報告書1.黒眼(仮) 前編
真っ黒クロスケでておいでー!
でないと目玉をほじくるぞー!
ー…。まだ心が落ち着かない。自分はこれからどうすれば…?いや、駄目だ、前向きにならなければ。
…自分が遭遇した、異変はー
「おはよう、鈴木。」
緑塚さんだ。
「おはようございます!」
「はは、若いな。元気なのはいいことだ。」
緑塚さん、いきなりおじさんムーブかましてるな…
さて、今日は大切な日。異変に遭遇した時のための僕の装備を買い出しに行くのだ。
「異変調査の装備は特別な店でしか買えないんだ。だからだいたいいつも同じ店だ。」
緑塚さんが歩きながら話す。
「細かい説明はあまりないんだがな。行けば分かるだろう。」
岩や枯れ草の転がった荒れた土を踏みながら歩く。
10分ほどだろうか。一つの民家についた。
「ここですか?」
「いや、ここの地下だ。ついてこい。」
民家の横の納屋の前に着くと、緑塚さんは何やら
鍵を取り出した。
「…やけに厳重ですね。」
「情報が漏れるとトラブルの元になるからな。
お前も気をつけろよ。」
納屋に入って、緑塚さんは扉に鍵をかけると、
奥に向かって歩き出した。すぐについていく。
階段を少し下ると、小さな扉の前についた。
「番号を教えてください」
マイクから声がした。
「番号0003、緑塚だ。0047、鈴木も来ている。」
「…承認されました。扉を開きます。」
扉が重く開いた。冷えた空気が辺りを漂う。
「久しぶりだねぇ、…緑塚。」
「…あんたは本当に変わらないな。」
「そこのひよっこが鈴木かい?」
「あぁ、新しくできた俺の後輩だ。」
軽く会釈する。暗いので顔はよく見えないが、声はおばあさんぽい。
「で?今日は何のようだい?」
「鈴木の新しい装備を買いに来たんだ。」
辺りを見渡す。あれは…ライフル?事務所に置いてあったような…。あれはここで買ったのか。
「なるほど。…おい、鈴木と言ったかい」
「ぁ、はい!」
「ここに立っておくれ。」
丸い円盤のようなものが浮いてきた。
「緑塚さん、これって何ですか?」
「それか?…まぁ占いみたいなもんだ。乗るとお前が得意な武器が分かるようになっている。」
「へぇ…。」
なんだかとてもハイテクな装置だ。おばあさんが
経営してるとは思えないほど。
「ほい、結果がでた。いいか悪いかはあんた次第だからね、鈴木。」
印刷されたらしい温かい紙を受け取る。かなり多くの文字が書いてあった。
「じゃ、私は奥に戻るからね。金はカウンターに置いといてくれ。」
「すまん、クレジットカードでいいか?」
「あぁ、そうだったか。わかったよ、読み取れるやつをカウンターに置いておく。」
声が遠ざかる。結局顔は見えなかった。
「結果はどんな感じだ?鈴木。」
「えーっと、得意武器…『ブーメラン』…?」
「おっとぉ…。」
慌てて緑塚さんの顔を見る。
「何ですか、何か問題あるんですか!?」
「…えっとだな、ブーメランはかなり使いづらい。
一番器用に動けるのは長所だが、そのぐらいだ。」
うん、頑張って擁護しようとしてくれてるんだな!
っという感想しか湧いてこない。要するに弱いんですよね。…なんだか悲しくなってきた。
「…。」
「まぁ心配するな。ちゃんと戦えるようになる。素質ってのは簡単に見定められないからな。」
緑塚さんが一つブーメランを取ると、「投げてみろよ」と渡してきた。
「…ここで投げていいんですか?」
「大丈夫だ。ここは見かけより広いからな。」
「…えいっ!」
自分のなんとなくのイメージで投げてみる。
(カラッ…)駄目だ、普通に落ちてった。
「緑塚さん…。」
「…いつかできるようになるだろう。頑張ってくれ。」
そりゃ無いって。どうすんのこれ。練習あるのみ?
「…これならいいんじゃないか?」
「さっきのと変わらなくないですか?」
「いや、どうやら自分が考えたように飛ぶブーメランらしい。これなら使えるんじゃないか?」
…本当かな。
「ものは試しだ。まずは自分に戻るようイメージしながら投げてみろ。」
「…えい。」
こういうのには騙されてきたから、どうも信じられない。と思っていたが。
「うわっ、本当に戻ってきた!…イテッ!」
「おい!大丈夫か?」
「はい、なんとかギリギリ急所は避けました。」
掴みそこねたのは恥ずかしいが、ともかく本当に
戻ってくるブーメランのようだ。
「よし、鈴木。それを買おうか。」
「はい!…って、」
「なんだ?」
自分が心配したのは、値段だ。値札を見ると…、「1,000,000」。ポンと出せる値段ではない。特にまだ若手の自分にとっては。
「いや、まぁ、金は事務所から出すよ」
「…いいんですか!?」
「政府から金はそこそこもらってるんだ、少しやりくりすれば払えるぐらいの金はある」
「分かりました、ありがとうございます」
その他作業服てきなイケてる服を取ったりし、緑塚さんは財布からクレジットカードを取り出して、読み取り機に読み取らせた。
「よし、買えたぞ。今日からその武器がお前の相棒だ。大事にしろよ。」
「はい、もちろんです!」
[何日か経った後…]
少し雨降りの火曜日。事務所に、一件の「異変解決願い」が届いた。
「鈴木、初仕事が来たぞ。」
「おぉー!…、喜んでいいんですかね…?」
「大丈夫だろ。」
今回の異変は、I県の大きめなトンネルでらしい。
事務所からはそこまで遠くない。
「今回依頼された所ではどんなふうな異変が?」
「国道から外れた少し小さめのトンネルなんだが、どうやらそのトンネルは全くライトが効かないらしい。」
「え、はぁ…。」
「今のところ被害は出てない、というのもそのトンネルに入った人は気がつくと反対側に出ているらしいんだ。」
それは不思議だけど…なんかしょぼくない?と思ったのは正直なところである。
「…これ、本当に僕たちが行くべき問題なのですか?そもそも被害が出てないんだし、そのままにしてもいいんじゃ…?」
緑塚さんは返答に困った顔を一瞬してから、
「だとしても、これからそのトンネルで何が起こるかも分からない。ライトが効かないのは明確に危ないから、ちゃんと解決すべきだろう。」
と答えた。
「解決できない問題は俺達のところには絶対に転がり込んでこない。人々のためだ。しょうがない。」
「…そうですよね。分かりました。」
緑塚さんが怪訝そうな顔をしてこっちをみた。どうやら、自分が不満そうな顔を表に出しすぎたみたいだ。
「あのな、佐藤。依頼されたら行かなきゃならない。例えどんなものでも。国相手に国を満足させなきゃいけない仕事なんだよ。」
はい、めちゃめちゃ諭されました。すみません。
自分がめちゃめちゃ反省した顔になった(実際反省しているが)ので、緑塚さんも顔を少し柔らかくして話を戻した。
「…でだ。依頼解決は早めに行くほうがいい。近頃、何か予定は入ってるのか?」
「いえ、今週は何も無いです。」
「よし、計画を今日中に練る。明日か明後日には
現場に向かうぞ。」
「計画って、具体的にどんなものを?」
「何で向かうのか、いつに集合するのか、異変があまりにも危険だった場合の対処法、とかだな。
今回、鈴木は始めてだから、より詳しく決めるぞ。 。」
緑塚さんの顔が険しくなった。
「計画の内容は、報告書にも記入する必要があるから、必要だと思ったらメモも取っておけ。紙がないならそこにある。」
大丈夫、メモ帳とペンは常に持っている。紙を1枚千切った。…少し汚いが。
結果として決まったことはあまり多くなかった。
異変がわかりにくいから、あまりどういう立ち回りをしたらいいとか、しっかりと決められない。
「行く方法はタクシーだ。任務には専属の運転手を一人つけられる。」
緑塚さんによるとその「専属の運転手」は、
一般車からトラック、バス、はたまたヘリコプターといった乗り物全般をだいたい乗り回せるらしい。
車の免許もない自分にとっては、尊敬やらなんやらである。
「集合は早朝だ。事務所近くの黄巣駅の東口にする。」
黄巣駅は最近できたローカル線の駅の一つだ。
まぁ…よくある小さい駅である。
「次にこれが一番大事だ。異変があまりに危険そうな場合にどうするか。」
緑塚さんの目に力がこもる。
「危険を感じたらすぐに逃げることだ。間髪入れずに。俺は無視しても問題ない。すぐに逃げろ。」
そんなんでいいの?緑塚さんはどうなるの?
「逃げるのは無駄な相手かもしれないが、そこは俺の銃で大抵どうにかできる。」
「…緑塚さんはどうするんですか?」
「それは…。そん時はそん時だ。後輩を守るのは当然。心配せず、お前はただ逃げればいい。」
そんなことを言われると流石に不安になる。
「自分だって…えっと…。」
何か言おうと思ったけれど言葉が詰まった。
自分が新人なのは理解している。軽々しく「自分は大丈夫」なんて言えない。
「安心しろ。まだ異変が危険だと決まったわけじゃない。お前は心配しないで任務にあたればいい。」
「…はい!分かりました!」
期待はされているのだから、ここは言われた通り。
自分にできることを精一杯することが、今自分にできることだ。
緑塚さんの武器がライフルの理由…
(エイムが)ウマスギル!(既視感)
鈴木がブーメランの理由…
前線でガツガツ戦うイメージができなかった。
が、弓とかだと緑塚さんと戦闘距離が同じになる。
一癖つけようと頑張った結果。
あまりに長くなりそうなので前編後編に分けます。
自分が書いてると、小説に詳しい説明がないというか、微妙に登場人物に入り込めないなと見返して思ったんですけど、それはそれでいいかなと。思って今に至ります。
緑塚さんに関して、個人的な解釈は後編にて書きます。