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幻の島に流されたわけだが  作者: たぬー
第一章

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それぞれの対策



 大蛇の元から帰ってきた俺は、すぐさま住人全員を集めて大蛇から聞いたことを話した。とくに、ドラゴンのために強い魔物と戦い続けなくてはいけないこと、海からも空からも来ることを伝えた。


「俺はこの島に残って戦う。戦う者は残って、戦わない者は姐御と共に夏まで避難してもいい…というか、おすすめだ。命の保障は全く出来ない」


 ワイバーンだけで冒険者が手を焼く魔物だ。それが、大量に何匹も来るのだからかなりの危険度だろう。更に恐ろしいのは、いつ終わるかわからないことだ。


 ドラゴンがその身体を動かせるようになるまでに、個体差があって早くとも一か月はかかるという。つまり一か月戦い続けなくてはいけないということだ。


 それでも、やってくれるだろうか。仲間たちをじっと見る。


「何を言ってるのさ。逃げ出すような奴はここにはいないよ」


 ルークがそう言うと、全員が覚悟を決めた様子で頷いている。みんな本当にこの島を、大蛇を愛してくれているんだな。


 全員でやるならと考えていた作戦を話す。


「まず俺とキース達は前線で魔物を倒す。ダークエルフ達はアクアドラゴンの巣の防衛を頼む。エルフ達には、アースドラゴンの防衛を頼みたい。そしてジャック達には拠点で食糧の供給を頼みたい。そしてフレッド、春までにあちこちに行ってもらうことになるだろうが、大丈夫か?」


「お任せください。戦闘にはご協力できないですが、そのための資金、道具、食糧、なんでも集めて参ります」


「よし、いいな。そしてここで一つ、みんなに協力を求めたい。今のままでは圧倒的に人員が足りない。信頼のおける者に春の間だけでもきて欲しいと、誘ってみてくれないか?

 もちろん、魔法契約はしてもらうが、金でも家畜でも用意できるものならなんでも支払うと伝えてくれ。

 心当たりがある者はフレッドに手紙を託すか、一緒に行って連れてきて欲しい。ただし、蛇達が嫌がった人は連れてきても中に入れられないからな」


 という会議を経て、それぞれが対策にのりだした。


 まずダークエルフ達は、エルフの島とは違う島に行ってきたいということで、エルドとソニア夫妻はアルと共に出かけていった。


 ユーリ婆さんは神聖王国のとある人物にエルフの弓を頼むという。ルークとリノに神聖王国まで行ってもらうそうだ。エルドが戻り次第、急いで内陸に行ってもらうことになっている。


 キース達四人もそれぞれ当てがあるようで、フレッドと共に内陸に行ってきたいという。ついでに食糧、超上級ポーション、武具や武器のいいものを買ってくるように伝えた。


 マリアも当てがあるようだが、居場所に自信がないらしい。とりあえずその人の居所を知っていそうな人に手紙を託すという。


 俺も二人だけ心当たりがあるので、フレッドに手紙を託した。そして、一番勝率の悪い…いや、おそらく無理であるが、もしも力になってくれるなら最強のツテがあった。


 ーーガロウである。ガロウはフェンリルだ。そしてフェンリルは空を飛び、魔物を狩るのを得意としている。つまり、ガロウの母親か父親に協力をお願いするのが、成功の鍵となる。


 ガロウから話を聞くために、ミディに通訳してもらうことにした。


「ガロウ、お前はどこに住んでいた?」


《ワカラナイ…ヤマノウエ、ダッタ、キガスル》


「どこから姐御に乗った?」


《トブ、レンシュー、シテタ…ジメン、オチタ、ソコガ、アネゴ》


 思ったより知っている情報が少ないみたいだ。ますます期待出来なさそうだ。


「母親の名前は?特徴は?話し方でも何でもいい」


《…クイーン。フェンリルノ、ムレノ、ジョオウサマ》


「はあっ?!フェンリルのクイーンって…うちの大蛇みたいな存在ってことか?!」


《ソウ。チチ、キング。カッコイイ》


「……いやいやいや、そんなまさか…記憶違いだろう」


 犬っぽくなったとはいえ、相変わらずコロコロしていて、人間が撫でるとすぐに腹を出す愛玩犬にしか見えないガロウ。フェンリルと言われても、ちょっと信じられないくらいなのに。


 ガロウの記憶違いだとは思うのだが、キングとクイーン宛にフェンリルの仔を預かって育てているから、迎えに来てくれないかと言伝れば、親探しくらいはしてくれるかもしれない。


 なので、蛇達にフェンリルの居場所を知っていた海鳥(カモメらしい)に、ガロウの毛一房と言づてを届けてもらうようにお願いした。帰ってきたらたくさん魚をやるからな。




 ――数日後。


 最初に来たのはエルドとソニアが連れてきたブラックエルフの男女だった。


「ワシの息子ソルとその嫁さんのヒナじゃ。ちなみにヒナはラナの妹じゃ。漁でも何でも手伝ってくれるわい」


「助かるよ、よろしく!早速で悪いんだが、エルドはルークとリノを連れて神聖王国に急いでくれ。ソニア達は西の海底洞窟の方へ船と養殖場を移してくれ。念のためサーモンの稚魚も西の方の川にうつしておいて欲しい」


 エルドの息子ソルはエルフの島がいやで、別の小さな小さな無人島で暮らしていたのだという。今回は一応、春だけの協力という形でまとまった。報酬はそのうち決めるそうだ。


 西の海底洞窟は、一つが海への入り口が非常に大きく、中も中型の船なら5隻は十分置いておけるもので、その隣には海への入口は小さいが小船三つはおけるもの、拳一つ入るかな?くらいの入り口がある小さめの洞窟があった。


 今はカムランとラナが水虎達のための養殖スペースを作っている。小さな洞窟を使ってやってみるそうだ。それ以外にも煮炊きや泊まりができるように整備中だ。


 一番この島に来たのを喜んだのはヒナだろう。ラナと再会し、ラナの子カラナを愛おしそうにあやす。幸せそうで何よりだ。


 ソルも水虎の養殖には興味があるようで、餌をやってはにゃーにゃー言っている仔虎を可愛がってくれているようだった。


「カムラン、急ぎでイカをありったけ頼む。あと、小魚とか海老もなるべく集めておいて生かしておいてくれ。サーモンと仔虎用の餌が足りなくなるだろうからな。こっちは春までにやっといてくれればいいよ」


「あ、じゃあ魔道具かりるぞ」


「わかった。ついでにワイン一樽持っていっていいぞ」


 よし!とカムランだけでなくソルまで喜んでいる。


 イカを集める理由はもちろん姐御のためだ。姐御にはこの島を海から守ってもらうつもりだった。海からやってくるシーアリゲーターなんかの魔物を倒せなくても、知らせて貰いたいと思っていた。


 話を聞いた姐御も、もちろん二つ返事でいいよと答えてくれた。


《やだ〜蛇ちゃんも早く教えてくれたらいいのに〜!アタシ達アイランドタートルもクラーケン貰ったり、イカが大量発生したときに教えてくれたりお世話になってるから絶対協力するわよ!あんなワニ蹴散らしちゃうわよ♡》


 と、相変わらず頼もしい姐御である。


 ――更に数日後。


 まさかの次に来たのは俺が頼った人物達だった。


 俺が頼った一人目は、ロベルト達フォレストウルフを育てているという人物、サンという女性だった。狩りができて、統率の取れるウルフ達を全頭買い取りたい、なんなら島にきて欲しいと頼んだのである。


 サンは太陽のように輝く赤茶の長い髪を靡かせて、サングラスをかけていて、なんだか群れのボス感がある。


 そしてなぜか一緒に乗っている無駄にでかい強面の男が、ジルベルトである。俺が従軍していた時に一緒に戦っていた雇われ傭兵で、かなり強かったし、漢気があり頼りになった。こいつなら魔物でも倒してくれるはずだ。


 フレッドの航海士が海岸に着くと、サンと15頭ほどになるフォレストウルフが降りてきた。ジルベルトも、三人の見たことがある男たちを連れている。仲間を連れてきてくれたようだな。


「ほぉ、ここが幻の島ってやつかい?いかにも狼がいそうじゃないかい。っと、初めまして、ウェルナーだね。あたしはサン・ジョハラエル。魔物の研究をしてるんだ。よろしく頼む」


「ああ、会いたかったよサン…様?ロベルトには世話になっているし、ガロウと水虎のことも色々聞きたいと思っていたんです。頼りにしています」


「いーっていーって。アタシはそういうの嫌いなんだ。普通にはなしてくれていいさ」


 よかった、苗字があったから貴族だと思って接したが、気さくな人で助かった。


 そして、ジルベルトは。


「おい!海兵になって死んだって聞いたのにこんなとこに隠れやがって!!ったく、馬鹿野郎が…しょうがねえから助けに来てやったぜ!!」


「お前こそ傭兵ギルドのサブマスターじゃないのか?暇なんだな傭兵ギルドは!あっはっは」


「んだとコラ!てめぇのために辞めてきたんだよ!一生暮らせる金詰みやがって!どうなってんだてめぇの島はヨォ!オレは帰らねえからな!!」


 色々言いながらも、がっしりと抱き合う。俺のためにわざわざギルドを辞めてきたらしい。昔から傭兵を辞めたがっていたし、ちょうどいいと思ってくれたのかな。


 ほかの三人も傭兵を辞めたいと思っていたギルド員で、ジルベルトについていきたいとついてきてしまった人だった。戦場で見かけたこともある気がするし、戦力になるだろう。


「フレッドによろしくな」


 いつものフレッドの従業員の爺さんは、またエーリッヒ共和国の方に戻るらしい。急いで船を出す航海士を見送って。


「それで、どうして二人は一緒なんだ?」


「…あ〜……たまたま、な」


「まあ…酒場でウマがあったのさ」


「…ははーん。なるほどなぁ、一緒の家にしてやろうか?」


 俺がそう言うと、元傭兵の三人がゲラゲラ笑い出した。俺も腹を抱えて笑ってしまった。そう考えると、二人はやっぱりここに来る運命だったんだな。


 なんとも言えない表情の二人と仲間たちを連れて、拠点へと向かうのだった。





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