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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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助っ人



 長い戦いがはじまってから、三日が経った。


 夜にはワイバーン、ジャイアントホークが来ないとはいえ、シーアリゲーターの大群との戦いはやはり熾烈だった。まず、夜だから視界が悪くて倒しにくい。そして、ダークエルフが圧倒的に足りないことだ。


 ダークエルフは夜の漁にも慣れており、この辺りの海の隠れられる岩場や地形にも詳しく問題がないため夜でも戦えるのだが、それ以外の人間やエルフには非常に難しいものがあったのだ。


 せめて明るくなる魔道具を作れないか?とピコとネルに相談して、現在は最高級魔石を使って、昼並みに明るいライトボールが夜の間浮かぶ魔道具を作ってくれた。これで海岸でも夜に防衛できるようになったのだ。


 そして人員配置を三つに分けた。俺組、ジルベルト組、アスラ殿組だ。それぞれに15人くらいずつ配置し、昼をやった次の日は夜、夜をやった次の日は休みのローテーションになった。ネルは昼間頑張って、夜は警報なしにしてあるのでローテーションに含まない。


 あと、サンとジャック家族だけでは、とてもではないが解体が終わらないので、傭兵ギルドの新人二人に手伝ってもらうことにした。というのも、西の入江は強固な結界と隠蔽魔法があり外に出なければ危なくないのだ。煮炊きしたものや物資は魔物が居なくなってからするから安全で。つまり暇なのである。


 フレッシュな新人達はひいひい言いながら頑張ってくれている。だがそれでも足りないので、大体昼間非番の人が手伝っている。来年は解体専門部隊が必要だな。


 すでにワイバーンの皮は山の様に積み上がり、肉は…正直美味しくなかったので、毎日大蛇の巣穴に貢ぐ。チビ達のごはんである。シーアリゲーターの皮もたくさんあり、何より肉は仔虎に大盤振る舞いされている。魔力のある海の生物の肉問題は解決だ。塩漬けにして保管していく。


 ジャイアントホークは肉が美味い。素材も羽根がメインだというので、最近俺たちの食事は大体この肉だ。しかも、解体の過程で結構な数の卵がとれている。蛇たちに見せて、命があるものもあるという。カイロ石を使って孵化を試みているらしい。


 今日は俺の組は非番なので、大体寝ているか解体だ。もちろん俺は解体である。ちょうどワイバーン襲来中なので、ワイバーンが次々に運ばれてきている。


「セイラ婆さん!こいつが脚をやられた!頼んだぜ」


「こりゃ痛そうだねぇ、ちいと待ちな。すぐ治るからね」


 拠点に作った小さなログハウスは、治療所としてセイラ婆さんと病人がいる。と言っても、セイラ婆さんがすぐに治してくれるので、長居する人はいないのだが。


 そんな感じで、なんとか猛攻を乗り切っていける目処が経ってきたというところだ。


 また警報が鳴った。ジャイアントホークが20か…少し大変かもしれないな。いつでも手伝える様にしておこう。


「ワイバーンが片付いたぞ!皆、物資の運搬に行ってくれ!」


 サンがフォレストウルフ達を指示して、食糧や矢をくくりつけたウルフが次々に西の拠点や海岸拠点に消えていく。帰りはワイバーンを拾ってくる。俺も森の拠点に行こう。


 森の拠点は弓隊の傭兵爺さん達と周りをアスラ殿の部下二人が担当の様で、他にウルフ達がいる。傷ついたウルフも多く、物資輸送時にそうしたウルフは交代となる。


 ウルフを治してやり、更に人間達にも治癒というより疲れを取るリラックスという魔法をかけておく。筋肉痛などもなくなるので、動きやすくなるのだ。今頃セイラ婆さんも山の方の拠点の人にかけてやっていることだろう。


 ジャイアントホークが近づいているということで、急いで拠点に戻る。そしてけたたましく、異常な警報が鳴った。


『ひ、東からヒッポグリフ多数!鷲の姿に馬の蹄がある魔物だそうです!』


「ヒッポグリフだと!?そんなの聞いてないぞ!」


「夜番、非番のやつを叩き起こせ!!総力戦になるぞ!」


 すでに大体担当が決まっているので、それぞれが各自の場所に向かう。俺はイレギュラーだが、一番手薄になっている森の拠点にサポートに向かう。


 急いでユーリ婆さんが足場を作って、弓手に回る。エルフのすごいところだ。矢が山ほど配られて、傭兵爺さん達も急いで補充に回る。夜番だったリノも来てくれたらしい。


 ジャイアントホークが五体向かってきていた。絶対にドラゴンに傷一つつけさせないからな!


「動きを鈍くする魔法を使う!配置から動くなよ!」


 ブリザードミストという、氷点下の冷たい霧を広範囲に出す魔法だ。これを食らったジャイアントホーク達は羽根先から冷えて体温も冷えていき動きが鈍る。そこを弓手やウルフが仕留める。


「やるじゃん!」


「ネル程じゃないけどな!まだ来るぞ!」


 更にウインドカッターを放つ。当たらないが、避けるのを予測した弓隊によって次々に倒されていく。目の端にヒッポグリフを捉えた。そちらにもアイスアローをぶち込む。


「ヒッポグリフだ!!」


 ジャイアントホークほど大きさも速さも速くないので狩りやすいが、新たな問題が発生した。ヒッポグリフは体が馬なので、地面を走るのである。空からも地面からも来る。


 急いでネルに連絡し、拡声魔法でヒッポグリフは地面を走るから注意しろと連絡してもらう。森の拠点はウルフがいるので陸地はウルフに任せた。


 だが、ほかの拠点にはウルフを配置していない。ネルも魔法を使ってサポートしているが、とにかく数が多すぎる。弓隊は上、俺たちは下からの敵を必死に倒す。


 そして無情にも、警報がシーアリゲーターの襲来を告げた。


「くそっ、どれだけ来るんだよ!」


「ウェルナーちゃん!魔法お願い!」


 再び、ブリザードミストを展開する。ぼとぼととヒッポグリフが落ちてきた。それに構うことなく、アイスアローで下にいたヒッポグリフも倒していく。この隙に魔力回収ポーションを飲んで、更に広範囲にブリザードミストを展開する。


 その間に弓隊が上を倒す。ヒッポグリフは上だと狙われると気がついたのか、下から押し寄せてくるようになった。下でブリザードミストを使うとこちらの動きが悪くなるから使えない。ならばと。


「ユーリ、リノ!蔦を使って足どめしてくれ!」


 エルフ得意の蔦魔法でヒッポグリフの脚をとり、弓隊の爺さん達が倒す。それでもかなりヒッポグリフは抜けてくる。アスラ殿の部下ととにかく切って切って切りまくっても、湧いてくる。


 おそらくキングもクイーンもこちらのサポートができないほど必死だと思う。


 このままじゃ、どの拠点もまずい。どうしたらいいんだ。ウルフ達も、アスラ殿の部下も怪我をしている。どこの拠点ももうギリギリだ。これ以上は持たない。どうしたら、どうしたらいいんだ。


 リーンリーンリーンといつもとは違う鐘が鳴った。


『フェンリルです!フェンリル三体が、こちらに来ます!』


 まさか、そんなまさか。


『フェンリルの女王が来てくれました!!』


 救世主が現れた。フェンリルの女王は空にいるヒッポグリフ達を次々に駆逐し、フォレストドラゴンの前にきて「ガルルッ!」とヒッポグリフに威嚇をした。怯んだヒッポグリフ達を、フォレストウルフが仕留めたのを皮切りに、ヒッポグリフは巣に近づけなくなった。


 フェンリルクイーンは魔法でフォレストウルフの幻影を大量に作り出し、四方八方に放つ。それはあっという間に森の中のヒッポグリフを蹂躙し、海岸や山まで幻影達が駆け抜けた。


 ヒッポグリフ達はフェンリルクイーンの到来によって、あっという間に片付いた。


「来てくれるなんて、思ってなかったよ」


《遅くなったが…我が仔があまりに心配するものだから、我が仕方なく来てやったのだよ》


「ありがとう!ヒッポグリフが大量で…もうダメだと思ったんだ。本当に嬉しいよ!ありがとう、ありがとう!!!」


 フェンリルクイーンについ抱きついて、感謝を言いながらわあわあと喜ぶ。


 各拠点もフェンリルによって片付いたらしく、またもうすぐ夜を迎えるとあって、かなり落ち着いたようだ。


《フェンリルの女王よ、どうして来たのだ》


《蛇の女王、ジャイアントホークがたらふく喰えるというから来てやったよ》


 白い大蛇クイーンがフェンリルクイーンとそんな挨拶を交わす。仲はいいようで、二人して笑っている。遅れてキングもやってきて。


《…フェンリルか。あいつは元気か》


《蛇の王もいるのか。我が王のことなら元気だとも、うるさいくらいだ》


 海から姐御まで顔を見せ、やだーっ!と声を上げる。


《フェンリルちゃんじゃなーい!元気?!おたくのチビちゃん乗っけてたのよ、ごめんなさいねーっ?!》


 なんて話している。急に穏やかな空気に包まれている。が、それは彼らにお任せして、俺はジャイアントホークとヒッポグリフの回収の手伝いに回る。


 夜番にも少し寝るように伝えて、とにかく体制の立て直しだ。


「回収急げ!怪我をした人は治療所まで運ぶんだ!!」


「弓もなるべく拾え!夜になる前に何とかするぞ!」


「かわいそうに…すぐに治るぞ」


 怪我を治したウルフ達に跨って、急いで拠点に戻る。拠点にはかなりの人が集まってきていて、セイラ婆さんが治療に追われているし、ピコとエイムは弓や武器の修理に忙しい。


 セイラ婆さんは怪我の治療、俺は疲労回復の魔法をかけてまわる。とりあえず亡くなった人がいないので、ホッと胸を撫で下ろす。


 拠点でそんなことをやっていると、フェンリル達、大蛇達がやってきた。


《人間達よ、我はフェンリルの女王。そしてこやつらは群れの若い奴らだ。我が仔の頼みを果たすため、これから事が終わるまで協力しよう。代わりに、ジャイアントホークを食わせて欲しい。我々の大好物なのだ》


《ウェルナー、今日は大変だったろう。私も初めてのことで驚いたが……おそらく、ヒッポグリフが来たのはフォレストドラゴンがいるからだと考えられる。今後はヒッポグリフも来ると思って欲しい》


「そうか…わかった。大丈夫だ、なんとかする!あ、フェンリル達も好きに食っていい。回収が間に合わないから至る所に落ちてるからさ」


 近づいて来た白い大蛇をヨシヨシと撫でてやると、フェンリルクイーンもそっと顔を寄せてきたので撫でてやった。意外と撫でられるのが好きみたいで可愛い。


 蛇のキングはやっぱりちょっと微妙な感じで、ジーッと俺を見ていて怖い。ごめんって。


 ヒッポグリフという新しい魔物が来ることになったが、フェンリル達が来てくれたおかげで、何とかなりそうだ。まだ先は長い。頑張ろう、と改めて決意するのだった。





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