報告書0.
※物語は鈴木優人目線で進みます。
前回のあらすじ
街角異変調査屋に、新人が入ってきた。
鈴木優人というらしい。
そして、上司の名前は緑塚蒼仁。
2人にどのような異変が迷い込んでくるのだろうか?
(作品説明の中のあらすじ参照)
「よろしくな、鈴木。」
そう言うと上司の緑塚さんから、名刺が渡された。緑と青を基調としたデザインだ。名前の通り、なのかもしれない。
「よろしくお願いします。」
そう言うと、自分も名刺を渡した。なんてことのない、普通のデザイン。名前も鈴木優人。何処にでもいそうな名前だと、自分で思っている。
「さて、突然だが質問だ。鈴木、仕事の経験は何かあるか?」「接客業を少し。」
本当に、少しだけ。なのだが。
「ふむ、そうか。…次の質問だ。この仕事の内容を、正確に、知っているか?説明してみろ。」
そりゃもちろん分かっている。
「はい、分かりました。」
簡単にまとめるとこんな感じ。
時々、人々からの「異変解決願い」が
届く。内容は裏山から毎日変な声が聞こえるだの、
たまに空が黄色く見えるだの、地元の街灯がほとんど消えてるから電気をつけてほしいのに、「整備してあるから、毎日電気はつけてるぞ」と役所に言われただの、「クレーム」としか思えない内容だ。
その「クレーム」が集まった「異変解決願い」が数年間続けて送られることがある。
その時には正式に「異変」として、「街角異変調査屋」が解決に乗り出す。というわけだ。
報告される異変は意外と数が多い。一カ月に少なくとも2〜3回は異変調査に行く必要があるそうだ。
「まぁ、大体合ってるな。ちゃんと予習してきたのか。」「はい、もちろんですよ。」
「だが少し抜けている事が有るぞ。」そう言うと、
緑塚さんは暗い顔をして言った。
「調査が必ず安全とは限らない。地理的要因、環境的要因、そして、異変そのものだ。」「え?」
「何が言いたいかというと、調査は必ずしも安全では無い、ということだ。」
緑塚さんは更に顔を暗くした。
「1回外に出るぞ。ついてこい。」
頷く間も質問する間もなく緑塚さんは靴を履いて歩き始めた。慌てて外に出る。
「今まで、俺の部下は何人もいた。そして、何人も、」
しばらく間があった。
「家に帰ることができなかった。」
無言で歩き続け、墓場についた。広い。
緑塚さんは受付をすると、「こっちだ」と
墓場に入っていった。
「異変というのは、必ず元凶がある。そして、多種多様だ。危険なものもある。」
「…」
「その中には、人が死ぬような強力な異変もいる。決して少ない数でも無いのが厄介なんだよな、」
緑塚さんは墓の一つに花を置いた。さっき受付で
一緒に買っていたものだ。
「異変として見えていた物の影響は少なくても、
元凶が強力になっていたりする。やられるのは、
そこで油断する弱いやつだけではない。」
緑塚さんは長く息を吐いて続けた。
「来て初日にこんな事を話してすまんな。
…今まで何人もの部下が死んでいった。これ以上は
俺も耐えられない。せめて、お前には死なないでほしい。」
「…心配しなくても大丈夫です。僕だって、戦えますから。だから、ここにいます。」
そんな事は今まで緑塚さんといた人達も同じだろう。そう思ったが、これ以上言葉を続けれ
無かった。
「…そうか、期待してるぞ。」
思ったよりも、優しい顔で笑っていた。
名前の由来
緑塚蒼仁…緑塚さぁん!
鈴木優人…名前の通り。何処にでもいそう。