57話:魔人の絶叫
砂漠の熱気が、カイトから放たれる蒼い魔力によって一瞬で凍りついたような錯覚に陥る。
カイトの背後では、術を終えたばかりのカナデが、肩で息をしながら岩場に腰を下ろしていた。彼女の魔力は底を突き、今は指一本動かすのも億劫なはずだ。だが、その表情に不安の色はない。
「……はぁ、ようやく起きたわね。いい、カイト。今の私のコンディションじゃ、火の粉一つ飛ばせないわ。レナードも見ての通りボロボロ。……つまり、私たちが生き残れるかは、あんた一人にかかってるってわけ」
カナデは不敵に微笑み、カイトの背中を軽く叩いて送り出した。
「行ってきなさい。……今のあんたなら、あんな羽虫、まばたきする間に終わるでしょ?」
「……ああ。お姉さんはそこで高みの見物でもしてなよ。……すぐ終わらせるからさ」
カイトは気だるげに**【青龍刀】**を肩に担ぎ、前進した。その足取りは羽のように軽いが、一歩ごとに砂漠の大地が震えていた。
カイトが出てきて恐れることはなく高笑いしている魔人だが違和感を感じ高笑いが止まる
「ヒャハハ……ハ? ……え、待て。ちょっと待てよ」
漆黒の翼を持つ魔人は、空中で固まっていた。
主である『あの御方』からは、こう聞かされていたのだ。
――「青龍を宿したガキは、力に振り回されるだけの未熟者だ。一振りすれば自分の魔力で自滅する、燃費の悪い欠陥品だ」と。
「……おい。おいおいおい! 全然話が違うじゃねぇか!!」
目の前に立つカイトから放たれる威圧感は、未熟者どころか、すべてを統べる王のそれだ。
「なんだよその落ち着きは! もっとこう、ハァハァ言いながら『力が……制御できない……!』とか苦悩するもんじゃないのかよ! なんでそんな、散歩にでも行くような顔でこっち見てんだよ!」
「……うるせぇな。他人の成長を勝手に決めつけるなよ。……お前の主人は、アップデートって言葉を知らないのか?」
そう言ってカイトは他を埋め尽くす魔物の群れに小指を耳に突っ込みながら気だるそうに向かって行くのであった




