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養殖と養蜂



 動く島が来てから、しばらく経った。島はすっかりいつもの通りで、穏やかな日々だった。


 新しく来た黒い鶏達もちゃんと卵を産んでくれて、これまでにヒヨコが5羽生まれた。もっともっと増えることだろう。


 ライ麦とオレンジ、レモンも植えてあり、これも今後に期待だ。リノが面倒を見ているから任せている。あとは、畑がひと段落ついたので、ルークとユーリ婆さんは養蜂箱の作製と花畑を作るのに夢中になっている。


 養蜂箱はすでに10個も作っており、牧草地の隣に10個、果樹園の周りに10個も作るのだという。ルークがいうには、蜂蜜はエルフ達の唯一の交易品だったのだという。たまーに来た商人が欲しがるのが蜂蜜だったから、という理由らしい。


 もちろん蜂蜜だけではなく、蜜蝋は蝋燭になるし、蜂蜜酒にしてもいいし、花の受粉を助けるので果樹園や畑には欠かせないのだとか。


 なんにせよ、ルーク達に任せておく。


 次は養殖ゾーンだ。サーモンの養殖は陸地でもできるのだそうで、滝がある川の近くにかなり大きな生簀を作り、その中に川の水を入れてそこにサーモンを入れるのだという。


 水温を一定に維持する魔道具と、空気を取り込む魔道具を入れておけば育つのだとか…詳しくはエルドに任せているが、今のところ元気に過ごしているみたいだ。更にもう一つ小さめの生簀を作っていて、稚魚を育てるのだとかなんだとか。まぁ頼んだぞ。


 オイスターの養殖も始めてくれたそうで、そちらは海に放置している状態らしい。稚貝がくっついて増えるまでまだまだかかるのだそうだ。アコヤガイはまだ調査中だそうで、その過程でまぁまぁ真珠が溜まっているそうだ。


 特にすることもないし、大蛇の所に遊びに行くか。


「よぉ、元気か?」


《特に変わらないよ。お主こそ働きすぎではないのか?》


「いや…やることないから、大蛇と話に来たんだよ」


 うちの白い大蛇クイーンはあんなことがあったが、次の日も全然変わらなかった。そんなものなのだろうか?


「なぁ、一回に何個くらい産むんだ?見た感じたくさんあったが…」


《…大体300くらいだが…この間は時期が悪くてな…80程しか産んでやれなかった。もう少し遅く来てくれればよかったのだよ》


 大蛇の話では、大蛇にも繁殖期というのがあり、それに合わせて卵を作るのだという。具体的には春頃にいつもの雄が来て、交わるのだという。今回は夏の終わりにやってきたイレギュラーなのだそうだ。春に向けて体内に作っていた卵をなんとか使ったらしい。それでも産めるのがすごい。


《私のところにやってくる勇敢な雄はそう多くない。多様な血が入るのも悪くないからな…協力してやったのだよ》


「ふーん。じゃあ決まった相手がいるわけじゃないんだな。チビ達の父親はみんな違うわけか」


《…いや、こやつらの父は一緒だ。私より格上だから、子が優秀になるしそばに置いている。まあ春になればいやでもわかるだろうよ》


 勇敢な雄は多くない、というが大蛇はいつもの雄と言っていた。格上だというし、たぶん毎年同じ雄が来て、他の雄を蹴散らしているんだろう。どんな蛇なのだろうとちょっと楽しみなのは内緒だ。


 それから養殖や養蜂の話なんかをして、帰ることにした。


《そろそろ秋だ。冬は雪こそ降らないがそこそこ寒い。食糧や衣類の備蓄をしておくんだよ。…ああそうだ、明日からしばらく嵐だよ》


「ちょ…!もっと早く言ってくれ!!」


 それから俺は急いで生簀に結界魔法を三重にかけて、森の拠点に戻ってエルフ達に明日から嵐が来ることを伝えて回った。


 拠点を覆うように結界の魔法陣を描き、果樹園も覆うように魔法陣を作った。地道に結界魔法の本を読んで練習したおかげで、バリアを広い範囲にかけられるようになったのだ。


 おそらくだが、これなら結界内だから洞穴から出て家畜の世話ができるはずだ。


 家畜達に餌と水をたっぷり与えて、エルフ達には干し肉、干貝、サトイモ、水を入れた樽を渡した。今日の夜にはパンをたくさん焼いておいてもらったので、二、三日は保つだろう。


 タヌキ達にも干し肉と干し茸をたくさん与え、水も洞穴に入れておいた。ウサギ肉も新しいのを与えたから大丈夫だろう。


 必死の準備のおかげか、翌日嵐になったもののちゃんと結界が機能していた。だからかエルフ達は食事場に集まっていて、特に困ってなさそうだった。良かった。


「そういえば、フレッドが行って2ヶ月くらいか。久しぶりに連絡してみるかな」


 嵐の間は暇なので、大体新しい魔法の勉強になるのだが、せっかくならばと通信用水鏡に魔力を流してみた。突然だったからだろう、その時は出てくれなかった。


 夜になって、通信用水鏡が震えた。フレッドだ。


「フレッド!久しぶりだな。今はどの辺りにいるんだ?」


『おおウェルナー殿!夜になってしまい申し訳ありません。今私たちは、フェルモート皇国におります。内陸の丁度真ん中くらいですかね』


「ほー。船はどうしたんだ?」


 フレッド曰く、エーリッヒ共和国から大河を行き、その大河一番の都市エリガルドの街に預けているのだという。エリガルドはそうした貸し船、預かり船をしてくれるので、大体の商人が利用しているのだという。


 エーリッヒ共和国から西に向かい、ピーレス貿易都市を通って、フェルモート皇国に至っているらしい。

 

『真珠の売り上げは非常に順調ですよ。少しずつ少しずつ売っているのでまだ正確ではないですが、予想より高値で売れているのでご安心ください』


「そうか。それはよかった!」


 それから、フレッドが居なくなってからの話しをした。開拓を進めていること、真珠の養殖を始めるつもりのこと、動く島のこと、サーモン養殖のことなど、色々だ。


 フレッドはやっぱり動く島が気になったらしく、蛇獣人についても興味津々で興奮しているみたいだった。さすが蛇好きである。


「こっちに来るまで、どのくらいかかりそうなんだ?できれば冬の直前に一回きて欲しいと思っていてなぁ」


『ああ、それなら心配いりませんよ。私も冬は海を渡って行商に行くのは大変ですから、秋の中頃にはペリネシアに帰るつもりです。あと3ヶ月後くらいですかねぇ』


「よかった!そうだ、今のうちに仕入れて欲しいものを伝えておく」


 出発時に頼んだポーションなんかは既に手に入れてくれているそうなので、それ以外に欲しいものを頼む。馬三頭、布木箱3つ、暖かい衣類や布を木箱2つ、干し肉10樽、干し芋5樽、干しトマト2樽、塩砂糖胡椒を2樽ずつ…他にも魔道具や本やら水鏡まであれこれ頼んでしまった。


『確かに承りました。…おそらく次に行くボルカノのドワーフ王国に行ったら帰る形になると思いますので、またボルカノに着いたら連絡しますよ』


「ああ、頼むよ。気をつけてな」


 そんな感じで、フレッドとの久しぶりの会話を終えた。フレッドとの会話を終えてから、先にエルフ達に欲しいものを聞けばよかったとおもったりして。まあ今度はそうしよう。


 嵐の中、いつもとそう変わらぬ生活を送って五日後、ようやく嵐は去った。これに喜んだのはエルドとミュリンだろう。エルドは生簀と海に行きたいそうで、ミュリンも馬達を走らせたいのだという。


 仕方ないので、オズワルドにミュリンと俺が乗って嵐の後の見回りに行くことにした。オズワルドは俺以外を乗せないが、俺と誰かはいいらしい。難しい奴だ。


 ターシャにエルドが、オズワルドに俺とミュリンが乗って、海岸まで思いっきり走らせてやる。エルドは途中生簀で止まったが、オズワルドは止まらず全速力だ。ミュリンもすっかり乗馬に慣れたので、気持ちよさそうにしている。


「あー…結構色々打ち上げられてるなぁ」


「そうですね…」


「なんか煌びやかな部品が多いな?貴族の船でも流れ着いたか?」


 いつもなら白い砂浜の海岸に、大量の板材や金色の部品、赤い布なんかがたくさん打ち上げられていた。どう見ても人はいないな。


 いつも誰かしらくっついてきているチビ達に辺りを探らせて、人がいないかをちゃんと確認した。


「ミュリン、オズワルドを引いて拠点に戻って馬車を持ってきてくれ。途中ターシャに乗って行っていいぞ。あ、エルドにはこっちに来るように伝えておいてくれ」


 オズワルドを戻らせ、俺は木材を一つに集め始めた。こうした板材は乾かして川を渡るための橋板にしようと思っている。余ればもちろん薪にもなるので、有効活用させてもらう。あとは麻袋に、空樽、サーベルに槍。使えそうなものが多いな。


 布袋を拾って、中を見てみる。空っぽだが、中身が黒い。なんだこれ?とそろっと手を入れてみる。あれ、なんかたくさんはいってそうだぞ?中にはドバドバと金貨が出てきて、紙束が大量、地図、羽根ペン、インク、新鮮な林檎、チーズ、サラミ、綺麗な水筒まで出てきた。


「もしかして、マジックバッグ?!」


 マジックバッグは空間魔法がかかった袋もしくは鞄で、とんでもなく高い。小容量でも白金貨500枚以上だそうだから…これは途轍もないお宝である。


 これについてはあとでみんなで相談しようと、中にあったものをまた戻した。


 エルドとミディ達大きめ蛇達がやってきた。


「エルド、見ろ。部品的にたぶん貴族の船だぞ……というわけで、海に入ってお宝探しを頼みたい」


「ほっほっほ!そりゃあ楽しみじゃのぉ!!ワシに任せておけ!!」


《ガンバル!ミツケル!!》


 海底探索をエルド達に任せて、俺は引き続き板を集めて、金の部品がついているものと分けていく。あとは見たことがない果物?がいくつも流れ着いている。茶色くて、大きいナッツみたいな?でもなんだかよい香りがする。これも集めておこう。


 ガラガラと馬車の音がして、ミュリンとルークが馬車に乗ってやってきた。三人で打ち上げられたものを積み込み、その間にも蛇達が気になるものを海から持ってきてくれるので、それも積み込む。


 ナッツみたいな果実は割ってみると中にさらに沢山の種が入っていた。ルーク達にもわからないのだそうで、とっておいてフレッドがきた時に聞いてみることにした。


 砂浜に何も無くなるまで積めたら、エルドを待つ。蛇達に呼んでくるように頼んだから、すぐ戻ってくるだろう。


 戻ってきたエルドの腕には、小さめの木箱が。それをもつエルドのニヤついた顔を見ると、かなりいいものが入っているようだ。


「ほれ見よ!金塊じゃ!!」


 木箱の中は綺麗に並べられた金の延べ棒が整然と並べられていた。俺たちはわあわあ喜び、日が暮れる前に拠点に戻った。






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