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秋の収穫祭



 鬼人族達との交流を終えて本物の島に戻ってきた。その成果は想定以上で、とても有意義な交易となった。これから来る冬に向けて、食糧や家畜が確保できたのだからありがたいという他ない。


 それと、姐御だ。姐御が協力してくれたからこそ出来たことでもあるので、たっぷりとイカを差し上げた。


 島に住んでいたブルーコーチンという鶏の2ペアについては、そのままこの姐御島に置いておくことにした。姐御島でたくましく生きていけるのだし、万が一絶滅しかけたら困るからと、次回姐御が来た時に交配させたり肉にしたり出来るかもという理由だ。


 蜜蜂については、ルークとユーリ婆さんが女王蜂を養蜂箱に移すことに成功したそうだ。姐御島にあった巣の蜜や巣のかけらを養蜂箱に置いて、女王蜂を見つけて移したとかなんとか言っていたが、よくわからない。とりあえず元あった巣は、蜜と養蜂箱に蜂を集めるために使うのだとか。


 ついでに、実験的に謎の茶色の実の種と余っている洋梨の種をいくつか植えてみた。果たして育つのだろうか?次回の姐御島を見るときの楽しみにしよう。


「なぁ姐御、もし次姐御を呼びたい時はどうすればいいんだ?毎回海底には行けないし…」


《うふふ、また呼んでくれるのね?嬉しいわ♡

 それならこのコをこの島に置いておくわ。まだ小さいけど、アイランドタートルなのよ?このコに頼めばアタシに話が来るわ。もしアタシが来れなくても、他の誰かを呼んできてくれるはずよ〜》


 姐御にそんな話をしていたら、海から海亀がやってきた。海亀より背中が平たい…気もするが、今の段階では海亀にしか見えない。この仔亀をこの島の近くに置いてくれるそうだ。というか飼ってくれていいそうである。


「おお!困ったらまた頼らせてもらうよ。今回は本当にありがとう」


《いいのよぉ〜!たまには海上にいるのも楽しいし。久しぶりに海を一周してくるわぁ♡》


「そうか。たぶんこっちも春になるまでは交易に行かないから、ゆっくり楽しんできたらいい」


 鬼人族には、冬には南の海で過ごすから来るのは春か夏になると伝えてあった。なので、姐御の出番はまだ先になるのである。


 久しぶりに周遊に行くという姐御を見送って。またこの島での生活に戻ることとなった。


 まずは新しい家畜達の小屋作りだ。鶏小屋は隣にもう2つ同じものをつくり、一つはスネイから貰った黒い鶏、もう一つはコーチン達だ。白い鶏も数が増えたので少し広くした。


 ジャー牛は今いるスイギュウより数が多いのもあり、これも改めて牛舎を作った。鬼人族達によると、飼い葉も食べるが、内陸では小麦の殻なんかやトウモロコシを干したものを与えているのだそうで、牧草地を増やすのではなくそちらの作付けを増やすことにした。


 太っ腹な鬼人族はチーズ、バターを作るための方法を教えてくれた。ジャー牛は本当にミルクをよく出すのだそうで、毎日搾る必要があるのだそうだ。女性陣の冬の仕事は決まったな。


 そしてリトルボアについては、鶏と同じくらいの大きさの蔦の柵の中に入れた。餌は雑食だそうで、残飯をあげても十分育つとか言っていて、家畜として優秀すぎる。


 養殖の方は、エルド曰くオイスターは順調だそうで稚貝が増えているそうだ。サーモンの方はそろそろ増やす作業をするそうである。


 というわけで今ある保存食は、干し肉1樽、干し芋1樽、干し茸2樽、干し貝木箱3個、チーズ10樽、ベーコン15樽、梅酒2樽だ。肉類はあるが、穀物や調味料がないのが丸わかりだ。身体を温めるという意味でも酒もある程度欲しい。


「ユーリ婆さん、リノ、収穫量はどの程度になりそうだ?冬までに間に合いそうか?」


「ああ、間に合うわよ。いざとなったらエルフ総出で育成を早めるから大丈夫!収穫量は…小麦は大きな麻袋三つ分といったところかしら?他は樽一個分かそれ以下かしらね。でも来年作付けする分もあるから、食べられる分は少ないかもしれないわ」

 

「こちらは梨だけかな。桃の旬は夏だし、他のは植えたばかりだから…来年ならかなり期待できるけど、さすがにね〜」


「うーむ、フレッドに何を頼むかを改めて考え直すから、みんな明日までに考えておいてくれ。春に撒きたい種とかも含めてよろしく頼むぞ」


 備蓄するのはそれだけではない。俺は毎日ルークが蔦の目印をつけた木を切って、薪を作り続けているが、どう考えても薪が足りなそうだ。家畜の寝藁も冬は増やさなくてはならないし、飼い葉や家畜の餌もたくさん欲しい。


 もしフレッドが買って来れなかったら、ペリネシア王国まで買いにいかなくてはいけないだろう。フレッドからの連絡を待とうと思ったが、早めに頼んでおいて損はないだろう。


 あとは――猟犬か軍用犬を絶対買ってきてもらう。俺の腰に紐で繋げているフェンリルの仔ガロウの教育のためだ。名前だけでも強そうな名前を付けたが、タヌキにすら怯えるような奴である。


 肉しかやらなかったからようやく肉を食べるようになったが嫌々で、俺が片時も離さずにいるから鶏にも会えず……元気を無くしつつある。しかし心を鬼にして犬に変えなくてはいけない。


「お前たちがなんとかしてくれないか?」


 いつものミディ、アル、ビノにそう愚痴ると、ブンブンと顔を横に振った。やっぱり無理だよなあ。


 どうしたものかとため息をついていると、健康的にふっくらしてきたミュリンがオズワルドとターシャを連れてやってきた。


「ウェルナー様、馬たちを走らせに行きませんか?」


「ん、そうか。久しぶりに行くか」


 オズワルドの期待に満ちた顔を見たら、忙しいとはいえない。ミュリンと共に馬たちの望むまま森を走らせる。キャンキャン怯えて泣き喚くガロウの声と、最近よく話すようになってきたミュリンの楽しそうな家畜話を聞きながら、その日は馬が満足するまで付き合ったのであった。



 冬備えの会議を開こうと話していたのだが、エルフ達に先に収穫をしようと言われた。というのも、収穫してどれをどのくらい食糧にして、どれだけ来年の種にするのかを決めるためだという。


 たしかにその通りなので、大蛇に聞いた天気のいい日に収穫祭を行うことにした。スネイからもらった後に植えたライ麦だけは、エルフの魔法で成長促進させて収穫できるようにしたが、あとはこれまで地道に育ててきたものだから楽しみだ。


「よーし、収穫だ!やるぞ!!!」


『オーッ!!』


 俺の担当は人参、じゃがいも、サトイモだ。薄々わかっていたが、たぶん引っこ抜くだけのやつだ。一番形を崩さない…ある意味初心者向けとも言える部門である。


 エルフ達は俺と違い、魔法で手早く収穫していて羨ましい。


 とはいえ、引き抜くたびに大きなじゃがいもが大量に土から出てくるととても嬉しい。じゃがいもも人参も山のように積み上がっているのは達成感がある。そしてサトイモは信じられないくらい大きく、じゃがいもの倍量近くあった。


 全部収穫を終えると、ルークとユーリ婆さんが小さな芋達を拾って集めて、収穫したものを二つに分けていく。


「こっちの小さかったり、形があまりよくないのは種芋にするんだ。あと形が綺麗でも、生命力が強くて増える力があるものもね。こっちは食べることにする」


「人参はどうするんだ?種人参になるのか?」


「あははは!ウェルナーちゃん、あっちを見て。冬野菜用の畑があるでしょう?あそこに植えてある人参の緑色の葉が伸びて、白い花を咲かせて、春に種になるのよぉ」


「そうだったのか。人参の花も種の付け方も、知らなかったよ」


 冬でも育つというカブ、リーフレタスの種を植えてあるだけと思ったが、ちゃんと人参も植えかえていて、来年用にしてくれているようだ。人参は二割を俺たちが、八割を馬たちが食べることになるだろう。


 小麦、ライ麦はすでに選定を終えたそうで、小麦は木箱一つ分を種に。ライ麦は麻袋一袋分全部種だそうだ。数が少ないからこれは仕方がないだろう。


 食用の内訳としては、小麦麻袋2袋、トウモロコシ麻袋3袋、じゃがいも麻袋4袋、人参麻袋1袋、サトイモ麻袋10袋になった。島に自生していた洋梨2樽。冬までに腐ってしまうのではないか?と心配になったのだが。


「この状態で成長を止める魔法をかけておくから、腐らないし、みずみずしいまま保管できるから大丈夫だよ」


 植物だけしか使えないけどね、なんてルークが笑っている。さすがエルフである。そんな魔法があるなんて知らなかった。


 胡椒、唐辛子、ジンジャー、ガーリックなど調味料になるものは全部来年増やすそうだ。これは来年の収穫が楽しみだ。


「まあまあだねぇ、ルークや。時期が悪かったわりにはよかったかしら」


「そうだね。でも小麦がちょっと少ないかなぁ?」


 二人はあの種が欲しいとか、別の品種とか気温がどうとか話している。明日までに欲しい種や品種を決めているらしい。そんな二人にあとを任せ、俺も改めて必要なものを書き留めた目録に思いつく限りの欲しいものを書いていくのだった。



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