51話: 青龍のインターフェースと、鬼の燃費
遺跡の最深部。そこには、これまでの石造りの内装とは明らかにビルドの次元が違う、巨大な「龍」を模った石扉が鎮座していた。
「……ここだ。ここから、鼓膜がバグるほど『共鳴』してやがる。サーバーの直下にいる気分だぜ」
カイトが扉の前に立つと、彼の体から溢れ出た蒼い稲妻が龍の眼に宿り、認証が完了する。轟音と共に扉がスライドし、その奥、祭壇の中央に「それ」はあった。
「……あれは、薙刀……? 青龍刀っていうから、てっきりあの中華料理屋の親父が持ってるようなデカい包丁(大刀)かと期待したのに。意外とスタイリッシュだな」
そこに鎮座していたのは、刀身が龍の鱗のように波打ち、青く透き通るような輝きを放つ長柄の武器。カイトが吸い寄せられるようにその柄を握る。
――ピキィィィン!!
「ぐっ……あ、あああああ!!」
瞬間、カイトの脳内に数テラバイト級の「武のアーカイブ」が強制ダウンロードされた。数千年前の使い手たちの演武、風の断裂点、雷の収束率。膨大な情報が脳を焼く。
「(……これが……古代のアーティファクト、【青龍刀】……。……俺のバラバラな『風』と『雷』を一本の線に束ね、出力方向を固定するための、超高性能ハードウェア(インターフェース)か……!)」
フラつきながらも、カイトはその薙刀を軽く、本当に軽く一振りしてみた。
――シュンッ!!
音すらしなかった。
だが、遺跡の壁、そしてその先の岩盤を貫き、数キロ先にある巨大な砂丘が、まるでバターでも切るように音もなく真っ二つに両断された。
「……うお、マジかよ。地形が変わったぞ。環境破壊もいいとこ――」
カイトがドヤ顔を決めようとした瞬間、全身の力が一気に抜け、その場に膝をついた。顔面は紙のように真っ白だ。
「……ガハッ!? ちょっと待て……なんだこれ。魔力(MP)が……一振りしただけで、タンクの半分以上持っていかれたぞ!? どんな超弩級の重課金武器だよ! 燃費最悪のクソ仕様じゃねぇか!!」
「カイト! 大丈夫!? 顔が完全に『深夜三時のデバッグ担当者』みたいになってるわよ!」
駆け寄るカナデが叫ぶが、カイトは青龍刀の柄を杖にしてなんとか立ち上がる。
「……いや、マジで笑えない。これ、常時起動で持ってたら一時間で干からびるぞ……。まさに『最強だが使うと死ぬ』っていう、中二病全開の欠陥品だ」
「師匠! しかし、その一撃の威力は本物です! 今のなら、あの魔族の絶対防御さえも物理的にクラッシュさせられるはず!」
レナードが興奮気味に拳を握る。カイトは苦笑しながら、握りしめた青龍刀の冷たく、そして重い感触を確かめた。
「……ああ、分かってるよ。燃費が悪けりゃ、俺の魔力回路を上げればいいだけの話だ。……待ってろよ、母さん。必ず『零界サンドラ』に連れてって、その壊れた精神、この超火力で無理やり再起動してやるからな」
15歳のカイトの手に、最強にして最悪の「金食い虫(武器)」が追加された。
西の果て『零界サンドラ』への旅は、母レンの救済と、魔族を屠るための「地獄の魔力増幅デスマーチ」へと変貌を遂げていく。




