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突然の連絡



 これまで半袖で過ごせていたのだが、少し寒くなってきた。木々も一部赤や黄色に色づいていた。すっかり秋に入ったみたいだ。


 蛇達も寒くなった影響か、いつもなら地面にいるのに今日は俺やエルフ達にまとわりついている。ちゃっかりカイロがわりに使われている。


「えーと、じゃあ小麦のこの品種とこの品種を5袋ずつ。トウモロコシの白いやつを5袋、さつまいものえーとこの品種の種芋3袋、カボチャ3袋、えーなんか、薬草8種類と…」


「違う違う、小麦はこっちが5袋でこっちが3袋だよ。僕が書いた方が早いかな?」


 字を書き慣れてないから、目録作りは本当に大変である。品種名とか言われてもさっぱりわからない。最終的にルークが書いてくれている。もっと早く頼めばよかった。


「白葡萄の種が5、赤の〇〇種が5、△△種が3、サトウキビ10?ラム酒でも作るの?待って僕白なら◇◇種が好きだからそっちも5買おう。あーたしかに、イチゴは蜂にもいいしね。買っとこう。あと花は…」


 フレッドに頼むのはいいが、こんなに持って帰って来れるのか心配で、冷や汗をかいてしまう。いくら宝石が売れたからって頼みすぎじゃないかと思っている。


 それ以外にも、エルドは漁や養殖用品を。ミュリンは羊と馬と家畜の用品を。ソニア婆さんとユーリ婆さんは調味料と生活用品、衣類を。リノはヨナスのおもちゃや子供用食器を頼んでいる。


 俺が欲しいものを合わせると、かなりの数だ。フレッド本当にごめんな。


「じゃあこれでフレッドに連絡しておくよ」


 なんて話していた時だった。首から下げていた通信用水鏡が震えたのである。なんてタイミングがいいんだ。


 すぐに魔力を流して応答する。


『…もしもし?聞こえておりますかな?』


「フレッド!!ちょうど今連絡しようと思っていたんだ」


 フレッドと話すのは1ヶ月ぶりだ。次はもう少し後だと聞いていたから、驚いた。


『ははは…それはよかったです。実は今ピーレス貿易都市におりましてね、買うものがありましたら今か、遅くとも明日には連絡をいただきたいと思いまして』


「えっ?しばらくボルカノにいるんじゃなかったのか?」


『……実を言いますとね、どうもジャネア王国がきな臭いのですよ。ボルカノはドワーフの鍛治が有名で、武器なんかを作っているのですが、ドワーフ達が酒場でジャネアから大量の注文が入ったとか話していたのです。商人の仲間達も食糧の注文が入ったと…内乱か、戦争か…いずれにしても内陸を離れた方が良いと判断したのですよ』


 ジャネア王国。俺が昔アーデン帝国側で兵士として戦っていた相手だ。ジャネア王国はアーデン帝国の東にある国だが、領地拡大を狙って隣国に攻め入るのである。ようやく引いたから俺は海軍に行ったわけだな。


 西のアーデン帝国、北のフェルモート帝国、東のルードベル皇国の三国は軍事協定を結び、毎日のように小競り合いを仕掛けるジャネア王国の侵略に対抗している状態が、かれこれ百年くらい続いているのだとか。


 となると、内陸は戦争になるかもしれないと商人達は予想して、安全そうな国に移動しているのだという。フレッドの場合はペリネシア王国になるのだろう。


「そうだったのか…こちらも話したいことがたくさんあるんだが、今じゃないな。欲しいものを伝えるよ。たくさんあるから、メモしてくれよ?」


 長ーい目録を、俺――ではなくルークが読んでいく。俺だと時間がかかるからな。信じられない程の量のものを頼むが、フレッドは特に文句も言わずにハイハイと聞いている。


 唯一、猟犬に関してだけはちょっと悩んでいるようだ。


『猟犬…軍用犬…うーん。犬ではなくてもよろしいですか?エーリッヒにフォレストウルフという魔物を育てている方がおりまして、牧羊犬として育てているそうなのですが、元々狼ですので狩りも非常に得意だとか。私も見たことがありますが、仔犬から人間に育てられていますから懐いて従順で、賢いです。少し犬としては大きいのが難点ですが…』


「狼!いいじゃないか!番いで買ってきてくれ!!いや雄一頭雌二頭頼む!!!できればこちらの言葉がわかるやつがいい!」


『は、はぁ…ともかく、仕入れに数日…船まで行って向かって…まぁ大体二週間もすればそちらに着くと思います。では、少々急ぎますのでこれで…』


 という感じでフレッドとの通信を終えた。今から二週間後が楽しみだ。


 二週間の間には、サーモンの種付けが行われた。サーモンの雌から赤い卵を取り出して、雄のをかける。それを別の生簀に入れることで稚魚ができるのだという。腹を裂いた雌は美味しくいただいた。


 雌はもう一匹いるが、もしうまくいかなかったら困るので、腹を割かずに雄と分けておいた。うまくいくことをエルドと共に祈るしかない。


 今日は畑を広げるかなぁと思っていたら、なんとフレッドから連絡があった。もしかしてもう着くのか?!


「どうしたフレッド、もう着くのか?」


『いえまだエリガルドにいるところですが…って、そうではなくて…その、島民?を募集しておられますか?』


「…は?き、急になんだ?」


 フレッドはなぜか非常に聞きにくそうに、困ったようにそう聞いてきた。そもそも俺が住むこの島は、幻の島であり、大蛇が身を隠している大事な島だ。島民募集なんかしているわけがない。


 いや特には募集してない、と伝えるとフレッドではない声が聞こえてきた。この声、どこかで…?


『隊長ッ!!やっぱりしぶとく生きてたんですね?!島だかなんだか知らないですけど、絶対!ずぇぇ〜ったい!!!行きますからね!!』


「…その声…もしかして、キースか?キース副兵長か?」


『そうですよ!!ってももう兵役終わったんでくらいもクソもないですけど…おれ以外に、ライナス、クレハ、レベッカもいるんです』


 これは驚いた。以前一緒の軍で、俺のように元奴隷で国に買われて兵士となり、恩赦として平民になったはずの者達だった。平民にはなったがそのまま部隊は違えど従軍したと聞いていたが。


 フレッドの説明によると、彼らは冒険者になっているそうで、ビーレスからペリネシア王国まで行きたい冒険者を探して、護衛として雇ったのだとか。その際に、探している人がいる、こんな人物で…と説明を聞いているうちに、俺としか思えなかったのだという。


『その…それだけならよろしいのでしょうが、ジャネア王国から逃げてきたという6名の避難民達が、警備兵に捕まりそうになっていたのを助けたとかで……その方々も一緒に連れて行きたいと申しておりまして、あの…どうします?』


 これには俺も悩んでしまった。俺の一存では決められない。エルフや、大蛇とも話しをしなくては決めようがなかった。一応フレッドのところにいる蛇達から話しを聞き、ミディ曰く「大丈夫」だというのだが。


 明日の朝までには決めると伝えて、通信を終えた。


 エルフ達に事情を話すと、「ウェルナーの好きにしろ」という結論になり、大蛇に聞いてみると。


《我が子がいいというなら、心配はないだろう。お主の好きにしろ》


 と、これまた好きにしろと言われてしまった。正直、家畜の世話が増えてミュリンに負担がかかるだろうし、畑を耕す手伝い、養殖の手を広げるなど人手は多い方がいい。だが問題は食糧だろう。急に10人増えたら、絶対食糧が足りない。


 そのあたりはフレッドに無理をいうしかないな、と苦笑しながらも昔の仲間と移民達を受け入れると決めた。


「受け入れることは可能だ。ただし、全員に契約魔法をすることを伝えて、それでもいい者だけ連れてきてくれ。……あとフレッド、悪いのだが干し肉、干しトマト、干し芋、小麦粉、調味料とかとにかく食糧なんかを10…いや20樽くらい買ってくれ。服や日用品、寝具も頼む」


『はいウェルナー様。すでに昨日のうちにある程度手配してありますから、予定通り一週間後にそちらにつけますよ』


「ははは…お見通しだったか。無理を聞いたのだから、サービスしてくれよ?」


『もちろんですとも』


 やれやれ、明日から忙しい一週間になりそうだな。





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