誰しも主人公
物心がついた時には、前世の記憶があった。
小さい頃から、頭も剣の腕も良いとは言われたけど、それは昔の経験があるから。
本当はごく平凡な人間であることは、自分が一番よく知っている。
若き隊長に、聡明な指揮官、最恐の総隊長。
そして、大きな背中を見せてくれた、誰よりも頼もしいうちの総隊長。
他の転生者は、ずっと遠くから見ていたすごい人ばかり。
その人たちは今も最前線で活躍している。
そんな人たちの中に、こんなにも普通な自分も転生した理由は分からない。
けど、せっかくこの人たちとまた会えたんだ。
もう一度、同じ景色を見たいんだ。
◇◇◇
陛下に会った後、テオと二人で図書室に向かっていた時に、「明日の朝、話したいことがある」と言われた。用件は分からなかったが頷いた。
その約束通り、今朝はいつもより早めに出勤して、待ち合わせの中庭に向かった。
今日も明るい黄緑色の葉をつける樹が並ぶ中庭を歩き、少し奥に入った、人気のないベンチにテオがいた。イリスに気づくと軽く手を挙げてくれた。
「おはよう。お待たせ、早かったね」
「おはよ。俺もさっき来たところだよ」
朝が似合う爽やかなテオの隣に座る。周りに誰もいないので、静かでのどかで、落ち着く。目の前を歩いていた小鳥は地面に落ちていた何かを啄むと、飛び立った。
テオが一つ、息を吐いた。
「あのさ。俺も対樹部隊に入ることにした」
「……は?」
落ち着いた気持ちは一瞬で消えた。
今、何て言った? テオが対樹部隊に入る?
反射的に隣を見るが、彼の表情は先ほど挨拶した時と変わらなかった。
「お前が対樹部隊に入ったら、俺も入るって決めてた。もう宰相様には話してある」
「え、何で。死ぬって」
「何でって、俺がそうしたいから。死ぬのはもう覚悟した。この後リュカ様にも話す」
「やめて。私の大事な人にテオも含んでるんだよ? 人生二度目だからって、わざわざ自分から死にに行くことないでしょ」
「もう決めちまった」
焦るイリスと対極に、テオはとても落ち着いている。まずい。本当に覚悟を決めている。ちゃんと本人の中で話がついてしまっている。これは、変えられないやつだ。
でも、イリスとしては、すんなり受け入れられる話ではない。
「今世で剣は握ってるの?」
「貴族の教育としてそれなりにはな。これでも前世の経験があるから、普通の騎士より少し強いくらいだぞ。まぁ、お前やダイさんたちには全然及ばないから、これから訓練を頑張るしかないけどな」
「やだ。訓練しなくて良い。生きて」
「でも、俺が死ぬのはお前と一緒だから」
「……」
あっさりと言われたその言葉に、返す言葉がなかった。死ぬ時は、テオと一緒。
抵抗したいのに、納得もしてしまった。
だって、前もそうだった。また彼と一緒に死ぬことには、違和感がない。
「……リュカ様はどうするの? リュカ様にとっても間違いなくテオは大事な人だろうし、リュカ様の周りの人間ばかりいなくなることになるよ。絶対、悲しませるよ」
「それなんだよなぁ。俺もそこは心配している。けど、もう決めたんだ」
「もぉぉ」
困ったように顎を搔くテオに、深い息が出る。もう、どうすれば良いんだ。ベルガ殿下、ダイさん、イリスだけでもリュカ様にとっては辛いはずなのだ。そこにテオまで加わったら、今時点で彼の周囲にいる人間が皆いなくなる。
そうなったら、また一人になってしまうのではないか。あんなに優しい人なのに、そんな辛い思いはさせたくない。せめてテオが残ると考えていたが、これは予想外だ。
「……昨日、リュカ様のことは、私から陛下には相談はしてたから、何か手は打つことになると思う。それでも、絶対にテオの代わりにはならないんだからね」
「そっか。それなら少しは大丈夫かもな。良かったぜ」
「この話、他に誰にしてあるの?」
「宰相様とダイさん。あと家族だな」
結果的にイリスがテオを巻き込んでしまって、ご家族たちに申し訳ない。けど、説得できる気がしない。当てつけるようにテオに軽くパンチをしてみる。
「お前、これ猫パンチじゃん。ダイさんが余裕そうにするはずだわ」
「本気じゃないし、私が本気でやっても大した威力にはならないよ」
「そうなんだろうな。あー、俺、リュカ様言うのが一番緊張するわ。心拍数が上がってきた」
テオが深呼吸をしている間、イリスは本当にどうしたものかと思う。昨日ようやく悩みは晴れたはずなのに、またもやもやとしている。
仕事の時間が近づき、宰相室の前でテオといったん分かれた。朝の挨拶をしにベルガ殿下の執務室に向かっていると、後ろからダイさんが肩を組んできた。
「おはよ! あれ、何か今日ぺっしょぺしょじゃね? めっちゃ耳垂らした猫みたいだけど、どうした?」
「おはようございます。テオの部隊入りの話で、ちょっと」
「あー、それか! 俺は会議の後に、相談っつーか決意は聞いたけど、まぁ驚いたよな。テオは今世では剣握らないんだと思ってたわ」
「はい……テオは普通に生きててくれると思っていましたし、起因が私とか……あとリュカ様もどうしよう」
「そうなるよな! っかー、テオ! あいつ、イリスをこんな、ぺっしょぺしょにするとはなぁ!」
小声で伝えた内容に、ダイさんが本当に困った顔で、大きな手で肩をバシバシと叩いてくる。そうか、会議の後にはもう決めていたのか。
「そういうのこそ、顔に出してくれれば良いのに」
「本当だよな! あいつ変なところで天然っつーかなぁ。本人の中では普通に捉えてるから顔に出てないんだろうなぁ。リュカ様にはこれから言うのか?」
「そうらしいです。反応が怖いですね」
「うわー、あー。イリスの件がようやく落ち着いたのに、また荒れるのかぁ。難儀すぎるだろ」
ダイさんも頭を掻いている。そうこうしているうちに殿下の執務室が見えてきたので、とりあえず皆を心配させないように顔を揉んで表情を柔らかくした。
極力いつも通りに挨拶をするイリスたちに、皆も普通に返してくれた。ベルガ殿下の前まで行くと、殿下はまた立ち上がってイリスの頭に手を置いた。
「えっ!? ベルガが頭を撫でてる! 俺にはやってくれないのに!」
「うん? 今日のは何か褒めてくれてます?」
「間違いではない」
「今日のって何! 褒めるって何! 二人にしか伝わらないのやめて! そういうのは俺も入れて! あとイリスの髪すげぇことになってるけど!」
横でダイさんが騒ぎ出し、満足したらしい殿下は手を離して座った。撫でられるとどうにも口が緩んでしまって、ダイさんのこと言えないなと慌てて引き締める。
乱れた髪で前が見えないので、整えながら今日も緊急の用事はないことを確認した。
「ベルガ、俺のことも撫でる!?」
「撫でねぇ」
「っかー! 何でだよ! あ、見てごらん、皆も羨ましそうにしてるじゃん」
「あ?」
その言葉にイリスも後ろを向くと、部屋にいた補佐全員が、ぽかんと口を開けていたり、羨ましそう目を輝かせながらこちらを見ていた。
「殿下……ラーナス様とか特に視線がすごいですよ」
「あいつ、お前のことは純粋に尊敬してるからなぁ。いつも頑張ってるんだし、撫でてやれば?」
「……ラーナス、髪崩れるぞ」
「構いません! お願いします!」
ラーナス様がすごい速度で殿下の前に立ち、頭を差し出した。一つ息をついた殿下は、彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。
今朝も隙のないオールバックにしていた金髪は、初めて見るぼさぼさの状態になった。
髪は完全に終わっているが、ラーナス様の顔は紅潮していて、とても満足気に鼻の穴を膨らませている。
「え、これ皆いける流れですか? 殿下、俺も経験してみたいっす!」
「じゃあ私も。たまには撫でられる側になりたいです」
「そ、それなら、僕も……」
「ネルさん、せっかくなので俺らも行きましょう!」
「う、うむ!」
興味津々に目を輝かせたラミーさんをはじめ、皆立ち上がって殿下の前に一列になった。
押され気味のベルガ殿下が、無表情ながら皆の期待に応えている光景が面白い。
「ラミー、お前あんな撫でられ方しても髪型まったく変わんねぇな!」
「くふふ、ねえさん御用達の癖毛ですから」
「マリッサさんは髪紐は解けそうですが、髪はサラサラしたままですね」
「ふふっ、結び直さないと。でもこれ良いわね」
「リッタは余計に髪がふわふわして犬すぎるな! 尻尾が見える気がするわ」
皆が盛り上がっている中に訓練着のグレイさんが入ってきて、この状況にすごくびっくりしていた。
「グレイ、今日はベルガが頭を撫でる日だ! そうそうないから、並んどけ!」
「頭? え、皆髪の毛すごいですけど……」
ダイさんに背中を押されたグレイさんも、白い髪をぐしゃりと撫で回されていた。
「ふふっ、不思議で仕方ないという顔ですね」
「はい……来て早々、予想外なのですが」
「そして最後は俺! 皆にやったんだから俺も!」
「今日は何なんだ……」
グレイさんは呆然としているが、皆はほくほくと乱れた髪を整える。殿下は、しっかりと腰を曲げたダイさんの頭にも手を置いた。
「おい、痛いんだけど! 他の奴にはそんなじゃなかっただろ!」
「元からお前の髪がぼさっとしてるから引っ掛かるんだろうが」
「でも撫でられたいじゃん! 女の子が良いけど今日はお前で勘弁してやるよ! おい、いてぇって!」
「ダイさん、髪が引っ掛かりすぎて顔がすごいことになってますね」
「これでこんなに楽しむの、うちくらいよねぇ。皆いい大人なのに。んふふ!」
「おっ、ねえさん上機嫌っすね! 今朝は全員揃って良かったなぁ」
「おい、仕事に戻れ」
『はい!』
手をパンパンと払う殿下は「こいつら、しょうがねぇな」と言うような呆れたような顔だが、決して不機嫌ではなかった。
思いがけず朝から楽しんでしまったが、部屋を出るとテオの話が頭に戻ってくる。頭を振って真面目モードに切り替えた。
少し遅くなったのでテオは先にいるだろうなと思いつつリュカ様の執務室に入ると、二人は思い切り向き合っていた。そして案の定、空気がとても重い。
挨拶を交わし、いつもの二人の間に座るが、会話の邪魔になる気がして少し椅子を引いた。
リュカ様は非常に険しい顔で黙り、テオは困ったように「すみません」と謝っている。
「……イリスは知っていたのですか?」
「さっき聞きました。説得できなくてすみません」
「そうですか……何で私の周りの人間ばかりこうも……テオ、あなたばかり覚悟を決めて私は決まっていないのですよ。何故わざわざ危険に身をさらすのですか」
「危険に突っ込みたいわけではないのですが、俺が死ぬ時はイリスと一緒なので」
「は?」
イリスは頭を抱えた。当たり前のように言っているが、それはリュカ様には伝わらないだろう。どう説明するの、と目配せをすると、彼は「あ、やっちまった」みたいな顔をしていた。
「二人が仲良いのは知っていますが、そんな夫婦のようなことをする間柄なのですか?」
「あっ、いや違うのですが、ある意味でそういう運命みたいな……?」
「言い出したテオが急に動揺し出したのも含めてよく分かりませんが、どうしたものですかね。まったく説得に応じる気がなさそうですし。……イリス。あなたから見て、テオは怪物と戦える人なのですか? 無駄死にが一番悪いですよ」
そう言われて、まだ焦りが残るテオを見る。落ち着きなく肩を揺らすその様子には頼もしさは感じない。けれど、この人は……
「……それなりに強いですが、紫の実の怪物にも敵わないと思います。でも、部隊入りを応援するわけではないですが、テオは私に届く人ではありますよ。運を持ってるのですよね。多分ただの偶然ではなく、そういう人なんだと思います」
「イリス……」
「……経験したような言い方をしますね。急に、すごく大人びましたし」
つい前世を思い出してそのままの言い方をしてしまった。リュカ様がとても不思議そうな顔をしてしまっている。テオは感動したみたいなオーラが全開だが、それどころではない。頭を振って、再び切り替えた。
「そんな気がする、という話です! ちなみに私もまだテオが部隊に入るのは反対です。でもテオがあまりに決めきっているので、頑固なのです」
「イリスとしては、『死ぬ時は一緒』というのは納得しているのですか?」
「納得したいわけではないのですが、している節はあります」
「今日の二人は不思議ですね……」
というか何故かイリスがテオのために説得してるみたいになっているが、彼の決意をひっくり返せるならその方が良い。イリスだけではなく、リュカ様もこんなに悩み、落ち込んでいる。
「テオ。やっぱりやめよう。リュカ様と生きて」
「やめない。俺の最期はお前と一緒なんだってば。決まってるの!」
「ほんっとうに頑固!」
「ちょっと……もう無理になってきました」
「ほらもう、リュカ様がぺっしょぺしょになってる! あ、そうだ。リュカ様、ロトに会いに行きましょう。まん丸の体を見てひとまず落ち着きましょう」
「……良いでしょう。たしかに落ち着くべきではあります。ここ数日ずっと情緒が不安定でしたし」
「ぺっしょぺしょって何かダイさんみたいな言い方だな……」
「ダイさんへの理解度が高いね。まさにそうだよ」
三人で再び裏庭に行った。奥の方に入ってすぐ、ベンチの真ん中で、まん丸のロトが堂々と寛いでいた。こちらを見て短い尻尾を揺らしている。
イリスとリュカ様は、ロトを挟むように座った。それを見たテオも、リュカ様の隣に腰を掛けた。
「ロトー、いてくれて良かった。癒して!」
「ふっすー?」
「また猫吸いしてる。お前それ気に入ってるんだな」
「ロト、テオがわざわざ自分から死ににいきたがるのですが、どうしたら良いですか?」
「リュカ様、猫にそんな真面目に相談する感じですか?」
「ふぅぅ、にー……む!」
『こいつの人生なんだから好きにさせてやれ、か……』
「いや、今のは何で二人とも分かるんですか!? あれ、俺がおかしいの!?」
顔から離したロトをまたリュカ様との間の席に戻して、今度は手でもふもふを堪能する。丸くて、柔らかくて、じわじわと癒やされる。
リュカ様の手も取ってロトの背中に触らせてみたら、そのまま撫で始めた。欠伸をするロトからは、器の大きさを感じる。
「ロト、そうは言ってもテオは私たちの大事な友だちなんだよ」
「そうです。私だけ残されるのも嫌ですし、説得してください」
「しかも続くのですか……?」
「ふすふす! にゃーう!」
「『もうしょうがねぇだろ、こいつは。リュカ様には俺がついてんよ! 俺はめっちゃ生きるぜ』みたいなことですね」
「そうですね。たしかにロトは長生きしそうではあります」
「だから何で伝わってるのですか!? 本当にこいつは長生きする気しかしませんけど!」
「ふー」
「くっ、ロトが俺の顔を見て『やれやれ』みたいなため息つくし! 何だこいつの大物感!」
ロトのふわふわの手を握る。テオがツッコミに忙しそうだが、イリスの心は落ち着いてきてはいる。リュカ様も落ち込んている様子だが、先ほどよりは穏やかに見える。ロト効果だ。
『……』
「二人して同時に黙るし……リュカ様とイリス、たまにすごく気が合うの何なんですか。ちょっと寂しい……今とてもダイさんにいてほしい気分……」
「ロトもこう言ってるし、テオの気持ちは変わらなそうだから、こちらも覚悟を決めようとしてるの」
「そうか……うん? ロトがリュカ様の膝の上に移動したと思ったら、寝始めてません?」
「何故ここで……イリス、何とかしてください」
「可愛いので無理です」
落ち着くどころか、テンションが上がってきた。この絵面は大変良い。ずっとこのままでいてほしい。
「……テオ」
「えぇと、ロト、俺の膝に来い」
「うにー?」
「『気持ち良く寝てるところを起こすな』だって」
「お前っ、そもそもリュカ様の膝で寝るとか、すげぇことなんだからな! 動物じゃなきゃ許されねぇぞ?」
「にゃふふ」
「あっ、何かまたバカにされてる! ってか、ほんっとに丸すぎるんだけど何!?」
からかうロトに、テオが振り回されている。鼻を突かれたりして楽しそうなその様子を眺め、前に向き直って深い息をついた。
彼の決意を否定し続けるのも、もう辛いのだ。
「……」
「イリス……」
「テオの思いを、尊重します」
リュカ様にそう告げると、眉を下げた彼はイリスの手を握り、少し俯いた。
「……私もテオの意思は、尊重したいのです。でも、応援はできないのです」
「それで良いと思います。それもまた、テオを大事にしているということです。今の最大限の理解で歩み寄れれば、もう充分すぎると思います」
「そうですね……」
顔を見合わせ、頷く。
その様子を、テオが優しく微笑んで見ていた。
「テオ。聞いてたね?」
「二人とも、ありがとうございます」
「まったく、いい笑顔ですね。私の心労は増えたというのに」
「すみません! でもここは譲れませんので!」
「はぁ……執務室に戻りましょうか。予防薬の方も進めて、二人を始め、皆の死亡率を下げないといけませんから」
リュカ様が眼鏡を押し上げて立ち上がり、イリスたちも尻尾を振ってご機嫌なロトに挨拶をして、歩き出した。
「テオ、所属はどうなるのですか?」
「宰相様が融通を利かせてくださって、今まで通りに加えて対樹部隊ということになるらしいです」
「テオもこちらも続行なのは良かったです」
嬉しそうに笑うテオに、イリスの気持ちも前を向いてくる。彼の覚悟を、少し嬉しくも思い始めた。横を歩く彼にまた軽いパンチをしたら、満足気な顔を返された。
昼食後、リュカ様の執務室に戻っていたら、テオが「あ!」と立ち止まった。
「そうだ。陛下のところに部隊の許可証を届けに行ってきますね! すぐ戻ります!」
「……早足で行ってしまいましたね」
「部隊入りにそんなに張り切らなくても、と思いますが。まぁどうせ入るなら早めが良いのでしょう」
リュカ様と二人で部屋に戻り、椅子に座ったところで、手を差し出された。
「イリス、手を貸してください」
「はい」
自分の手を重ねると、両手でぎゅっと握ってきた。そして、その手をじっと見ていた。
「どうしました?」
「今日は本当は、朝から……というか昨晩からずっと、こうしたかったのです。テオの件でそれどころではなかったので、ようやくです」
大きな表情の変化はないのに、何かを抑えるような、それでいて優しい顔をしている。
理由は分からないが、温かい感情が伝わってくる気がした。イリスも握り返して、微笑む。
元気にテオが戻ってくるまで、手の温かさは続いた。




