第一話(1)
シーン1 「落日~黄昏に走る電光~」
『“旧”賀輔市』、ここは異能者とそうでない者が、おっかなびっくり手を取り合い暮らしている、廃墟同然の街。そして、『震夜』により世界から切り取られた本来の『賀輔市』。
あの夜を境に二分された『賀輔市』の片割れであるこちらには、『楽園』からこぼれ落ちた者、それを嫌う者が皆一同に押し込まれた。
あれから長い月日が過ぎたが、広大な街のあちこちでは、今もトラブルが耐えないでいる。そればかりか、その真上に『あんなもの』が浮かんでいるおかげで、街はいつも夕暮れのように薄暗い。
そんな街で、二人のオーヴァード、鳳 雷華と神薙 たんぽぽは今、確かに生きていた。
GM:ということで、初めはPC1、PC2の合同オープニングとなります。
まずはPC1の描写から。時は夕暮れ、あなたは今日も街中で起こったトラブルを解決している最中です。トラブルの内容はお任せしようと思ってたんですが、どうなされます?
雷華:ふむ、じゃあ、『旧賀輔市』にいくつかある通りの一つでひったくり事件が発生、連絡を受けた俺が対応するって感じで。
GM:了解です。では、被害に遭ったのは非オーヴァードの女の子で、食料が入った手提げ袋をまんまとひったくられてしまいました。
あ、そいえば、今ってどんな格好してるんです? 聞くの忘れてた。
雷華:あいよ!
格好はまぁ、下はホットパンツ、上はランニングにジャケットでも羽織ってよう。とにかく動きやすい感じで。
いつからか、この街のトラブルハンターを買って出たオーヴァードの少女、鳳 雷華。
今日も「この街のどこかで人が困り果てていることが辛抱ならない」とかいった心情で、この街を飛び回っていた。
一体何故、彼女がこの役を引き受けたかは雷華自身も深く考えたことが無かったが、彼女がトラブルハンターに覿面であったことは間違いない。
次々とトラブルが沸いて出るこの街の面倒を見るのに、彼女の『速さ』は必要なものであったからだ。
GM:それでは、あなたが現場に到着すると、あなたのちょうど向かい側からガラの悪い若者が自動車ほどのスピードで駆けてきます。あと、男の奥の方には道の真ん中にへたり込む女の子の姿が、どうやら被害者のようですね。
雷華:自動車ほど? 相手はオーヴァードか。それも足が速いってことはキュマイラかハヌマーンか・・・・・・現場の地形とか様子は?
GM:そうですね、現場は出店がひしめき合う細長い通り。周囲には非オーヴァードとオーヴァードが半数ぐらいずついますが、非オーヴァードは困った様子でそれを傍観。オーヴァードは狭い通路で闇雲に能力を使ってしまっては二次被害を起こしてしまうのではないかと考えて、手を出しかねているといったところでしょうか。
雷華:じゃあ横道辺りから通りに入って、道の真ん中で仁王立ちするぜ。
「やい! そこのひったくり犯!」
住民:「あ、雷華さん! 雷華さんが来てくれたぞ!」
雷華:「てめぇ、人が折角晩飯にありつこうとしたときに、ひったくりなんぞ起こしやがって! 速攻で片付けてやるから覚悟しろよな!」
住民:「あちゃー、飯時の雷華ちゃん呼び出されるなんて・・・・・・ついてないねぇ、アイツ」
GM:ひったくり犯は進行方向に現れたあなたを見るやいなや顔を引きつらせますが、なんとか突っ切ってやろうと速度を高めます。そしてあなたのすぐ近くまで接近しますが・・・・・・一様コイツはフレーバーで倒してもらって構いません。どうします?
雷華:じゃあこんな感じで。
「一撃で、終わりだッ!」
そう言って仁王立ちの体制を解いて、右足を少し後ろに引く。そんでもって、奴さんの進行スピードなんぞ優に超す速さの蹴りをお見舞いするぜ!
ひったくり犯が、自身をじっと待ち構える少女と正面衝突もあわやといった距離まで接近した刹那、突如その身体が宙にはね飛ばされる。
タイミング・速度・威力の全てが絶妙に組み合わさったその一撃は、尋常でないスピードで移動するひったくり犯を易々と捉えたのである。
これは、彼女の脳髄とコンピューターとで制御されている義肢であるからこそ、成せる技であった。
GM:相手ハヌマーン能力者なんだけどなぁ・・・・・・まぁ、いいや。
ではあなたにワンパンでぶっ飛ばされたひったくり犯は、しめやかに気絶し落下。抱えていた荷物もワンテンポ遅れて落ちてきます。
雷華:んじゃ荷物はキャッチ、ひったくり犯は放っておこう。
GM:では、あなたの華麗な手さばきに周りの人々や、近づいてきた被害者の女の子が感謝や賞賛を送ります。ガヤガヤガヤガヤ。
雷華:「いやいや、いつものことじゃねぇかよお前等。ほれ、お前さんの荷物」
GM:ガヤガヤガヤガヤ。
では、いきなりですが【感覚】5で判定どうぞ。
雷華:ほんとイキナリだな!?
GM:この喧噪のなかじゃあ、アレは注意しないと聞こえなさそうなんで。あとシーンに登場したので浸食値増加を。すっかり忘れてた。
雷華:アレ?
うーん、感覚ダイス一個しか振れねぇんだよ俺・・・・・・まぁ、しゃーねぇ。じゃあ浸食値増加からやっちまう。
(初期浸食値34→41)
出目は7。出来れば次の判定でも振るってくれよ、ダイスちゃん。
(1D10で判定→出目9、達成値9)
よし! なんだか知らんが成功したぞGM。
GM:了解です。
ではあなたは、自分の頭上当たりで爆発音らしき微かな音が鳴ったことに気づくことが出来ますね。
雷華:爆発音? じゃあ音の鳴った方を見上げるぜ。どうなってる。
GM:そうですね、あなたの視線の先には、上空の『ニュー賀輔市』の底の一角が煙を噴き上げている様が広がっています。どうやら直前の爆発音は、底面の一角が吹き飛んだ音だったようです。
雷華:「何だ? 上で騒ぎなんぞ珍しい」
その方角を見上げたままその場で立ち止まる。恐らく、ただ事じゃないだろうからな。
GM:描写を続けましょう。
周りの人々もだんだんそれに気づいたようで、怪訝そうに空を見上げます。
では次の瞬間、その一点から、小さな影が煙を突っ切って落下してきます。
住民:「何!?」
住民:「何だ何だ! 上の奴らは何をしてやがるんだ!」
住民::「まさか上で騒動が・・・・・・私たちも巻き込まれるの!?」
GM:さっきまでの雰囲気はどこへやら。突如頭上で引き起こされた異変に、周囲の人々はただ混乱と不安を感じる他ありません。
あと、オーヴァードであるあなたの視力を用いれば、その影は人型をしていて、白い羽をまき散らしながら猛スピードで墜ちていくのを見て取ることが出来ます。
微かに街に射し込む夕日を全身に浴びながら墜ちていくそれは、傷だらけの天使。綴じたままの翼を朱く染め、天使は奈落へと向かって行く。
その様子を見た人々は皆一同に、忌み嫌う『楽園』の異変を感じ取り、不安と憤りを覚える他無かった。
雷華:「なっ!? 人・・・・・・いや、違う!?」
オイ,ソイツが仮に生き物だとして、地表に衝突したらどうなる。明らかにダメージを負ってるよな!?
GM:そうですね。運悪く頭から地表に墜ちた場合、例え、落下してくる影がオーヴァードであっても問答無用で即死。リザレクトをするまでもなく完全に生命活動を停止します。
さて、ここまで聞いてどうなされるつもりですか?
雷華:「やれやれ、さっきので今日の分の面倒は打ち止めだと思ったんだがなぁ」
受け止めるに決まってらァ! 人死をみすみす見逃してたまるかってんだ!
住人:「な、何をする気だい雷華さん!?」
雷華;「何って、あれを受け止めに行くんだよ。どうみたってありゃ人間だぜ? 多分」
住人:「そんな・・・・・・危険ですよ!」
住民:「人間ってったって、『ニュー賀輔市』から来た奴なんて・・・・・・きっとまた騒動を起こすに違いないぜ」
住人:「そうそう、上からおっこってきたものなんぞ面倒事しか生まんよ、きっと」
雷華:「おいおい、だからって見殺しにしろってか? 俺には無理な相談だぜ、そいつは」
GM:了解しました。どうやら、その影はあなたが今いる地点から離れるように落下していくようですね。しかも、それなりの速度で。
では、【肉体】8で判定どうぞ。成功すればその影に追いつくことが出来ます。
雷華:《加速装置》を使って移動速度を上げる! 達成値に補正はかからないか?
GM:ふむ、《加速装置》。
移動距離増加の《イオノクラフト》ならまだしも行動値増加のエフェクトですよね・・・・・・まぁフレーバー的には合致してるので1下げて【肉体】7でどうぞ。あとエフェクト分の浸食値は上げといて下さいね。
雷華:りょーかい!
(浸食値41→42)
「んじゃ、また一っ走り付き合ってくれよな・・・・・・相棒」
カチャリ。
と音が鳴ると同時に、彼女の露出した両脚にスッっと無数の線が走り幾何学模様を描く。
雷華:「モード・アクティブッ! なんとか追いついてくれよ!」
掛け声と共に、人工皮質でコーティングされた義足の表面装甲が一斉に展開。
露出した内部機構に一閃の紫電が走り、音を立て稼働し始める
雷華;「さーてッ! 薄情者どもはさっさと退いた退いたァァ!」
(5D10で判定→出目9・8・8・6・2、達成値9)
成功だ! じゃあ、こんな感じで行かせてもらうぜ?
人工筋肉の稼働率が最大値へ達したのと同時に、少女は地を蹴る。
ブラックドック能力により制御され、休み無く稼働する人工筋肉と、キュマイラ能力による超身体能力が合わさり、少女は瞬時に疾風と化した。
人混みを越え、砂埃と瓦礫とを巻き上げながら影へと迫る雷華。やがて、影を自身の真上に捕らえると、地を、壁を次々と蹴り上げ、その身体を稠へ舞い踊らせる。
そして、影の姿を目前とすると、それが何たるかを確かめる間もなく手を伸ばし、一気に引き寄せた。
雷華:「届い・・・・・・たァ!」
そんでそのまま抱きかかえる訳だが、奴さんはどんな調子だ? というか性別すらまだ分かってないんだが。
GM:では、現在あなたの腕の中に抱かれているものは・・・・・・所々焼け焦げ、穴の開いた六対の翼を背中に備えた裸の少女。幼さが残る顔の面影から、あなたより少し年下であることが分かります。あと、あなたの腕の中でその娘は身動き一つしてません。気絶しているようですね。
雷華:傷ついた天使、ってか。オーヴァードなのか?
GM:その通りです。オーヴァードであるあなたならば、抱きかかえた少女から発せられる雰囲気が自身と同じオーヴァードの物であるということが分かりますし、目の前で少女の翼がゆっくりとですが自己再生している様子からも、それを窺い知ることが出来ます。
雷華:まぁ、上から落っこって来たんだからオーヴァードだよな、そりゃ。
んじゃそのまま着地するぜ。そんで着地と同時に足の人工筋肉がプシューって感じで廃熱。
教えてもらった情報は、着地して奴さんをしっかりと見据えた時に知ったことにする。
「やっぱり天使・・・・・・なのか? いや、フツーに考えて上から来たって事はオーヴァードなんだろうが・・・・・・なんにしろ、何もかもがイキナリすぎて訳分からん」
GM:ホントね。
さて、PC1がヒロインと出会ったところで、そろそろPC2の描写に移りたいんですが、どうします?
雷華:そうだな、ひとまずコイツを自分のねぐらに運び込む。そもそも帰るつもりだったし。あと、こんな厄介ごとの種になりそうな娘、引き取ってくれそうな当てもないしな。
GM:了解しました。では次の描写はPC2の日常シーンから。
聞くまでもないですが、ライヴシーンからで構いませんね?
たんぽぽ:イエス!! やぁっとたんぽぽの出番♪
(シーン1「落日~黄昏に咲く花~」へ続く)