13.企み〜Machiavellico〜
完ちゃん、謎の人脈。たまにこういう隠し玉持ってる人居ますよね?しかも特大。
「と、いう話なのよ。」
蝶子の話は澤田の調査内容とも合致している。当事者の話なだけあって、より不穏の正体がはっきりと姿を現した。しかし、ここでも土橋みみが現在何をしているのか、知る者はいなかった。和臣からの写真と手紙が唯一の手ががりだ。
「……」
無意識に、あの節高の指がテーブルを叩く。
「…ちょっと響?聞いてる?!」
蝶子は乱暴に持っていたグラスをテーブルに置くと、氷がカラカラと賑やかな音を立てた。
「うん、聞いてる聞いてる〜。」
響は、上の空で返事をしている。蝶子が抗議しようと口を開きかけた時、
「まあまあ蝶子ちゃん、お夕飯食べていく?蓮さん、まだ帰って来られないんでしょう?僕の話も聞いて欲しいな〜。」
完太が優しく蝶子に声を掛ける。ちょっと不貞腐れたまま、蝶子は言った。
「…いただく。…聞く。」
「で、完ちゃんは何か分かった?」
食後のハーブティーを飲みながら、響は尋ねた。
「えーとね、理事長にズバリ聞いちゃった。」
「へっ?」「えっ?」
響と蝶子から変な声が出た。響がハーブティーのカップを落としそうになる。
「完ちゃん…『ずばり聞いちゃった』って何を聞いちゃったの?大胆過ぎない?目をつけられたらどうするのよ!」
蝶子が、乱暴にカップをテーブルに置く。
「ヤダな〜二人とも〜。理事長はね、そんな事する人じゃないよ。絶対に。僕のお腹に誓うよ。」
良い笑顔で完太が答える。
「別の物に誓ってくれ…。鍋とかあるだろう?」
珍しく響が動揺している。
「理事長にね、『グランデグループと仲が良い人を知っていますか?』って聞いたんだ。そしたら『学長だ』って教えてくれたよ?まあ、娘婿だよね。」
響と蝶子は驚きすぎて動けない。
「じ…じゃあ、学長とグランデグループの誰かが、今回の事を仕組んだってことなの?」
「うん、そうなるよね。理事長がね、『あのバカは名をあげることしか考えとらん!芸術の、音楽の何たるかを知らん!』って怒ってたよ。ほら、あの人もリアオーケストラ創設者と同じで、音楽が好きで大学を作っちゃった人だから。音楽を使って何かしようなんて考えてもいないよ。」
「あの…完ちゃんて、事務員さんよね?勤続年数が長くなると、理事長とそんなに親しくなれるの?」
蝶子が恐る恐る尋ねる。
「あれ?言ったことなかった?今は違うけど、僕の実家の近所に住んでてね、僕が子どもの時からずっと可愛がってくれてたんだ。」
「響は知ってたの?」
響が驚いた顔のまま首を横に振る。
「言ったことなかった?ちなみにお夕飯の筍は、理事長からの頂き物だよ。『響みたいな奴の面倒は大変だろう?』って下茹でして渡してくれたんだ。」
あまりにもあっさりとした黒幕の登場に、二人は言葉を失った。そんな二人に尚も畳み掛ける。
「理事長はね、リア側が学長からお金をもらって、メンバーの入れ替わり劇をでっち上げたんだって言ってたよ。」
「じゃあ、どの楽器の演奏者を辞めさせて、新しく採用するかとかも決めてあったってこと?響はどう思う?」
「それは難しいんじゃないかな?学長が送り込みたい生徒・卒業生のパートの人員を、リア側がピンポイントで辞めさせるのは不可能だ。多分、パートとか関係なく辞めさせて、学長に生徒・卒業生を送り込めって持ちかけたんだと思う。」
「『お金払ってくれたら、おたくの生徒や卒業生の便宜は図るからね。』って感じかしら?」
響が蝶子に向かって頷く。
「二人とも待ってよ。オーケストラって『カーテン審査』ってやるんでしょ?ほら、顔とか経歴とか全部隠して、音だけを審査するやつ。それをやるなら、この話は無理じゃないかなって、僕は思うんだけど。」
「完ちゃん詳しいな。例外はある。『急募』という形にして、カーテン審査をしなかったとしたら?」
「その時の審査員の中にリア側の黒幕がいるのね?」
「まあ、カーテン審査をしたかどうかの確認は必要だけど、そういう事だと思う。」
響が答えるその横で、完太がちょっと真剣な顔をしている。
「完ちゃん、どうした?」
響が尋ねた。
「…ねえねえ、二人とも?そういうお金の流れも、蓮さんが調べている件に繋がっているとか思わない?そこはどう考えてるの?蓮さん疲れ切っちゃって…かわいそうだよ。きっとご飯も食べてない!」
完太が力強く言った。
「そこ?!」「そこなの?!」
響と蝶子が同時に叫んだ。
〜ビビ様と響ちゃん〜
ある日の風呂あがり…
響「完ちゃーん、私のクマさん柄パジャマ知らない?」
完太「ちょっと!濡れたままウロウロしないで!持って歩いてたでしょ?」
響「脱衣所に持ってったはずなんだけど…気のせいか?」
完太「またどこか変なとこに置いてない?ちゃんと見たの?」
この会話を聖域で聞きながらほくそ笑むビビ様だった。
ー続くー




