本部
真に大切なのは、飛び込む勇気である。
「鈴木君、起きてください。」
う〜ん、まだ眠い…。
「鈴木君?」
「はいっ!?」
目が覚めた。もちろんここは家ではない。
起き上がると、さっきの駐車場の脇にいた。移動させてくれたのかもしれない。
さて、目の前にはもちろん、池田が立っていた。
「大丈夫でしたか?駐車場のど真ん中で眠っていましたが。」
「…はい、特に問題はないです。」
寝起きなのでよく見えない。目を擦ってみた。
「気絶して頭を打ったりは?」
「おそらくしてないと思います。」
頭も平常運転に戻ってきた。
「わかりました。まぁ、後に本部で診てもらいましょうか。」
「わかりました。」
そもそも、何で寝てたんだっけ?
…まあいいか。
そんな感じで、ともかく停めてある車の方へ向かうことになった。
鈴木は池田がいつも使っている車と、少し違うことに気づいた。
「本部からの支給品です。」
乗り込んでも、何か特徴があったわけではない。
その後は何事もなく、山道を越え、トンネルをくぐって、遂に変な建物についた。
あれ、ここ、仙台じゃなかろうけ?
都会感がまーったくない。まぁ、いいか。
東京も郊外はこんな感じだって聞いたことあるし。
それより、
「ここが…!」
「はい、本部です。駐車場は広いので、迷子にならないでくださいよ。」
子供扱いされている…、これはジョークなのか、本気なのか、反応しづらいところだ。
「わかりました!」
本気で返してみた。
「ふふ、素直なのはいいことです。」
ジョークだったみたいだ。
さぁ、ついに本部についた。街角異変調査屋2号店とは比べものにならない大きさだ。
一面ガラス張りの黒光りする建物…といった雰囲気がする。怪しいアジトじゃないか?
「入り口はこっちです。」
入り口にはこれまた巨大な門があり、何となく後退りしたくなる異様な迫力がある。
「受付をしたら、私についてきてください。冗談でもなく、簡単に迷子になりますから。」
今のところ、池田が話したセリフで一番真剣に言ったのはこのセリフだろう、と鈴木は感じた。
「あと、これが本部の地図ですが…、まぁ、念のため持ってもいてください。」
池田の微妙な反応通り、地図を見ても鈴木には何が何だかさっぱりだった。複雑すぎるのだ。
受付をすませると、ひとまず診察室に行くことになった。それだけ聞くと病院のようである。
「診察室は分かりやすい位置にありますよ。当然かも知れませんが。」
受付から少し進むとあった。
「はーい、鈴木さんですね。どうぞー。」
すぐに呼ばれた。どうやら今はあまり患者はいないようだ。
「今回はどうしました?」
かくかくしかじか。
「なるほど。ちなみに原因は分かりますか?」
「それが…なぜ気絶したのか、よく覚えていないんです。」
「わかりました。少しお待ち下さい。」
何やら深刻そうな顔になった。言われてみれば、道端で気絶したあげくその理由は覚えていないとなると、症状はかなり重症な部類だ。
「お待たせしました。こちらに来てください。」
「はい。」
言ってみると、大きな機械が現れた。
…全く、俺は小人にでもなったのか。なんちゃって。
(んー、100点中13点!)
…、というか、起きたのか。
「この椅子に座ってください。」
「…今からどんな検査が?」
「まぁ、俗に言うレントゲンです。貴重な一回ですから、大人しくしていて下さいよ。」
れんとげん、聞いたことはある。
「はい、じゃあこの出っ張っているところに顎をぴったりくっつけてください。」
「はい。」
(何してんの?)
レントゲンの撮影。体が透けて写真が撮れるの。
(そりゃ凄い。)
てか、お前、写ったりしないよな?
(大丈夫だよ。人類の技術じゃ、僕には勝てない。)
「はい、終わりました。…特に異常は見つかりませんね。」
「ふむ、そうですか…。」
「念のため、1週間後に、池田さんを通じて本部に連絡をお願いします。」
「わかりました。」
ほんとに映らないのか。
「ありがとうございました。」
「お大事に。」
診察室を出る。さて、鈴木はそこそこ長い時間、池田を待たせてしまったことに気づいた。もう15分は経っている。
「池田さん、お待たせしてすみません。」
「大丈夫ですよ。本部の中にはコンビニもありますから。…では、本題に向かいましょうか。」
エレベーターだらけの場所を進み、目当ての物を見つけて、上がって、降りて、探して、上がって、たまに下がって、をしばらく繰り返すと、池田の足が止まった。
「ここですかね。」
隅っこのほうの部屋に着いた。簡素な作りの扉を開けると、コンピュータにひっついて作業している人がいた。この人が事務の人だろう。
その人はこちらに気づいたようで、顔をあげた。
「…あら、君が鈴木君?」
「そうです!」
「街角異変調査屋2号店、本部事務担当の丘森恵です。よろしくね。」
…いたんだ、こんな人。いや、いるとは思っていたけど、実際いるのをみるのは初めてである。
「はじめまして…、と言いたいところだけど、実は2号店からの電話はいつも私につながるから、もう話してはいるでしょうね。」
じゃあ、あの時の電話の人は丘森さんだったのか。
「ま、それよりね。本題よ。2号店にもう一人欲しいんでしょ?」
「はい、まぁ…、そうです!」
「実は居るのよ。候補。緑塚さん関係でね。」
「え?」
そうなんだ。誰だろうか、緑塚さんと仲良さそうな人って言ったら、なんかノリがいいおじちゃんみたいな感じかな?
「呼ぶわね。おーい、神崎君ー?」
「…はい。いま。」
威嚇するような低い声が聞こえた。
すぐに若い男性の顔が近づいてくる。
あれ。
「こんにちは、鈴木君。」
「こんにちは…?」
自分たちと同じスーツを身にまとい、高い身長に銀色の立派な片眼鏡を付けている。それに。
なんかすっごい睨まれてるんだけど…。
「ということで、面倒くさいし、簡単に説明するわね。
これから神崎くんを街角異変調査屋2号店に配属します。」
「…いいんですか?」
「いいよ。元からそのつもりだからね。鈴木君。」
片眼鏡が怪しく光る。怖い…。
「あの、僕は鈴木優人です。よろしくお願いします…。」
「僕は神崎倫太。よろしく。」
怖いよ…。
「君、得意武器は?」
「…、ブーメランです。」
「そう。」
なに、なんなの…。
(なんか嫌われるようなことしたんじゃね?)
なんかあるとした多分お前のせいだよ…。
「それでは、用も済んだし帰りましょうか。」
早いな。仕事はパッパと済ませたいタイプ?
…それともやっぱり嫌われてるのかな。
「池田さんと、僕は一緒ですけど、神崎さんは…どうするんですか…?」
「一緒に帰ったほうがいいかい?」
「えと…、どちらでも。」
「じゃあ、一人で帰らせてもらうよ。」
と言うなり、スタスタと歩いていった。
な、仲良くなれるかな…。
(ま、多分、元から一人で帰るつもりだったと思うよ。)
「鈴木君、いきますよ。」
「はい…。」
本部に行く前のときより大変になるかもなぁ…。
いや、でも、援護のために来てくれたんだからなぁ…。
鈴木は、初仕事からずっと自身にまとわりついている不安が、一生取れないのではと何となく不安になったのだった。
やっと本部が終わりましたよ。
つっても多分また来ますが。だって広いもん。
あと、少し思ったのは、2号店に若いやつばっか入ってんな、ということです。まぁいいか。
神崎倫太
男性。20歳前半。緑塚さんの後輩の一人。
(緑塚さんの後輩には生きている人も勿論いる。
人が良かったのでみんなから好かれている。)
鈴木のことをどう思っているかは不明。
得意料理はハンバーク。好きな料理もハンバーク。
デミグラスソースのが一番好き。
丘森恵
女性。年齢は…聞かないでおこう。事務の人。
街角異変調査屋2号店の事務は2人いるが、
片方は全然仕事をしないので、困っている。
最近の悩みは寝不足。2号店はあまり仕事がないので、実は事務の人のほうが忙しい。
得意料理はおかゆ。好きな料理はパスタ。




