表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街角異変調査屋 ―2号店―  作者: おいなり
3/3

報告書1.黒眼(仮) 後編

見 え た !


見え!見見た。見えた?見!見えた!見え見え。…

見見え見えた…。見?見え。見え。た!見え…。目


見 え た ?


見  え  た  ?

ー緑塚さんと打ち合わせした数日後ー


黄巣駅にて…

「あ、こんにちは!」

「すまん、遅れた。」

予定では計画を立ててすぐ行くつもりだったが、

緑塚さんに急遽別の仕事が入り、少し日付をずらすことになった。ので、スケジュールも少し緩めになっている。とはいっても今はまだ太陽が暗い。

「運転手の方はどのくらいにいらっしゃるんですか?」

「もう少しで来るはずだ。どうやら車のメンテナンスで遅れてるらしい。」

メンテナンス。大変だな。

「暇をつぶすほどの時間があるわけでもないから、ここでしばらく待っていよう。」

「はい!…そうだ、緑塚さん。少し気になったんですけど。」

「どうした?」

「銃ってどうやって持ってきたんですか?」

ケースに入っていて分かりづらいとは言え、

普通に銃刀法違反だ。きっと何か手続きしたのだろう。

「…お前も何となく予想はしてるだろうが、

軽い手続きをしてある。」

そういうと緑塚さんは武器屋でもらったあのカード…「得意武器」が書いてあるカードを取り出した。

「これを役所に見せて許可証をもらう。そうすれば今日一日は任務の中で自由に使える。」

「…このシステムを悪用する人、いそうですね。」

「まぁ、いるだろうな。任務がどこまでの範囲なのか、明確に線引きもされてないからな。」

と、話しているうちにタクシーが目の前に停まった。

「到着したみたいだな。」

中から運転手の方が出てきた。優しそうなおじいさんである。

「本日、お二人の運転手を務めます。池田です。

何卒。」

「よろしくお願いします…!」

「よろしくお願いします。」

ハッ…!緑塚さんが…敬語!?

「おいなんだその顔は」

いや、慣れないなと思って。

「なんでもないです。」

「…。」

あはは、めっちゃこっち見てる。すみませんて。

「…どうぞお乗りください。」

「あ、すみません。」

待たせるわけにはいかないのでさっさと乗ろう。

シートが真っ黒だし。

「あの、武器ってどこに積めばいいですか?」

「そうですねぇ、後ろはスペースがないので…、

助手席に置いてください。」

「了解です。」

さて、程なくして車の移動が始まった。

あんなに話していたのに、まだ太陽は暗く沈んでいる。ふと、水の確認をした。…まぁ足りるか。

「ここから10分ほどで着く予定です。」

「分かりました。」

緑塚さんが全然喋らないな、

「緑塚さん、大丈夫ですか?」

「え?…あぁ、ちょっと景色に見とれてた。森がきれいでな。こういう景色は好きなんだ。」

何か返事をしようと思ったが、また緑塚さんが

景色に集中したようなので、それ以上話しかけるのはやめておいた。景色か、自分はあまりよく見えない。

「目的地に到着しました。」

おっと、気づいたらもう着いたみたいだ。

「ありがとうございました。」

「ありがとうございました!」

「何かあったら連絡をしてください。すぐに車を出せるようにするので。」

なんだろう、すごく頼もしい。

「では、行ってきます。」

「ご武運を。」


ーしばらく歩いてー

「ここが例のトンネルか…。」

ここまでに草はボーボー、木は生えまくり。

なのにトンネルとそこに繋がる道路が非常に綺麗なのが不思議だ。

「異変と言われれば確かに、そうかも知れないと思う異様さですね…。」

「そうだな…。」

武器を握りしめる。イメージトレーニングはしてある。緊張しすぎないように気をつけよう。

「じゃあ、入るぞ。言ったことは覚えてるな。」

「はい。武器、水、勇気、逃げ足の準備OKです。」

「行くぞ!」

トンネルに入る。…うまくいった!

「やはり、車には反応するが人には反応しないな。」

「すごい暗いですね…。」

ライトを付けてみた。が、事前情報の通り、

ライトが効かない。光が吸収されたように前が全く光らないのだ。

「やっぱだめみたいだな…。」

足音が響くのでトンネルだとは分かる。

「そうだ、鈴木。カメラを渡しておく。一応写真を撮っておけ。何か写るかもしれないし、どっちにしろ報告書に書けるからな。」

「あ、ありがとうございます!」

カメラを受け取る。電源を付けよう。

「…あれ?」

「どうした?」

おかしい。電源がつかない。

「すみません、電源がつかないです!」

「押すボタンは合ってるか。」

確認する。暗くてよく見えないので手探りになってしまう。

「わかりません!」

「仕方ない。スマホは使えるか?それをカメラとして使おう。」

そうだ、スマホならボタンがわかりやすい。

ポケットからスマホを取り出す。…駄目だ。

「つきません!」

「マジか!…充電切れはないよな?」

「はい、朝は充電満タンでした!」

お互いの声がだんだん大きくなっている。

よく聞こえないのだ。音も吸収されたように。

「仕方ない。写真は諦めよう!」

「分かりました!」

「おそらくだが、このままここに居続けるのはマズイ!もうしばらく進んだら撤退するぞ!」

「はい!」

個人的には真っ暗だし電源つかないしで気が滅入ってしまった。早く帰りたい。

「くそ、本当に何もないな…。」

確かに、歩き続けたが壁に当たらず、小石もなし。

足元を見る。吸い込まれそうな漆黒だ。

あれ?足音、消えてないか。

カラッー

「え?」

どうやら、緑塚さんが持っていた銃を落としてしまっている。

「緑塚さん!大丈夫ですか!?」

「あぁ、ちょっと手が滑っちまった。」

暗くてよく見えない。本当に暗い。

「…佐藤。」

「はい?」

「逃げろ!今すぐ!端的に言う!俺の片腕が消えた!」

え、?

「このままじゃマズイ!」

「でも、緑塚さん、」

「早く!」

くるりと背を向けて走り出す。ー安心しろ、後ろは俺が守るーどこか嬉しそうなそんな声が聞こえてきた。

「…急がないと!俺が生きて帰らないと!」

急げ!早く!

(€¥(|*^2☆-)

「…!?なんだこの音…!」

うるさくはないけど、頭に響く。おかしくなりそうだ。

(07→6€+☆*(・4295,☆2%・8♪)

やばい、やばい!急げ!いそー

…そこで記憶が途切れた。



ーいくつか…時間が経った頃ー



「ええと、佐藤さん?」

ハッ!目が覚めた。慌てて声の主を探すと運転手、池田さんだ。トンネルの前で倒れていたみたいだ。

「あの…!緑塚さんが!」

「落ち着いてください。話はそれからにしましょう。」

落ち着くって…!

「緑塚さんが、中で!」

「…緑塚さんがどうしたんですか。」

「異変に…!」

「分かりました。とりあえずあなたは一回落ち着いてください。」

でも…、

「きちんと伝えるには正しく状況を整理する必要があります。落ち着いて、状況を理解してから話してください。」

「はい…。」

状況を整理して…、理解…。

緑塚さん…。

「…落ち着きました。」

「では、話してください。何があったのか。」

まだ完全には落ち着いてないけれど、事の経緯を説明した。

「緑塚さんは、今…どうなっているかわかりません。」

「そうですね。…きっと助かりません。」

「そんな…!」

そんな、バッサリ切り捨てるの?

「現在警察を呼びました。状況は説明してあります。このトンネルは封鎖されるはずです。」

嘘だろ…。このまま終わるの?何もできてない。

緑塚さんが無事なのかも分からないなんて…。

そんなの…。

「俺、もう一回トンネルに入ってきます。」

「…馬鹿ですか?」

辛辣。

「きっとあなたが行ったって、死人が増えるだけです。そんなことは緑塚さんは望んでいないはずですよ。」

「そんな言い方…!」

「いいから落ち着いてください。あなたができることはこれ以上犠牲を増やさず、正しい情報を持つことです。」

…。確かに、自分が行ったって何もできない。

本当にこれで終わりなのか?こんな一瞬で?

沈黙が辺りに広がった。太陽は暗く照り続けている。

しばらくして、パトカーのサイレンが聞こえてきた。落ち着いたら落ち着いたで、…なんだが目眩がしてくる。何も為す術もなく、また気を失った。


「ん…?」

頭上で声がしたのを聞いて、目が覚めた。

「あ、起きましたか。」

「池田さん…?ここは…?」

「ここは病院です。あなたがまた倒れたので、とりあえず救急車に運んでもらいました。」

確かに寝転がっているものが柔らかい。ベットだろう。それに天井が真っ白だ。

「その指。黒いですね。大丈夫でしょうか?」

驚いて両手を見る。左手の指…本当だ。全部変色している。例えるなら…あのトンネルの中のような…

「これって…。」

ふと気づいた。

「池田さん、そこにあるペンを渡してくれませんか?」

「あれですか?…はい。」

まずは右手で受け取る。もちろん問題ない。

次に左手で持ってみる。

コトン…

すり抜けた。これは…まるで…。

「指が…消えた…!」

(0*(・¥*(☆42-)

「あ、またこの音!」

なんなんだこの音は!不快だ!

「うるさい…!」

(0…$らいか?おーい。聞こえてるね?)

は…?人の声?

(やっぱり聞こえてるね。こんにちは。)

「…誰だよ!」

(僕は…そうだな。黒目。そう呼んでくれ。)

何だよ?誰だ?知り合い?

(もう、今さっき会ったばっかりだろ?)

さっき…?さっき…。トンネル…。

(黒、でわかんないかなー。君は頭が悪いのかい?)

トンネル…!

「緑塚さんは…どうした…!」

(あぁ、君の前にいた彼かい?もう吸収したさ。

僕の力の一部だよ。)

「お前!」

(まぁそんな怒るなって。何だい?君も吸収されたいのかい?)

はっ、できるものならやってみろ。ここはトンネルからはほど遠い位置にある。

(まぁ、それはそうだ。僕はあのトンネル内でしかほとんど力を使えないからね。)

いいのか?そんなに情報漏らして!

(問題ない。君たち人間に、僕は倒せないからね。お互い様さ。このぐらいしないとフェアじゃないだろ?)

というか、何だ?何で急に話しかけてきた?

(んー、まぁ簡単に言うともともと君の脳に少し《影》を落としといた。僕の一部さ。今、僕と君は繋がってる。)

何で俺に…。

(君のことが気にやってたんだよ!何かビビッときちゃって。)

もしかして、太陽がやけに暗かったのは、お前のせいでそう見えてたのか?

(そうだね。君に害を加えるつもりはなかったんだけど…。)

じゃあ、この指は何だよ!?

(おまけ。)

なんなんだよ!不便だろ!

(…じゃあ、こうしよう。左手の親指だけにしてあげる。)

…なんか大人しいな。

(おまけはこっちが勝手に着けてるからね。いらないと言うならしょうがない。)

なんだろう、なんか嫌なペースで話しかけてくる。

おしゃべりだしうるさいし。そもそも緑塚さんの敵なのに…。

「あの…?」

「…あ!池田さん?」

「大丈夫ですか?なんかずっと黙ってましたけど」

「すみません、いろいろ考えてました。」

(うわ〜。嘘ついてる〜。)

黙ってろ!



さて。緑塚さんについてです。


彼は、最期に佐藤を守れて嬉しかったようです。

今までいつも後方射撃(銃がライフルなので。)だった彼は、前線で仲間が倒れるのをずっと見てきたようですから。


彼が生き延びたのは、後輩を犠牲にしたわけでも、

異変が弱かったからでもありません。


運が強かったからでしょう。悪運が。とても。


黒目(仮)についてです。


人を舐め腐ってます。そんだけです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ