甘い毒
コーネリアスがルシナの耳元に吸いついた。脈打つのが彼に伝わりそうで、ルシナはそわそわと落ち着かなくなる。しだいに、首すじ、喉、鎖骨と唇が降りていって、指先まで身体が熱くなった。それを察したのか、コーネリアスはなだめるようにルシナの手に指をからませた。
「……ふ」
思わず息がもれると、彼が胸元に顔をうずめて口で器用にルシナのネグリジェの襟口を咥える。薄皮を剥くように、ルシナの肌をすっかりあらわにしてしまった。そのまま、ふくらみがやさしく沈むように唇を這わせる。
「……ぁ」
胸の先を口に含んだコーネリアスが、じっと窺うようにルシナを見あげる。すぐにルシナの頭の中には小さな波が押し寄せてきた。
ふわふわ、する……こんなにやさしくされたら、私……。
じわ、と涙が浮かんでくる。
「ん、は……はぁ……」
熱い舌でゆっくり虐められると、腰が勝手にくねる。ルシナが泣きそうな声をあげている間に、コーネリアスはスカートに片手を忍ばせる。大きな手で腰をなでられて、おなかの奥がぞくぞくした。
緊張のゆるんだ脚を割って、無防備にさらされたそこ。彼の吐息がふれて、何をされるかわかった。
「ゃ、それ……っ」
蕾を丸ごと食まれ、ルシナの目がくにゃりと歪んだ。
「……ゆっくりしてるだろ」
諭すように、コーネリアスがこもった声でつぶやく。このままされるしかないんだ、とルシナは甘い焦りと期待で混乱した。彼が深く鼻先をうめてくる。
「ふーっ、ん……、ふー……っ」
ルシナは身体をじんわり駆けあがってくる刺激を逃そうと、浅く息をくり返す。あっという間に湿った音が部屋をうめつくす。
だめ、だめ、気持ちいいのきちゃう……♡
「ぁ~~~~♡」
爪の先まで甘くしびれて、切ない声がもれる。ルシナが肩を震わせている間に、コーネリアスは彼女をひょいと抱きあげて、自分もソファに腰をおろした。ボトムをくつろげる彼にルシナの目は釘付けになった。血管の浮き出たそれが、向きあったルシナの腹にべちんと当たる。また、ぞくぞくが膨らむ。コーネリアスがルシナの細いくびれを持ちあげて――
こんなの挿入らないよぉ……♡
身体が彼の上に沈みこむと、不安をよそに入口はねっとりと飲みこんでいった。おしりをやさしく支えられ、おなかがぴったりくっつくように抱きしめられる。
「~~~~っ♡」
目の前がちかちかして、身体の芯がきゅんとする。見あげると、コーネリアスはぐっと眉を寄せて耐えるような顔をしていた。抱きしめられたままゆっくり時間が過ぎる。
おなかくるしいのに、きもちいい……♡だっこもすき……♡
とろけた顔で首まで真っ赤にしたルシナを見て、コーネリアスは内心イライラした。それでも、手つきはそっと彼女の腰を掴んだ。ぬ~〜っとギリギリまで引き抜き、また根元までくぷんと埋めこんでいく。ルシナはぴくぴく震えた。
やさしい……♡きもちいい……♡
ゆったりしたリズムでくり返されると、ナカがまとわりつくように甘えてしまう。耳の奥までぼうっとしてきた。
「ん、これ、すきぃ……♡コーニー……」
ルシナは無意識にコーネリアスの黒髪にくしゃっとふれ、頭を引き寄せた。
「……!」
至近距離の彼の目が丸くひらかれたのを見て、ルシナは我に返った。
――私、自分からキスなんて。
唇が離れたわずかな隙間でコーネリアスが「チッ」と舌打ちした。
「この……ッ」
吐き捨ててルシナをソファに押し倒す。内ももを割り、ほとんど折りたたむような形で彼女にのしかかった。
「このッ! この……ッ!」
言葉とともに奥をガンガン殴りつけられ、ルシナは悲鳴をあげた。
「ゃあっ! あっ、~~~~っ!」
「悪い女だな! 君は!」
律動はソファが沈むほど重たく、湿った破裂音で部屋は満たされる。荒々しくつらぬかれても、ルシナのたっぷり甘やかされた身体は気持ちよく痙攣し続けた。
「ぁー……クソッ、締めつけるなッ!」
「ごっ、ごめん……ごめんなさぃ……っ」
わけもわからず謝りだすルシナの顔の横に、ぐっと太い腕がついた。コーネリアスの動きがぴたりと止まる。耐えるように背中を丸めた彼が、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「……ゆっくり、ゆっくり……だったな」
「……?」
突然落ち着いた彼にルシナが困惑していると、彼はフーッと何度も息を吐き、また元のようにもったりと腰をゆらしはじめた。
「……ん、ぁ」
……そっか。ゆっくりしてって頼んだから。
こそばゆいような、たまらない気持ちで満たされるルシナ。ふふ、と笑うと――コーネリアスが喉に手をかけてきた。クッと指に力が入り、一瞬で冷や汗が伝う。
「いい気になるなよ」
「ひ、ぁ」
「君があれこれ注文をつけようと、聞き入れるかは俺が決めている」
冷たい声。それと同時にゆっくり焦らすように引き抜かれて、ぞわぞわと肌が粟立った。
「君を悦くしてやるのも、痛めつけるのも俺が好きにする。君が俺を惑わしてあやつるのは許さない」
くぷ……と、ことさらゆっくり埋まるそれで、ルシナはのけぞった。怖いのに甘ったるくて、息ができない。
「ふ……ぁ、あ~~~~♡」
「ただ……俺から与えられるものを受け入れるのが君の役目だ。ルシナ」
✧ ✧ ✧
弦楽器の低音が曲の終わりを告げた。
とある屋敷のミュージックルームでは、恒例となったサロンが開かれていた。小編成の演奏と数名の貴婦人たちの会話が交わる気取らない会ははじまったばかり。最初の話題になったのは下世話なゴシップだ。
「今朝のビラご覧になりました? 『奇癖の狂人に囚われた亡国の姫』ですって。彼女、地下牢に幽閉されているらしいわ」
「拷問されてるってことよね!?」
「あらぁ、私は『冷徹な戦鬼が恋で人の心を取り戻した』と伺いましたけど。社交界に顔を出さないのも、彼が寵愛のあまり王女を囲いこんでいるせいでは?」
「夫人がおっしゃるのならそうなのでしょうね。所詮ゴシップですし、幽閉は作り話よ」
「いえいえ、どちらでも楽しいじゃない。血に飢えた狂人でも、独占欲にまみれた恋人でも」
きゃあきゃあ盛り上がる貴婦人たち。
「アシュフォード閣下、ハンサムだし! 良い男の噂話は若返るわぁ~!」
「あら、お顔をご存知なの!?」
「主人のツテで結婚式に参列しましたのよ」
「まあ羨ましい! 私も見てみたいわ!」
キィ、と奥の扉が音を鳴らした。
「皆さんおそろいで」
貴婦人たちの視線がいっせいに注がれる。サロンでその扉から入ってくる人物はひとり――ホストしかいないから。
「ひとつお知らせがあるの」
堂々とミュージックルームに歩み入るその夫人は、浅くシワが刻まれた口元をゆるめた。
「今をときめくアシュフォード夫人から返事をいただいたわ。我が婦人会のバザーにご参加くださると」
✦ つづく ✦




