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新しい住民たち



 新しい住民が来ることに決まって、一番大変だったのはエルフ達だろう。エルフ式の家を急遽3つ作った。男性の家、女性の家、フレッドの家だ。それだけではなく、羊と狼の小屋に、倉庫まで建てた。


 俺は石を組み上げて共用の台所を広げたり、トイレ用のスライムを島中探したり。少しでも食糧を増やすために鹿、イノシシを数匹狩った。


 そして、いよいよフレッドが来そうだと蛇達から連絡があった。急いで馬車にみんなを乗せて、オズワルドとターシャに頑張ってもらい、海岸に到着。ルークは長い目録とペンを持ってきている。積荷が多いので、確認用だ。


 ゆっくりと霧の中からフレッドの船と、中型の船が二隻もやってきたのが見える。一隻は人が乗っていて、もう一隻はたくさんの積荷の様だ。フレッドがブンブン手を振っているのが見えたので、みんなで手を振りかえす。


 ああ少し見ないだけでなんて懐かしいのだろう。キースたちをみても、懐かしすぎてなんだか泣きそうだった。元気なだけでも嬉しいものだな。


「ウェルナー殿!お久しぶりですな」


「ああ久しぶりだなフレッド!無事に帰って来れてよかった!」


 フレッドと抱き合った後、フレッドは積荷をおろすために従業員達に指示を出しはじめた。船についている巨大な異空間収納から馬車が二台も出てきて驚いた。この船、そんなものも入るくらい収納できるんだな。


 積荷の確認や拠点への荷運びは、ルークに任せてあるから大丈夫だろう。


 中型船から降りてきたキース、ライナス、クレハ、レベッカと熱い抱擁を交わす。


「隊長ォォォ!!!生きてたよぉぉぉ!!!」


「お久しぶりです、隊長」


「…ご無事でよかったです」


「私も信じていました。絶対生きてるって」


 キースは本当にうるさいな。昔から声がでかいんだ。ライナスはいつも通り穏やかで安心感がある。クレハも変わらず無口でクールな感じだが、いつもよりは笑顔だな。レベッカは髪を伸ばしているみたいで、兵士と言われなければわからない感じになったな。


「お前たち、フレッドをちゃんと手伝え。積荷はまだまだあるんだからな」


『イエッサー!!!』


 次は移民達だ。構成は、老夫婦と若い男女と14、5歳の青年と8歳くらいの少年だ。移民達は島の様子や蛇達、エルフ達に驚いている様子だった。


「俺がこの島の住民代表のウェルナーだ」


「わ…私はジャック。こちらが妻のマリアで、長男のジャミル、娘のマーナ、次男のジャン、三男のジャコブです。私達を受け入れてくださったこと…感謝致します。本当にありがとうございます」


「気にするな。長旅で疲れただろう、小さいが家も用意してあるから少し休むといい」


 ジャック達は老夫婦に見えたが、意外と若いみたいだ。息子が3人と考えると、兵役逃れだろうな。ジャネア王国がきな臭いというのはどうやら本当らしいな。


 移民達とエルフの婆さん達を荷物と共に馬車に乗せて、ミュリンとエルドが先に拠点に戻った。これをしばらく繰り返すことになるだろう。


 ルークは積荷の数のプラスマイナスを確認して、目録にちまちまと書いてはキースたちに馬車に積み込ませている。そのうちの、飼い葉のロールや餌、日用品は一旦うちの船の中に積み込ませていて、食糧だけを拠点に運ばせている様だ。飼い葉とかは急いで持っていかなくてもいいからな。


 しばらくするとミュリンとエルドが帰って来たので、また積荷を詰めて。ミュリンの方には、家畜を積むことになった。羊10頭と、水牛2頭だ。馬は5頭買ったが、すでに馬車の引き手として活躍している。そして待ち望んだ――。


「おーっ!大きいな!」


「例の訓練されたフォレストウルフ達ですよ。雄雌2頭ずつ買わせていただきました。あ、そうそう、育てた方から育成方法や手紙をいただいておりますよ」


「手紙?何だろうな」


 フォレストウルフは2mくらいの体長で、大型犬の更に大きいものという感じだろうか。灰色や灰茶色の彼らは、ちゃんとお座りしてじっとしている。少し大きい雄が一番強いのだろうか。撫でてやると尻尾を振ってくれた。可愛い。


 前飼い主からの手紙には、彼らをよろしく頼むということと、彼らの名前、首輪の使い方、そしてうちのガロウのことについて書いてあり、話を聞いてよく彼らに言い聞かせたから、きっと猟犬になるだろうと書いてあった。本当にありがたいな。


 そんなわけで、俺の足元でプルプル震えているフェンリルの仔ガロウを狼たちのリーダーであるロベルトの前に差し出した。


「ロベルト、ロビン、ロン、ローラ。こいつを頼む。徹底的に上下関係を教え込み、鳥ではなく狼として厳しく指導してやってくれ」


 狼達はキリッとした表情で、コクンと頷いた。さすが、よく躾けられているようだ。馬車についていけ、と指示するとガロウを咥えてちゃんとついていく。ガロウの「こぅぅぅん!?」という哀れな鳴き声も狼達によってすぐに止んでしまった。すでに教育は始まっているらしい。


「フレッド、ありがとう。もう積荷は大丈夫か?」


「はい。ルークさんと目録の確認も終わりましたから、全て搬入出来ましたね」


「それは良かった。まずはゆっくり休んでくれ」


 エルドの先導する馬車に乗り、ミュリンの馬車、フレッドの馬車にそれぞれ乗り込んで拠点へと急ぐ。途中、フレッドにサーモンの養殖場を説明しつつ、あっという間に拠点についた。拠点からは煙が立ち上っていて、すでに宴の支度が出来ているようだった。


 拠点ではエルフの婆さん達が煮炊きをしていて、移民達はリノと共に拠点の案内を受けているようだった。それからはミュリンが家畜の世話、俺やキース達が倉庫に樽や木箱を運び込む。ルークがちゃんと場所まで指定してくれるから、取り出しやすいだろう。


 ルークが作った倉庫は、仕切りがついていて仕切りごとに品物を入れておけるようになっている。どこに何が何個あるかを紙に描いている。俺よりそういった細々した書類作りが得意だから、本当にありがたい。


 あらかた入れ終わると、ルークとフレッドが目録を渡してくれた。こちらが頼んだ品物、フレッドに任せた品物がそれぞれ書いてある。頼んだ品は全て品数通り、きちんと揃っているという。フレッドに任せた真珠がいくらになったとか、島民が増えるため仕入れた品物についての目録をもらった。


 真珠は白金貨100枚以上となったそうで、かなりの重たい袋をいただいてびっくりしてしまった。あんな簡単に採れる真珠がそんなに価値があるのかと信じられない気持ちだ。


 とりあえず目録を受け取って、まずは食事だ。今日は婆さん達が腕によりをかけて作っていて、鹿の煮込み、イノシシのロースト、ベーコンと卵と野菜のサンドイッチ、イカと干し貝のピザ、じゃがいもとサトイモのフライドポテト、人参のケーキ、洋梨のタルト、そして焼きたてふわふわのパンをたくさん。梅酒一樽。今からよだれが出そうだ。


 フレッドからも、赤ワインと白ワインの差し入れを貰った。迷惑料だとか言っていたが、エルドとルークが嬉しそうだからむしろご褒美だ。


 宴だということで、家畜達にも人参やトウモロコシをサービスして、蛇達とタヌキ、ウルフ達に料理で使った鹿やイノシシの骨や肉と干し肉を与えた。喜んでいるので俺も嬉しい。


「よーし、フレッドへの感謝と、新しい住民たちの歓迎を記念して……カンパーイ!!!」


『カンパーイ!!!』


 予想通り、今日の食事はどれもとても美味しかった。特に、移民達はあまり食べられていなかったのだろう。泣きながら食べている。


 食べながら、フレッドにこれまでの話をする。アイランドタートルに住む爬虫類系獣人の話、鬼人族の島の話、大蛇との冒険譚なんかだ。フレッドも家畜が増えていることに気が付いていて、ベーコンや梅酒について非常に興味を持った様子だった。


 あとは、マジックバッグと金塊と、謎の実と謎の地図についてだ。金塊は売って金貨に変えてくれるそうだ。謎の実は、「カカオ」という実で、粉にしてチョコレートという菓子になるのだという。貴族に人気だそうで、美味しいのだとか。ペリネシア王国でチョコレートとそれに関する本を買って来てくれるそうだ。


 あとは、要らないからマジックバッグをやるという話をすると、フレッドは頭を抱え、盛大なため息をつきながらも受け取ってくれた。


「これを売れば一生遊んで暮らせるというのに…いえ、非常に非常に欲しかったので嬉しいのですが、何というかもう無欲すぎるというか…どうやって恩を返せばいいのか…」


 そんなこといいよ、と適当に流して次は謎の地図について、広げながら聞いてみた。


「この地図がそのマジックバッグに入っていたんだ。色々書き込まれていて…この島とか、この島は俺が持っている地図にはないんだよな…。

 でも兵士がいるみたいだし…なんかペリネシア王国の周りにあるみたいだし、ペリネシア王国の地図か?

 あ、ちなみにここが鬼人族の島だ。食糧は大歓迎らしいから、行ってみたらいいと思うぞ」


「……これは…いやそんなまさか…!ウェルナー殿、これを拾った時のことをもっと詳しく!いつ頃流れ着いた物ですか?!その時の船の一部があるなら見たいです!」


「ん?んー、フレッドが行商に行った夏の終わりくらいかな。あ、そうそう金塊と一緒にこの辺も売ってきてくれよ。その船についてた金属だ」


「き、金獅子!!そんな!!大変だっ!すみません、ウェルナー殿、私は今すぐにこれを持ってペリネシアに戻らなくてはいけなくなりました!説明はまた戻って来た時に!すぐ戻ってきますから!!!」


「えっ?お、おう…?」


 なんだ?と聞く前に、フレッドは航海士と護衛二人を連れて海岸に馬車を急がせていなくなってしまった。


「やっぱりペリネシア軍の機密だったんだなあ」


 と呟きながら、改めて宴を楽しむのだった。


 




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