと触れると、ニヤリと笑い、そのまま和臣に背を向け応接室を出て行った。響の革靴の足音が廊下で響いている。

和臣はソファにどさりと腰を下ろすと、だらしがなく両手足を脱力し、天井を仰ぎ見る。大きく息を吐き出し、体を起こすと、目の前の灰皿が目に入った。和臣は乱れた髪を右手でかき上げる。

「…すごい技ね…降・参…」

溜息をつく。

「…煙草、やめるんじゃなかったわ…」

ラベンダーの香りが一段と強く香った。


この日、この部屋を覗く怪しい視線があったことを、2人は知らなかった。

澤田「…うわ〜っ、二人とも何とも…。すごい一族っすね。マコママ(和臣)男装もイイ男だな〜。ね?蝶子さん?…ん?蝶子さん!」

蝶子「…腐(ふ)腐(ふ)腐(ふ)っ…負(ふ)っ…うっ…」


ーガクリー(蝶子、意識を失う)


澤田「漢字が違うっす!え?『腐』で笑ってるの?腐(くさ)ってるの?負(ま)けてるの?誰か助けてくださ〜いっ!」

響「寝かしとけ。次話で起きるから。」

澤田「響さん…マコママに何したんすか?どんなセ…」

響「胃は要らんのか?」

澤田「必要なんで黙ります。」

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