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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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戦闘開始



 最初に到来したのはワイバーンの群れだった。西から来ているというがまだ見えない。目のいいエルフ達は見えてきたのだろうか。背後にある山の拠点がにわかに騒がしくなっている。


「見えた!」


 紫色の粒が近づいてきて、その姿と鳴き声がわかった。キングがシャアッと威嚇する様子を見せたあと、次々に矢が飛んだ。さすがエルフ、シュンと音がしたと思ったらワイバーン一体が首を撃ち抜かれて落下していった。


 ワイバーンは下のアクアドラゴンにも襲い掛かっていて、クイーンが次々に喰い殺している。キングも群がるワイバーンを千切っては投げ千切っては投げていた。


 数々のエルフの矢と大蛇達の活躍によって、大半が巣まで辿り着かないが、それでも数体抜けてきた。


「リリィ、狙え!」


 威嚇しながら飛んでくるワイバーンに、投げるために用意したナイフを投げる。ナイフは羽根に掠り、体勢を崩したワイバーンを真上で弓を打つリリィが撃墜する。


 キースの方に向かってきたワイバーンにもナイフを投げ、首に命中して撃墜した。真上からきた奴には剣を抜いて、串刺しにしてやった。


 それを続ける中、またカーンカーンカーン!と鐘が鳴り、『南からシーアリゲーター多数!北からもジャイアントホーク10体来ます!』と放送が流れる。


 ワイバーンがまだ残っているのに、なんてものは魔物には通用しない。


「ワイバーンの討伐急げ!」


「わかってるわ、よっ!」


 リリィの弓はかなりの確率で敵を撃ち落としてくれる。今も一体やった。上は片付いたのか、キングがアースドラゴンの周りを一掃してくれて、ようやくワイバーンの襲撃は終わった。


 エルフ達は北に向かった様で、北でジャイアントホークを迎え撃つつもりだ。ジャイアントホークはワイバーンと違い、数は多くない。しかしドラゴンより少し小さいが、かなり巨体だ。なので、なるべくなら早く撃ち落としたい。


 下をみると、姐御がシーアリゲーターに体当たりしていた。姐御の上に乗っているラナとカムランが銛を次々に投げてシーアリゲーターを駆逐している。数匹シーアリゲーターが湾内に入るが、エルドとソニアがこれを倒している。それでも抜けた個体は、ジルベルト達が倒す。


 ジャイアントホークが来る前にとウルフ達がワイバーンとシーアリゲーターをサンのところまで運んでいる。多分凄い量なんだろうな。


 こちらにはピコが上がってきて、矢をどっさりと置いていった。投げナイフもたくさん置いていってくれたので補充する。


 北の弓隊から、来た!という声が上がった。キングが数匹に食らいつき、弓兵達がひゅん、ひゅんと矢を射る音がしているが、倒しきれない。ギャーッギャーッと耳をつん裂くような声をだしたジャイアントホーク共がアースドラゴンに突っ込んでくる。


『…ロックシールド…』


 そう拡声魔法が聞こえると、アースドラゴンの巣一帯が土壁に覆われた。突っ込んできたジャイアントホーク達は土壁にぶつかり、体勢を崩した。


『サンダー……』


 そしてジャイアントホークの真上から稲妻が落ちてきて、ジャイアントホークは丸焦げとなって落ちていった。狙ったところに魔法を使え、魔法の展開が早い。素晴らしい魔法の腕だな。


「凄いなネル!ありがとう!」


 きっと今ネルにはたくさんの感謝の通信が入っているだろう。地上の方にも、蔦の魔法を使ってジャイアントホークの脚を掴む魔法を使っていて、動けないジャイアントホークをクイーンが食いちぎった。


 とりあえず、一旦落ち着いたようだ。水や食糧摂取、トイレなんかをして、次が来るまで各所に連絡だ。


「エルド、そっちはどうだ?」


『問題ないぞぉ、シーアリゲーターの死体回収のが大変じゃわい』


「サン、問題ないか?」


『大丈夫さ。解体する魔物は山の様にあるけどね』


「リノ、大丈夫か?」


『大丈夫よ。でも矢がちょっと少ないかなぁ』


 と、諸々を踏まえて連絡し、矢を運んでもらったりして、次の戦いに備える。


 一時間ほどの時間なにもなかったのだが、また警報が鳴った。また次が来たぞ。


『北と東からワイバーン多数!先程よりかなり多いです!』


「…ピコ!矢とナイフの供給急ぎで頼む!…ネル、視認したら魔法でなるべく撃ち落とせ!魔力回復ポーション使っていいぞ!」


 俺も攻撃魔法も多少は使えるので、近づく前に少しでも倒す。それでも抜けるだろうから、そうしたら剣を使えばいい。とはいえ魔力が多くはないので、魔法回復ポーション増し増しでやろう。


 魔力回復ポーションを飲もうとしていると、キースが俺を止めた。


「ウェルナー様、今じゃないでしょ。ネル以外に、ある程度攻撃魔法を扱えるのはウェルナー様しか居ないんですから、ネルが休んでいる時に魔法を使ってください。そのために、拡声魔法も習ったんですから」


「…そうか。そうだな、今はネルに任せよう」


 気がはやっていたようだ。たしかに、ネルとの交代要員は俺しかいない。エルフ達はそれぞれの持ち場で魔法を使っているし、攻撃魔法を使えて、かつ持ち場が日によって変わるのは俺だけだ。


 ネルとミュリンが休みの間は、俺が拡声魔法で指示を出すことになっている。その時には魔法を使ってサポートしよう。


 そんな話をしていればすぐに空が紫色になってやってきている。ワイバーンの群れ二つ分だ。近づいてきた群れに、ネルが稲妻を何発も空から降らせ、ウインドカッターを数回打ち込む。次々に落ちていくワイバーン達と、ネルに負けじとエルフ達も矢を打ち込む。


 ネルは紫色のボールをドラゴンの巣の上に作り出した。なんなんだろう?と思ったが、ワイバーンがこの中に入ると動きがとてもゆっくりになる。そのため矢を打ちやすくしているみたいだ。こちらもナイフを投げやすいし、格段に楽になった。


 あとから聞いたら、ボールの中に入ると上から押さえつける力がかかっていて、グラビティボールというそうだ。絶対習うぞ。


『東からシーアリゲーター多数!かなり身体が大きい個体がいるみたいです!姐御さん、兄貴さん気をつけて!』


 そんな警報を聞いたが、こっちも大量のワイバーンを処理するのが精一杯だ。きっと海側もそうだろう。ナイフを投げ、足で蹴って無理矢理グラビティボールに突っ込んだり、とにかくドラゴンの周りから引き剥がすだけでも一苦労だ。


 時折キングが尻尾を振ってワイバーンを吹き飛ばしてくれる。するとワイバーンは俺たちではなくキングに向かっていくので、たぶん助けてくれているのだと思う。


「ぐあっ…!」


 レベッカが声を上げた。ワイバーンを切り上げて、レベッカの方を見るとワイバーンに腕を噛みつかれている。気がついたリリィがそのワイバーンを撃ち落とす。


「チィッ!キース、レベッカを救護室に!!俺は今治癒できない!」


「りょーかい!皆ぁ後頼みますよぉ!!」


 普通なら持ち場を二人も離れたら大変だが、キースは長い付き合いだからなんとかするとわかっている。だから、後を任せてくれているのだ。


 まあ、使うなと言われたが、緊急事態だから許せよキース。


「サンドストーム!」


 砂嵐を作って辺りのワイバーンを絡め取り、ひとまとまりにしてロックランスを縦横無尽に打ち込む。数十体を一掃し、またサンドストームでまとめて、を繰り返して凌ぐ。


 数分経つとキースが交代要員を連れてきた。なんとか立て直せそうだな。キースが戻ったので魔法をつかうのをやめて、あとはひたすらワイバーンを切って刺してを繰り返す。


 少し減ってきたのか、余裕が出てきた。更にキングがまた尻尾でワイバーンを一掃してくれた。


 チラッと海を見たが、かなりシーアリゲーターが海岸に抜けてきている。姐御と兄貴は巨大な個体を倒そうと頑張っているし、クイーンはフォレストドラゴンを狙うワイバーンの対応に追われているし。ちょっとまずいな。


 水鏡を握り、ネルにそちらのサポートを依頼した。するとすぐに巨大なシーアリゲーターが宙に浮かぶ。動けなくなったシーアリゲーターの首を姐御が食いちぎり、兄貴がすぐさま海岸に戻りシーアリゲーターを蹴散らしていく。


「ネルって何者なんだ…?天才魔法使いじゃないか…」


「超すげー魔法学院首席で卒業して、色んな論文書いてたらしいです!でも人間関係終わってるから仕事出来なくて冒険者になったんですって。まあ冒険者もコミュ力なさすぎて無理なんですよねー」


「もったいないな」

 

 なんて話をしながらも、ワイバーンを倒す作業は終わらない。ワイバーンとの戦いが終わったのは、その約一時間後くらいだった。


 始まったのが朝日が昇ってからだったのに、もう夕暮れで驚く。アースドラゴン達に変わりはない。傷一つもなく、卵も無事だ。これで夜も頑張れる。


 ホッと息をついていると、背後からキングとクイーンがニュッと現れた。


《疲れただろう?だが…私はウェルナーのおかげで、とても楽できているよ》


《…まあ、かなり楽ではあったな……》

 

「そうか。なら嬉しいよ。まだまだ先は長いから、頑張るよ」


 そう言って、クイーンを撫でてやる。キングがちょっと微妙な表情なのはもしかして嫉妬なのだろうか。ごめん。


《少し休むといい。ワイバーンとジャイアントホークは夜には来ない。逆にシーアリゲーターが増える。私たちで海岸は大丈夫だ》


 そういうわけにはいかないが、弓隊やウルフ達が休めるのは事実だ。人員配置を少し考え直せそうだ。そう思いながら、ぎゅっとクイーンを抱きしめるのだった。






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