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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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それぞれの対策2



 続々と新しい仲間が集まってくる中、俺はサンとジルベルトを連れて拠点を回っていた。サンがいるので、まずは家畜ゾーンに行くことにした。なんかまたリトルボア増えたか?


 新しい住人のサンと、飼育していたウルフ達は昔の仲間ロベルト達の元に行ってじゃれあっている。サンの方は早速フェンリルもどきのガロウを見て。


「このフェンリル、これ以上大きくならないかもな」


 と難しい顔で言った。どういうことかと聞くと、フェンリルもウルフも基本的には一年から数年で成体にまで大きくなるのだという。


「何十年も生きているのに、こんなに小さいままなのは…幼少期に母親の魔力の入ったミルクや魔物肉をもらえなかったからじゃないかと思う。フェンリルは基本的に魔力のある魔物を狩っているから…」


「そう、か」


 薄々気がついていた。ウルフと同じく、なるべく魔力のある餌をやっているのに、ほとんど大きくならないし、羽根があるのに飛ぶこともない。アイランドタートルの中にいたとはいえ、こいつはもう成体と変わらない年齢だということにも。


 もっとはやくフェンリルの親に渡してやればよかった。大蛇がフェンリルの居場所に連れて行ってくれたはずだ。そうしたら、もしかしたら大きく育ったかもしれない。


 そんな罪悪感に駆られてしまい、ガロウをダシにフェンリルに手伝ってもらおうという考えは無くなってしまった。むしろ、この島を離れて安全なフェンリルの群れにいた方がいい。


「フェンリルの群れに、コイツのことを連絡したんだ。これからは、フェンリルの群れで暮らしたほうがいいと思ってな…それに、コイツを守って戦う余裕もないし、危険だ」


「それがいいだろう」


 そんなことを話しながら、リトルボアについて説明する。鬼人族にはビッグボアが家畜で、そこから生まれた亜種だと話すとサンは目を輝かせていた。


 ジルベルトたちもビッグボアを知っているので、あれを家畜に?!とびっくりしている。鬼人族ではジャイアントラビットとかもいたと言っておいた。


 みんなが更に驚いたのが温泉だ。この島では入り放題であることを伝え、毎日入るのをすすめた。そしてこれを大蛇がつくってくれたんだ、と大蛇の偉大さを刷り込む。


 畑より、水虎が見たそうなので、オズワルド達に乗って西の海底洞窟へと向かう。道中にサーモンの養殖をしていることも説明した。


 西の入江につくと、中にいるであろうダークエルフ達に声をかけた。


「おーいみんな!紹介するよ。魔物の飼育に詳しいサンと、俺の友達のジルベルト、アイゼン、キルヒ、ハワードだ。住人として島に住むそうだから、よろしく」


 ダークエルフ達はカムラン、ソルの二人がいてよろしく〜とのんびり返している。


「水虎の様子はどうだ?」


「可愛いよ〜、最近は私たちを見ると水面から顔を出して鳴く」


「おおお!見たい!是非見たいよ!!」


 すっかり船着場と養殖場として加工された入江を、ゾロゾロと奥に進み、水虎用の入江兼養殖場に着いた。着くと、水底で寝ていた仔虎達はひゅんと泳いで足元までやってくる。


 いつものように頭を撫でてやると、目を細めて喜ぶ。本当に可愛い。


 サンは奇声を挙げながら、誰?みたいな顔している水虎を撫で回す。餌は何をやっているとか、何匹いるとか、どれくらい大きくなったとか、とにかくカムランに聞きまくっている。


「か、可愛い…小さいな…」


 アイゼン達もこの可愛さにやられたらしい。島の住人の全員がこんな感じなので、よく構うし撫で回すからかこの水虎達は全然人間を怖がらないし、待てとかもできる。やってみせるとサンは更に喜んでいる。


「そうだカムラン。なるべく魔力のある魚か海老をやってくれないか?魔物は魔力がある物を食べさせたほうがいいんだそうだ」


「…うーん、水虎が喰いそうなサイズの魔物の魚…?」


「義兄さん、姐御に聞いてみよう。とりあえず見つかるまでは今のままだね」


 と、そんな感じでダークエルフ達は姐御を呼ぶためのイカ漁に行ってしまった。


「まあこんな感じだよ」


 オイスターとアコヤガイの養殖場も見せたが、サン達の興味は完全に水虎になっていて苦笑するしかない。入江から拠点に戻って、大蛇の所に案内しようと滝に向かっていると。


 ラナが海岸からやってきて、キースの帰還を知らせてくれた。そのままラナにサン達を大蛇に会わせるように伝え、海岸へと急ぐ。


 海岸ではフレッドの航海士がまた着岸していて、キースと一人の女性が海岸に立って話していた。


「キース、お帰り」


「ウェルナー様!紹介します!冒険者の時に何回かパーティを組んだ魔法使いのネルです。コミュ力はその……あれですけど、腕はいいんで!春の間手伝って貰えます!」


「…ェル…です……頑張りましゅ……」


 もしかして最初に自分の名前噛んだか?とはもちろん聞かずに、よろしくと握手を交わす。小さな手だが、その指や腕には魔力を溜めたり扱いやすくする魔道具がたくさんついていた。どんな魔法を使うのか楽しみだ。




 ――更に数日後。


 次に戻って来たのは、エルドの船だった。ルーク、リノの他に2人の白色エルフが乗っているようだ。他にも木箱をいくつか乗せて来ている。


 出迎えると、早速ルークが紹介してくれた。


「ウェルナー、こちらはエイム。それとその奥さんリリィだよ。エイムはユーリの息子で、神聖王国で弓の職人をしていたんだ。リリィは神聖王国の弓兵隊に所属していたんだよ」


「エイムとリリィか。本当にありがとう。戦える人が一人でも欲しかったから、助かるよ!」


「…来たいわけではなかったが、母に逆らったらどうなるかわからなかったからな……」


「…本当にそれよね……」


 エイムとリリィはどうやらユーリ婆さんの言葉に逆らえないらしい。目に見えてげっそりしている。一体どんな教育をしてきたんだと空恐ろしくなった。


 木箱には職人らしいちゃんとした道具と、10本程のしっかりとした弓が入っていた。リリィの肩からは愛用の弓が掛かっていて、いかにも弓が得意そうだ。


 春だけ手伝ってくれるそうで、あちらの店は一時的に閉店してまでやってきたらしい。本当にありがたいよ。


 そんな話をしていると、ユーリ婆さんがやってきた。早速エイムに小言を言っていてちょっと哀れに思うが、素知らぬふりをして拠点に戻った。



 ――十数日後。


 とうとうフレッドが戻ってきた。そこには従業員以外に、ライナス、クレハ、レベッカが一緒だった。これで全員戻ってきたことになる。とりあえず一安心だ。


 ライナス、クレハが連れてきたのは兵士時代に一緒の部隊だった者たちだった。全員が恩赦により平民となって、兵士とか冒険者とか色々な所にいたはずだったが、10人以上も集まるとは。


 レベッカの知り合いは、ドワーフの少女ピコだ。手先が器用で、仕掛けや武器の調整が上手なのだという。ちなみに飲み仲間だそうで、弟子入りしていた鍛冶屋に許可をもらって春の間だけ手伝って来てくれるそうだ。ありがたい。


 そして…この老婆は、もしかしてマリアの知り合いなのだろうか。ものすごく俺を見ている。ちょっと怖いのだが。


「…あんたが、この島の村長なのかい?」


「あ、ああ、ウェルナーだ。よろしく頼む」


「ふぅん。あんた結構な治癒魔法の使い手だね?私はセイラ、治癒魔法使いで医者さ。あんたがいるのに、私がいるのか疑問だけどねぇ、マリアの頼みだから助けてやるよ」


 セイラというかなり高齢の老婆に、なぜか治癒魔法を使えることを当てられ戸惑ってしまう。なぜわかったのか聞いてみる。


「治癒魔法は魔法でも特殊なのさ。私ほどの治癒魔法使いになれば、治癒魔法が使えるかどうか一目でわかるのさ」


 とか言われてびっくりした。魔力のあるなしはわかるが、それがなんの属性かまではわからないものだと思っていたのに。実は相当な実力者に違いない。マリアはとてもすごい人を呼んでくれたのだな。


 強い魔物との戦いだから、きっと怪我をしたり疲れてしまうから治癒魔法を使いまくるつもりだったので、セイラ婆さんがいれば、俺は戦闘に専念できる。かなりいいぞ。


 これで全ての人員は揃った。あとはどうやってこの長い戦いを乗り切るかを考えて、十分準備していこうと決意するのだった。





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