表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼雷の征く果て〜青龍の力が強すぎて、俺の平穏が常に更地になる件〜  作者: セルライト
少年期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/62

第43話: 蹂躙される「聖域」

それは、あまりにも無慈悲な「強制終了」だった。

夕食後の穏やかな残響。ハチミツを染み込ませたパンケーキの甘い香りが、一瞬にして鉄と焦げ茶の匂いへと塗り替えられる。


屋根が、物理的な破壊ではなく「消滅」に近い形で消失し、夜空から漆黒の翼を広げた魔族が降り立った。


「……あァ、見つけた。この辺りに『青龍』の端切れが落ちていると聞いたが……。なんだ、この反吐が出るほど安っぽい幸福コードは」


魔族が指先を軽く振る。それだけで、カイトが愛した実家の半分が、砂のように崩れ去った。


「――カイトォ! 伏せろぉ!!」


父ガモンが吠えた。その拳には、山を穿つほどの魔力が集束し、空間を歪ませている。


「ガハハ! ウチの息子のメシの邪魔をする奴は、地獄の底まで叩き落とすのが家訓なんだよぉ!」


ガモンが地を蹴り、空中の魔族へと肉薄する。渾身の一撃。だが、魔族は嘲笑うかのように、その拳を掌で受け流した。


「……五月蝿いな、下等生物。その無駄な肉塊データ、削除してやろう」


魔族の腕が閃光のように動いた。

カイトの視界が、真っ赤に染まった。


「……え?」


ガモンの巨躯が、空中で文字通り「バラバラ」に弾けた。

抵抗する間も、叫ぶ間もなかった。カイトが「雷速クロック」を起動させるよりも速く、父という名の最強の防壁が、肉片となって食卓に降り注いだ。


「――あなたぁぁぁ!!!」


母レンの悲鳴が上がる。彼女の指先から、数万の「断糸」が魔族を包囲するように放たれた。だが、魔族はそれを避けることすらせず、その「糸」を素手で掴み取った。


「精神の伝達か。……なら、見せてやろう。本当の『絶望』の深度を」


魔族の目が怪しく光る。

レンが放っていた魔力の糸を媒介に、魔族の精神汚染ウイルスが逆流した。


「あ……あ、あ、ああああああああ!!!」


レンが頭を抱えて崩れ落ちる。その瞳から光が消え、底知れない恐怖と絶望の色だけが上書きされていく。精神の深部を直接「切断」され、彼女の心は一瞬で壊れた。


「(……嘘だろ。オヤジが……お袋が……)」


カイトの脳内が、真っ赤なエラーログで埋め尽くされる。

サボりたい。寝ていたい。定時に帰りたい。

そんな甘い理想が、一瞬で粉砕された。


「……てめぇ……よくも……よくも俺の『平穏』を……!!」

カイトの瞳が、かつてないほどに蒼く、そして深く沈んだ。


青龍の力が暴走に近い形で励起する。カイトの体から蒼い稲妻が噴き出し、風が真空の道を作る。

もはや音速どころではない。因果すら超越せんとする「雷の一撃」を、魔族の喉元へ叩き込む。


「死ねよ、クソ野郎……!!」


だが。

魔族は、カイトの拳を「指一本」で受け止めた。

衝撃波で周囲の地面が数百メートルにわたって陥没するが、魔族は微動だにしない。


「……ほう。少しはマシだなだが。……所詮は、予想の域を出ないな」


魔族の拳が、カイトの腹部に沈む。

雷速の防御も、風の膜も、紙屑のように貫通した。 


「ガハッ……!?」


内臓が砕け、骨が粉砕される音が脳内に響く。カイトは地面をバウンドし、瓦礫の山へと叩きつけられた。

視界が霞む。魔力が枯渇していく。

死。

前世で味わった「過労」よりも、もっと冷たく、一方的な「強制終了」が目の前に迫っていた。


「……チェックメイトだ、青龍の小僧。お前のログはここで削除される」


魔族が、とどめの黒い雷を指先に集めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ