物語の始まり
鎖ぶんぶん〜♪みんなブンブン〜♪
鎖ぶんぶん〜♪ハチはブンブン〜♪
鎖ぶんぶん〜♪親はプンプン〜♪
ーあれから時間がたった。
トンネルは危険だと判断され封鎖が決定し、
緑塚さんは行方不明ということになった。
緑塚さんの家族がいるなら伝えたかったが…
いくら探してもそれらしき人は見つからなかった。
事務所も片付けの人が入り(緑塚さんの銃などを持っていった)、みるみるうちに物が減っていった。片付けの終わった部屋を見て、自分が思っていたよりは事務所は開けた空間だったんだなと理解した。
(それでさぁ…)
もちろん、常にこいつの声が聞こえてきたが、作業をしている間その一切を無視した。
また、左手の指は黒いままだが、今のところ何の問題もない。感覚がないのは変な感じだが、そもそも左手をあまり使わないのだ。右利きだし。
ある種展開としてはつまらないが、ともかくしばらく何もない日々が過ぎていた。
ある日。事務所で待っていると、チリンチリンとドアの開く音がした。
「あ、来た来た。」
ある人物と会う予定を立てていたのである。
「こんにちは、お久しぶりです。」
池田さんだ。
「お元気そうで何より。」
「…はい!おかげさまで。」
あれからだいぶ気持ちも落ち着いて、元気なのは本当だ。
(へぇ〜、こいつ池田って言うんだ。)
頭にずっと話しかけられるのは嫌だが。
「少し本題とはズレますが、先に伝えたいことが。」
「はい。」
「職員がこの建物の状態をみて、改修することが決まったようなのでお伝えします。」
「改修…!」
思い返すと、確かにこの建物は古いところがあった。きれいになるのは素直に嬉しい。
「1号店の方はすでに改修が済んでいて、次はこの2号店に改修をするようですよ。」
「…2号店?」
そうなの?
(そうなんだ。覚えとこ。)
「あぁ、看板が見えにくかったですもんね。
そうです。ここは街角異変調査屋、2号店です。」
へぇー。まったく知らなかった。
「…緑塚さんから説明がなかったのですか?」
「…えっ、と。」
自分が聞き逃していて可能性もあるが、多分、
聞いてなかったと思う。
「…おそらく、そうです。」
「なるほど。分かりました。では、1号店について軽く説明します。」
ふむ、そんなに重要なことだったのか、1号店か2号店かって。
「1号店は東北地方の中央、岩手から山形の中間あたりの山々の間に位置しています。」
東北の中心にはかなりでかい山脈がはしっているから…相当厳しい位置にありそうだ。
「立地の理由は単純でして、東北に異変が発生することが圧倒的に多いからです。」
東京でもかなり多いと聞いていたから、東北はおびただしい数の異変が毎月発生しているのだろう。
「少なくとも1週間に1回。多ければ3日に1回といった数です。」
…そんなにたくさんあるのか。異変。
「東北は特殊な捜査がされていて、政府が異変があるかを調べて調査屋に依頼しています。」
「そうなんですか…!」
関東でもそうしてくれてもいいのに。
「なので、異変調査屋発祥の地なわけです。」
「なるほど。」
「それで、ここからが重要な話ですが。」
あ、1号店か2号店かは重要じゃないんだ。
「今週中に2号店に新しい人が来ます。」
「えっ、あぁ、言われれば確かにそうですね。」
「はい、人が少なくても良い2号店とはいえ、新人の佐藤君一人では無理でしょうから。」
(頼られてないね〜。)
うるさいな、そりゃそうだろ。俺は仕事もまだ1回だぞ。…わかってるだろ、お前!
「つまり、人の多い1号店から2号店に新しく人が来るので、雰囲気整えておいてください。」
え?雰囲気?
「雰囲気というと…?」
「何でしょう。2号店暗いんですよ。いや仕方ないところもあると思いますけど。」
周りを見渡す。前と比べ細々したものはなくなったが…確かに明るい雰囲気というよりは厳格な仕事場みたいな雰囲気だ。
「雰囲気づくりですか…。」
「もうちょっと電気つけたらどうでしょう。」
(えーやだなぁー。)
俺はやっと明るくなるのかって嬉しいけどね。
「電気に関しては電気代を考慮してつけてないところがあります。」
「電気代に関しては政府が負担してますよ。」
あ、そうなの…。
「…。」
「いつまでも暗い雰囲気で仕事はできませんから、これを期に明るい雰囲気にしましょう。分かりましたか?」
「はい…。」
(暗いところに生首のマネキン転がってるじゃん。)
はたから見たらめっちゃ怖い職場だな…。
ーまた数日後
チリンチリンー
「あ、今日か。」
「こんにちはー」
聞いたことのない声がする。変に間延びした声。
やはりそうだ。新しい人が来たみたい。
「こんにちは、ようこそ2号店へ!」
「歓迎ありがとうございますー」
どうやら女性の方みたい。とりあえず入り口に向かう。
(ん、お客さん?)
たく、話聞いてないなら話しかけてくんな。
「あなたですねー、2号店の人はー」
「はい、そうです。鈴木優人と言います。」
「自分は麻績結希と言いますー、よろしくお願いしますー」
「よろしくお願いします。」
服装は自分と同じスーツだが、何やら左肩に鎖を
巻きつけているようだ。
「あの、その鎖は何ですか?」
「あぁ、これですねー、これはですね、自分の武器ですー」
「武器?」
なんだろう?鎖鎌みたいなものだろうか。
(何か鎖の先についてるねぇ。鎌というよりは短剣。)
「見せたほうが早いと思うのでー、ちょっと待ってくださいねー」
というなり、肩の鎖を解き始めた。
「よし、あのマネキンて何してもいいですかー?」
「あぁ、あれですか?いいですよ。」
例の生首マネキンである。
「よいしょっと…」
直後、ビュン、と音がしたかと思うと…
「お、刺さったっぽいですねー」
すごい勢いで飛んでいった鎖、の先にある短剣の
ようなものが、マネキンの目にぐさりと命中している。と思ったら、またすごい勢いでこっちに戻ってきた。
あれ、この光景どこかで…。
「あいたっ!」
「あー、すみませんー!盛大に当てちゃいましたー!」
あ、頭にクリーンヒット…。う、フラフラする…。
(大丈夫かーい?弱いねー、君は。)
う、うるさいな、いつまでも…。
「ちょ、ちょっと座ります…」
「本当にすみませんー!」
人に対して批判的にはなりたくないけど、
俺が座ったのを確認したら、彼女はそそくさとマネキンを外し始めた。
もうちょっと心配してくれてもいいのに。
「あれ、また鎖巻くんですか?不便じゃないですか?」
「あぁ、鎖を肩に巻くの気に入ってるんですよー、ヘビみたいで可愛くないですかー?」
「え、うーん。」
何となくガラガラヘビに見えなくもない。
「言われればヘビにみえるかも…?」
「ですよねー、可愛いでしょー」
それはヘビが可愛いと思う人間じゃないとたどり着けない思考だと思う。
(可愛いけどな、ヘビ。暗いところが好きなのも僕とそっくり。)
そうですか。
「なにはともあれ、これからよろしくお願いしますー」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
(さて、どうなることやら。)
名前の由来
麻績結希…糸糸糸、じゃじゃーん!まふらー!
独特な喋り方ですが、あの伸ばしがないと結構早口
みたいですよ。
そうそう、あの鎖剣、ちょっとした特徴があるようです。いつか分かると思いますよ。




