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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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ドラゴンの目覚め



 ――それから四日後


 相変わらずうちの島は現在ヒッポグリフの襲撃をうけていた。最近は戦闘ではなく、戦闘員達の疲労回復や大蛇達やフェンリル、ウルフの回復を担当している。


 フェンリル達は結構傷ついていて、治してやると喜んでペロペロしてくれる。フェンリルクイーンはそれほど怪我していないので、経験値の差のようだ。


 ヒッポグリフの襲撃が終わったので、一番ヒッポグリフが狙ってくる森の拠点へ向かう。大蛇クイーンがジーッとフォレストドラゴンを覗き込み、頷く。


《…魔力が増えている。これなら明日辺り目が覚めるだろう》


「おおっ、そうか!よかった!」


 そのままアクアドラゴンの様子を見て、アースドラゴンの様子を見に行って。どちらもやっぱり明日辺り目覚めるそうだ。


 大蛇クイーン曰く、産んだばかりは魔力がほとんどないのだが、目覚める直前には元のように魔力が増えてくるのだという。ただ、やはり個体差はあって、ドラゴンの長達夫婦はもう少しかかりそうだという。


《だが、ドラゴンが一体でも目醒めれば、魔物共は途端に来なくなる。目醒めたドラゴンが他のドラゴンを護るからな。私たちがいなくてもよくなるのだよ。

 まぁとはいえ全員が起きるまで気は抜けないのだが、見ているだけでいいだろう》


「卵はいつ孵化するんだ?孵化するまではいるんだろ?」


《起き上がった個体の卵は翌日には産まれる。卵に魔力を与えるために自分達の魔力を全部使い切ってああなって、ああして一ヶ月温めてたのだから、産まれるのはすぐだ。

 産まれた後は割とすぐ泳げたり、飛べるようになるからな、アクアドラゴンなら全部のペアが孵化したら、みんなでいなくなるよ》


 たしかに、この繁殖期が始まってからもう一ヶ月半近くになろうとしている。それだけ温めてやればすぐ産まれるか。孵化する瞬間を見たいのだが、フォレストドラゴンならなんとか見せてくれるだろうか。


 明日にもこの戦いが終わることをみんなに伝える。みんな喜んでくれていて、ドラゴンが起き上がるのをみたいとか、孵化が見たいと騒いでいる。もちろん、ゆっくり休めることもだ。


 ワイバーンの襲撃の知らせがあったので、拠点に引っ込む。するとサンにヒッポグリフやワイバーン肉を巣穴のチビ蛇達にあげてきて欲しいと言われる。


 実は昔使っていた洞穴から巣穴に道をつくってあった。そして何よりキングが居るからか、巣穴が大きくなって、拠点の真後ろに巣穴があるくらいに近いのだ。


 解体された魔物肉を入れた樽を、えっちらおっちら運び、巣穴に持っていく。巣穴には白い蛇がうじゃうじゃいて、僅かに大きな金色の蛇が数匹混じっている。


 彼らはドラゴン繁殖期の間、この巣穴から出ずに島の周りの霧を維持するのに注力する。あとは、子蛇達を魔物から護るためだそうである。実際霧を維持しているのはキングの方の蛇達らしい。


「ご飯だぞー」


 樽から魔物肉を出してやると、チビ蛇達がワラワラと群がってくる。というか、心配しているみたいで全身蛇まみれになっている。俺が。


 見慣れたアル、ビノ、ミディまでやってきて全身ぐるぐる巻きにされている。ヨシヨシとそれぞれ撫でると嬉しそうにすりすりしてくれる。ちょっと大きくなったかもしれない。


《ウェルナー、怪我したときいタ。心配シタ。無茶するナ》


「あはは、ごめんな。もう大丈夫だから…ってなんか前より流暢に話せる様になったな?」


《魔物、毎日いっぱい、食べたかラ。強く、ナッタ!》


「すごいじゃないか!偉いなぁ!もっといっぱい持ってくるからな!」


 そう言われてみると、ガロウや水虎も魔力のある食べ物で強くなったり大きくなったりする。それはもちろんミディ達もそうだということだ。魔物の大量襲撃も悪いものではなく、次世代を育てるために必要なのかもしれないな。


 撫でてやっていると、金色の蛇の…たぶんミディと同じサイズくらいの奴も、撫でてくれとやってきた。こいつは他の金色のと違って人懐っこい。


《もうすぐ、ドラゴンが巣立つ。その後、母様達、繁殖期》


「おお、そうらしいな」

 

《母様達、人間いるト、集中できナイ…島、一度出て欲しイ……ゴメンね…》


「…そうなのか。謝ることないだろう。もちろんいいぞ、何日くらいかかるんだ?」


 ミディ曰く、一週間から十日はかかるので、二週間くらいは島を離れていて欲しいのだという。出るのはもちろん構わないが、畑や家畜、養殖をどうするかを早急に話し合う必要がある。


 どちらにしろこの繁殖期が終わるまでの手伝いの人もいるし、誰が残って誰が抜けて、どんな報酬が欲しいのかも聞いていなかった。フレッドにも来てもらわなきゃな。


 ワイバーン肉を更に二樽追加して、子蛇達と別れた。


 その夜の戦闘は、大蛇やフェンリルに完全にお任せして、みんなで今後の会議をすることとなった。


「――と、いうわけで、ドラゴンが巣立った後には一度この島を離れる必要がある。そこで、まずこの島に今後も残って暮らしたい人と、そうではない人にわける。

 希望する人はルークに、そうでない人は欲しい報酬と共にサンに伝えてくれ。そうでない人は来年も招集に応じてくれるかも教えて欲しい。

 行き先はなるべく期待に応えるようにするが、エーリッヒ共和国かペリネシア王国、アーデン帝国辺りからの帰還を考えておいて欲しい」


 そこからは、文字が書けるルークとサンに住人・協力者目録づくりを行なってもらう。わけたら住人達の滞在先と家畜やらなんやらの相談だ。そんなに残る人は多くないはずだから、だいたいいつものメンバーになるだろう。


 なんて思っていたのに、なんだかみるみるルークの周りに人が集まってきて、今いる三分のニが住人として集まってきている。ジルベルト達とサンはわかる。ネルに元部下達にソル夫妻、セリア婆さんにエミリー婆さんまでいる。アスラ殿も並ぼうとしているが、部下やスティーブンが必死に止めているではないか。


「こ、こんなに残ってくれるのか?想定外だったな…」


「そう?僕達はこんなもんだと思ってたけど。はい次の人〜」


 さらりとルークがそう言ったのでびっくりする。目録はあっという間に二枚目に突入しているし、住人予定の人たちはすでにどこに住むかなんて話をしているくらいだ。


 一方、残らないのは大体初めから春だけだと決めていた人達で、ピコ、エイム、リリィ、傭兵ギルドの教官達と新人二人、アスラ殿とその部下の方、パトリシアとスティーブンくらいだろうか。


「嫌だ!私はもう退役したんだから、どこに住んでもいいだろう!!この島で楽しく余生を過ごすんだ!」


「アスラ様!落ち着いてください!とりあえず一旦帰らねばなりません!!」


 駄々をこねるアスラ殿と必死に連れ帰ろうと宥める部下とスティーブン達がなんだかかわいそうに思えてきた。アスラ殿は水虎の調教がかなり好きなようで、どうしても離れがたいのだとか。


 報酬はほとんどがお金か、ピコやエイムは魔石や魔物素材を欲しがった。ただ、アスラ殿達はどうやらまったく違う方向の報酬を欲しがっているらしい。


 というのも、その内容は「ペリネシア王国の王族方をこの島に招くこと」というもので、それ以外の報酬は要らないとまで言ったそうである。


「…この島を侵略する気か?そうなら大蛇とフェンリルとアイランドタートル、ドラゴンに頼んで、ペリネシアを滅ぼすことになるが」


「まさか!そんなわけがありません!!あくまでも友好関係です!魔法契約書にその旨記載していただいて構いませんから!!!

 いざという時に、避難できる場所をお求めなのです!ですので!!なにとぞ!何卒友好的に、友好的にお願い致します!!!」


 スティーブンが俺の脅しの言葉に、“友好的”という言葉を乱発している。


「……大蛇と相談して決める。大蛇達がだめだと言ったら、無理だ。蛇達を連れてきたい王族とやらに会わせて、大丈夫かを見極める。すまないが、時間をくれ」


 という形でとりあえずまとまった。この島が大蛇とドラゴンの島だと知っているからか、スティーブンはそれで構わないと言ってくれた。フレッドにも相談して、決めようと思う。


 さて次は住民を二週間どうするか、という話をしようとした時。大蛇クイーンが拠点にやってきた。


《ウェルナー、フォレストドラゴンが起きるぞ!》


 俺たちはワァッと歓声を上げて、フォレストドラゴンの巣に向かう。俺やエルフ達は大蛇に乗って、それ以外の人は弓場や足場、ウルフなどの上からドラゴンを見つめる。


 フォレストドラゴンから薄い緑色の光がパァッと出た。すると、ゆっくりと方向音痴の雄ドラゴンが首をもたげて、クワァと欠伸をした。


《ふわぁ…よく寝た〜!あれっ、皆さん揃ってどうしたんですか?》


 そんなことを言って元気そうなフォレストドラゴンを見たら、ついつい「うおぉ!」と声を上げてしまった。嬉しさが込み上げて、思わず大声で叫ぶ。


「みんな!やったぞ!!ドラゴン達を護りきったぞぉぉぉ!!!」


『ワァァァァッ!!!』


 もうみんな歓声をあげて、抱き合って、泣いて喜ぶ。長い長い戦いが、ようやく終わった。しかも、ドラゴン達に傷を付けることもなくだ。少ない人数、イレギュラーなヒッポグリフ襲来まで、思い返せばすごく大変だったはずだが、そんなものより喜びと達成感がすごい。


 更には、フェンリルクイーンがアースドラゴン、大蛇キングがアクアドラゴンの目醒めを知らせてくれた。仲間たちはそれぞれが海岸や山に向かって、その目醒めを喜んだ。


「大蛇、やったぞ!!頑張ったよな、俺たち!!」


《ああ、頑張ったよ。すごい人間達だ。本当にありがとう、ウェルナー》


 俺は嬉し泣きしながら白大蛇に抱きついて、いつまでもこの喜びを噛み締めるのだった。




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