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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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守護者の勲章



 束の間の休息から、更に二週間ほどが経った。毎日変わらず魔物はやってきているが、なんとか乗り切れている。


 そろそろ夜番が終わり、昼番の時間になる。そんなわけで、俺の組はゾロゾロと集まってきて、携帯食糧や武器を用意して配置につく形になる。


 俺の組のメンバーは、キース達四人、ルーク、リノ、ノーラなど元部下達、エルド夫妻である。いつも通り俺はアースドラゴンの前、クレハ、ルーク、リノが弓隊で、エルド夫妻は海、ノーラ達は森と海岸に分散だ。大体これで固定だ。


 スルスルとキングが上がってきて、《今日はお前か》とか言って山頂あたりに行ってしまう。遅れて、フェンリルクイーンが《おはよう》とか言いながらこちらも山頂に行く。二人で魔物を感知して、飛んできた魔物はフェンリルクイーンが先制攻撃して数を減らすのだ。


「今日は何から来るっすかねー」


「昨日ワイバーンだったから今日はヒッポグリフじゃないか?」


 くだらない予想は、意外にも当たることとなる。カーンと警報音が鳴った。


『北東からヒッポグリフ多数!一体大きい個体がいます!南から、ワイバーン多数!!ほぼ同時に襲来します!!』


「「同時かよ」」


 思わずキースとそう言って、みんなで笑ってしまった。予想があたったが、そうじゃないだろうと言いたくなった。


 まずフェンリルクイーンがヒッポグリフの一番大きな個体を倒しにかかる。もう一匹のフェンリルが他のヒッポグリフも倒している。するとヒッポグリフは大体島に来るよりフェンリルと戦おうとする。引き付けるのにも役に立ってくれているのだ。


 そんなわけで、先に着いたのはお馴染みワイバーンだ。ネルがいつものグラビティボールを作ってくれていて、弓隊が倒しやすくしてくれている。


 もう一体いるフェンリルも次々とワイバーンを切り裂いて、地面に落とす。前より格段に護りやすくなったので、落ち着いて倒せている。


「ヒッポグリフが来たぞ!」


 ヒッポグリフの嫌いなところは地面も走ることで、山を駆け登ってくる個体もいるのだ。最近それ対策に岩を置いてあって、ガンガン落とす。落ちた奴は海行きなので溺れてくれる。ネルも山頂からアースドラゴンを避けて岩を落としてくれるので、助かっている。


 岩が終わると、ネルがアースドラゴンの周りの斜面に氷を張って滑る様にしてくれる。これで上からの攻撃に集中できる。


 ワイバーンは身体より翼が大きいので、ナイフで切り裂くと体勢が崩れるがヒッポグリフは羽根に少し傷がついても向かってくるので、ちゃんと身体を切らなくてはいけないのも嫌なところだ。グラビティボールに囚われたヒッポグリフの心臓あたりを串刺しにして、落とす。


 これには弓手も苦労している様で、なるべく首や胸を狙わないといけないのが大変だという。


 巨大なヒッポグリフを倒したのか、フェンリルクイーンが戻ってきて目の前のヒッポグリフやワイバーンを蹴散らしてくれた。


「ありがとうございまーす!」


 とキース達がフェンリルクイーンに手を振って、礼をいうのはいつものことで、これが落ち着いたサインである。したからエイムが上がって来て、矢や投げナイフを置いてくれるので補充。俺はついでに岩を作って落とせるようにセットしておく。


 次の警報はシーアリゲーターだ。少し上は休憩だな。


「来年は山の中腹にも弓を撃てるところをつくった方がいいか…海岸を狙える位置があればいいな。なんか矢の威力上げるとか、当たったら爆発するとかそういうのないのか?あーあとは踏むと槍が出るとかそういうやつもいいかもな…いや魔法使いを雇った方が早いか?」


「もう来年考えてるんすか?まだ今年すら終わってないのに」


「いや、海側だけの時、こっちが仕事しないのも不公平だと思ってなあ。今だってこうやって見てることしかできないし…」


「今年終わったら考えましょーよー」


 それもそうだな、と答えつつも脳内は来年の計画でいっぱいである。来年は水虎も増やしてシーアリゲーターを倒したいし、フォレストウルフも増やしたいし、人もほしいし、もっと土地も欲しい。そうしたら家とか家畜も増やせるもんな、なんてぶつぶつ呟く。


 その思考を停めたのが、次の警報である。なんだかいつもより激しめで、露骨に嫌な予感がする。


『南西からジャイアントホーク多数!これまでで最大規模です!!……あ、北からも?!北からもジャイアントホークが多数来ます!!』


 ミュリンの驚いたような声が聞こえてきた。


「なんだって?!」


 連絡をしようとする前に、非番だった弓隊とジルベルト達がゾロゾロと上がってきた。弓隊にはエイムやリリィもいて、ジルベルトも隣にやってきたから、かなり助かる。


 南西のジャイアントホークが見えてきた。50体以上いる。北側はどれほどなのだろうか、心配になる。まずはネルの雷撃とウィンドカッターによって間引き、更にフェンリルクイーンが倒しに行く。北側にも雷撃か落ちたようだ。


 ジャイアントホークが一目散に向かってくるのを、弓隊がどんどん打っていく。そしてこちらもナイフを投げまくり、近づいて来たら切る。なりふり構わず、ブリザードミストで弱らせ、倒す。


 どれだけやっても、減るどころか増えている気がする。


「ブリザードミスト!弓隊狙えぇぇ!!」


 広範囲にミストを作り、弓隊やナイフを狙いやすいように何度も何度もブリザードミストを発動する。これをやるとこちらの動きも鈍くなるが、弓隊なら撃ち抜ける。


 目の前にいたジャイアントホークが落ちていった隙に、魔力回復ポーションを一気に煽る。また新しい奴が来たので、剣を抜いて応戦していると。


「キギャーーーッッッ!!!」


 俺の真上から鳴き声がして、ハッと上を見る。ジャイアントホークが、真上から来る。目の前のジャイアントホークを相手にしているからと、上から隙をついて狙っていたのか。


 このままではドラゴンと卵が攻撃を受ける。だが、今離れればそれもまたジャイアントホークが攻撃する。どちらを選んでも、ドラゴンが傷ついてしまう。


 反射的に、身体が勝手に動いていた。目の前にいるジャイアントホークに背を向け、長老夫妻に覆い被さり、ジャイアントホークからの攻撃を防いだ。二度、背中に鋭く強い痛みがある。


「グゥッ…!」


 自己治癒魔法を全力でかけながら、痛みに耐える。もう一度、腰の辺りに痛みが走った。ぽたり、と長老ドラゴンに血がついてしまった。すまない。


「ウェルナー!!」

 

「ウェルナー様ぁぁ!!!」


《人間!!》


 ざしゅっ、と音がしてジルベルトがジャイアントホークを倒したことを悟った。魔力回復ポーションを飲んでいたおかげで、すぐに傷を治すことができた。長老ドラゴンについた血を拭いて。


 キングの声がして首だけ振り向くと、ドラゴンの周りのジャイアントホークが、次々と喰われていった。ジルベルトとキース達が駆け寄ってくる。


「大丈夫だ、ドラゴンも卵も無事だよ」


 長老ドラゴンをポンポンと撫でて立ち上がる。本当に無事でよかった。


《人間、怪我をしたのか!》


 ジャイアントホークを狩りきったのか、キングが顔を背中に寄せて慌てた様子がある。服に血が付いているから派手な傷に見えるが、もう傷はすっかり治っている。


「大丈夫大丈夫。もう治したからって、うおぉ!?」


「さっさと下行け!!」


 ジルベルトに無理矢理昇降機に乗せられ、下に降ろされると、目の前にセイラ婆さんとマリアが立っていた。セイラ婆さんがめちゃくちゃ怒っている。


「馬鹿者がぁ!さっさと来い!!お前はしばらく安静だよ!!!」


「いや、治癒したからだいじょ」


「フンッ!」


 ドスッと腹に拳が当たったかと思うと、俺は意識を失った。

 






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