第45話: 瓦礫の中の「バグ」
実家があった場所は、今やただの「ゴミ捨て場」と化していた。
カイトは、煤けて血の跡がこびりついた瓦礫の上に座り込み、虚空を見つめていた。その瞳からは、かつての知性も、怠惰なユーモアも消え失せ、ただドス黒い濁りだけが沈殿している。
そこへ、心配そうに駆け寄ってきたのはギルドの受付嬢、リナだった。
「カイト様……! あの、ギルドで支援物資をまとめました。これ、お母様の薬と……」
「……うぜぇんだよ。消えろ」
カイトは、差し出された包みを無造作に蹴飛ばした。ハチミツの瓶が割れ、甘い香りが泥の中に溶けていく。
「カイト様……?」
「その面、見せんじゃねぇよ。お前らが『SS級だ』『英雄だ』って俺をおだてて外に連れ出したせいで、俺はここにいられなかった。……お前のせいだ。お前が俺の『幸せ』をぶち壊したんだよ!」
「……っ。すみません、私……」
泣き崩れるリナを冷たく一瞥し、カイトは吐き捨てた。そこには、かつての「優しいサボり魔」の面影は微塵もなかった。
「師匠……! お探ししました! 騎士団の全戦力を動員して、あの魔族を――」
さらに、血相を変えたレナードが現れる。だが、カイトは立ち上がり、レナードの胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。
「……何が騎士団だ。何が最強だ。……お前、俺の横で何を見てたんだ? 結局、俺の背中を追ってただけの『お荷物』じゃねぇか」
「師匠……何を……」
「邪魔なんだよ。お前みたいな、光り輝く『成功作』を見てると反吐が出る。……二度と俺の前に現れるな。お前はただの、プログラムのバグだ。消去してやる前に失せろ!」
レナードの絶望した顔を見ても、カイトの心は晴れなかった。ただ、世界中の全てをバグとして処理してしまいたいという、狂おしい衝動だけが渦巻いていた。




