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動く島



 いよいよトウモロコシを収穫する時が来た。この島に来て初めて植えて育てたトウモロコシが、ついに実を付けたのである。


「よかったねぇ、ウェルナーちゃん。ちゃんと美味しく出来て!楽しみにしてたんでしょ?」


「まあな。でも食べるつもりじゃなかったんだが…半分食べて、あとはみんなの分にするよ」


 このトウモロコシは育ったら食べずに畑に蒔いてたくさんトウモロコシにするつもりで、頑張ってきたのだ。おかげで三本も成り、二本を種にすることができそうだった。


 茹でたトウモロコシは正直それほど甘くはなかった。けれど、そのシャキシャキした歯応えがとてつもなく美味しかったのだ。エルフ達には笑われてしまったが、本当に感慨深いというか美味しいのである。


 なんだかんだ半分あげた方を、エルフ達は美味しいと食べてくれた。またこのトウモロコシの粒達が大きくなって収穫できる日が待ち遠しい。来年も頑張って育てていこうと誓った。


 野菜畑では、トウモロコシ、人参、じゃがいも、ケール、サトイモが植えてあり、最近トマトも二畝分植えたとか言っていた。もうユーリ婆さんに任せた方が早いしよく育つ。


 小麦畑もふさふさなっているし、同じサイズの畑をもう一つ作り胡椒、サトウキビ、バジル、ニンニク、ジンジャー、唐辛子を植えた調味料畑がある。来年はさつまいもと大豆畑を作るつもりとかなんとか。


 果樹園はエルフの力を使って洋梨と桃の木を集めて並べてある。その倍以上の赤と白の葡萄、オリーブを植えている。葡萄は葡萄酒用で、オリーブは油用だ。


 建物はエルフ式住宅が三つ、ログハウスが二つ。ログハウスの片方は俺の家で、もう一つは倉庫だ。今まで洞穴に入れてきたが、こちらの方が出しやすい。


 それと、トイレが二つ。男用と女用だ。スライムが二匹いてよかった。


 こんな感じでそれぞれが暮らせる場所が出来たのであとは畑をみんなでやるのみとなっていた。エルドはアコヤガイの研究だな。


《ウェルナー、ウミ、イク!ナカマ、クル!》


「え?海?仲間?……フレッド…か?いや行商行ったばっかりだしな…」


《イソグ!ハヤク!》


「わ、わかったって…」


 いきなり蛇達が海岸海岸と騒ぎ出した。拠点にいるエルフ達に事情を説明して、オズワルドに馬車を繋いでエルフ達を乗せて海岸に急ぐ。滝を通り過ぎる時には、滝からワラワラ蛇達が出てきて異常事態を感じた。


 蛇達と共に海岸に着くと蛇達が海岸や海にたくさん居て本当にびっくりする。


 海から何が来るのか待っていると…それは大きな島に見えた。森があって椰子の木があって、それがどう見てもこっちに向かっている。


「島が動いてる…」


「アイランドタートルじゃのぉ。ワシも見るのは子供の時以来じゃが」


 漁から上がっていたエルドがそう言った。


 アイランドタートルとは、超巨大な亀の魔物だそうだ。その巨大な背は平たく、長く生きるうちに森になりまるで島のように見えるのだという。動く島という感じらしい。世界中の海を巡っているらしいが、そもそも何匹いるのかもわからないという。


 そんな動く島は霧を抜けてヌゥッと入ってきて海岸を埋め尽くした。よく見ると、家のような建物があるようだ。


 これはどうしたらいいんだ?ととりあえず見ていると、亀の島から黒と茶色の大蛇が森から現れた。その頭には人…?が乗っている。


「うわぁ!人いる!!何なに?なんなんスか?誰なんスか?!」


 黒大蛇と共に浜に降りてきた男…見た目は人間だが目は蛇の目で、蛇の尻尾が生えている。獣人は何人も見たことがあるが、初めてみる獣人だと思った。たぶん蛇獣人なのだろう。


 白浜に降り立った蛇獣人は白蛇たちに揉みくちゃにされて、うんうん頷いている。


「驚かせてすまない。俺はウェルナーで、こっちは住人のエルフ族達だ。大蛇からこの島に住むことを許されたんだ」


「ウェルナーさんッスか。オレ、蛇人族のスネイっス!詳しいことは蛇達から聞いたんで、大丈夫っス!あ、こっちのはボスっス!うちのバジリスクっス!」


「よろしく」


 握手を交わすと、小島の森からぴょこぴょこと似たような感じの獣人達が様子をみに現れた。スネイは大丈夫!と手招きしてみせると小島から獣人達が大蛇を伝ってやってきた。


「紹介するッス、蛇人族の仲間たちと、こっちが亀人族、こっちが蜥蜴人族ッス。見た目一緒なんスけど、尻尾と目が違うんで見分けられるッス!」


 わかった、と言ったがちょっと自信がない。スネイだけは絶対覚えておかないと。


 エルフ達は海岸拠点でもてなす準備を始め、爬虫類系獣人達も島からあれこれと持ってくる。エルフの女性陣と爬虫類系獣人の女性陣はあっという間に仲良くなったようでワイワイと食事の支度をし始めた。


 白蛇たちは小島に乗ったりボスに乗ったりと楽しんでいるし、亀人族はアイランドタートルに海からとってきたイカを口に放り込んでいる。


 どうしたらいいのかわからず、大蛇に声をかけてみた。


「あーこっちも大蛇を呼んできた方がいいか?」


《いらん。こちらから行く》


 大蛇のボスはやはり話せるようだ。そして断られた。


「大丈夫ッスよ、ウェルナーさん。蛇にも序列があって、うちのボスとそちらのクイーン様はボスのが序列が下ッス。だからこっちから会いに行くものなんス。蛇獣人もそうなんスけど、卵を産んでくれるメスのが強いんスよね〜」


「そうなのか…」


 宴の準備が出来たので、海岸で宴会が始まった。基本的にはライ麦パンやレタス、チーズといった普通の食事だったが、亀人族はイカや魚、蛇人族、蜥蜴人族は肉と昆虫をムシャムシャ食べていてびっくりする。


 鶏肉と昆虫は白蛇たちにも振る舞われており、樽に大量の白蛇が群がっている光景は中々珍しい。というか狂気を感じる。


 ある程度腹が満たされたので、スネイにどうして亀に乗ってきたのか、爬虫類系獣人が一緒に暮らしているのか、この島に何しに来たのかなどを聞いてみた。


「んーと、まずオレたちは国を持たないっす。オレたち爬虫類の血が入った獣人は、寒いところが超苦手なんス。だからずーっとあったかい場所を探して暮らしてきたわけなんす。けど、陸地で移動するのは大変で……。

 そこで、海に住む亀人族にお願いしてこのアイランドタートルに住まわせて貰っているわけっス。ここなら暖かい場所に勝手に移動して貰えるッス。そしたら蜥蜴の方もそうしたいってなって…今に至るッス」


 こうしたアイランドタートルにいる爬虫類系獣人は他にも6つくらいあるらしく、寒い季節は暖かい南の海で合流して情報交換をするのだとか。アイランドタートルってそんなにいるんだな。


「この島に来たのは、ボスの繁殖のためッス。他の集落にも雌の大蛇はいるんスけどねー強い血を入れたいわけッス。

 だからしばらくはこの島に滞在させてもらうッス!卵を貰えたら、帰るんで!」


「なるほどなぁ…ってことは、亀にも蜥蜴にも飼っている魔物がいて、繁殖先があって、行ったりするわけか?」


「そうっス!こういう隠された島とか場所はいくつかあって、それを周りながら増やしていってるッス。あ、実はオレたちは最近作られた集落で、ボスも元は別の集落のナンバー2だったんス。だから、早く子を作って次世代を作らなくてはいけないんス!!」


 最近出来た集落だからか、若い獣人が多いのだという。蛇がボス以外に居ないのも納得だ。


 夜になってみんなで海岸で寝ていると、大蛇ボスがゆっくりと森に消えていった。うちの大蛇の所に行ったのだろう、と思いながら寝た。


 翌日にもボスはおらず、薄々察した。なんとなくだが、森の中には入らない方が良さそうな気がした。


「ミディ、向こうの拠点で畑に水をやってきてくれ。ついでにタヌキたちも連れて帰って来てくれ。キノコを取ってきて欲しい」


《ワカッタ。ウェルナー、カシコイ。イマ、モリ、ハイラナイ、ホウガイイ》


「なんとなく、な。頼んだぞ。アル、ビノ!森でハトかウサギを狩ってきてくれ!エルド、ソニア、漁を頼めるか?ユーリ、リノ、ミュリンは朝食の支度を頼む。ルークはヨナスを頼む」

 

 エルフ達に森に近づかないように伝えると、作業を指示した。昨日のスネイの話だと、体温が温かくなるまであまり動けないらしいので、朝ご飯はこちらが担当すると伝えてあった。

 

 俺はフレッドからもらった船に入って、こちらの拠点用に少しだけ用意してあった小麦や調味料、干し肉をおろした。しばらくは森に入れそうにないからな。


 しかし、楽しいこともあった。アイランドタートルの上に乗せてもらえたのだ。小さなテントがたくさんあるが、そのテントの中は空間魔法がかかっていて、実際はとても広いのだそうだ。いいなこのテント。フレッドに頼んでみよう。


 色々なものを育てていて、虫とネズミ、鶏なんかも空間魔法のテントでたくさん飼育しているそうだ。黒い鶏がいたので、番いで譲ってもらった。他にも、オレンジとレモンを洋梨と桃と交換。ライ麦の種と小麦の種を交換した。


 一番興奮したのは養殖しているというサーモンだ。とろけるような脂の乗ったオレンジ色の魚で、本当に美味しかったので養殖の仕方を聞いて、十匹を譲ってもらった。鶏とサーモンの対価として干し肉を一樽と、蜂蜜酒を渡した。あとは生きたウサギ数匹を捕まえて渡した。増やせるといいのだが。


 爬虫類系獣人達は対価に満足してくれて、良い取引だと嬉しそうだった。こうした陸地との交流はほとんどないそうで、新しいものもなかなか手に入らないのだとか。今後も定期的に来たいというので、了承しておいた。


 そうそう、翌日には大蛇ボスが戻ってきた。色々終わったらしい。すると蛇獣人達は白い大蛇クイーンの元に行き、籠にたくさん卵を持ってテントに戻っていく。卵はざっと百個はあるだろうか、かなりたくさんある。


「ウェルナーさん、色々ありがとうッス!ちゃんとお別れしたいんスけど、卵を温める重要な仕事があるんス…今度はなんもない時に来るッスから!」


《…世話になった。女王を頼んだぞ》


「そうか…元気でな!次来た時には森の中も案内させてくれよ。ボスもうちの卵を頼んだぞ」


 卵を受け取ったスネイ達は、暖かい南の海へと去っていったのだった。


 







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