ep81 最後の戦い
飛び込んだライムの攻撃を避けることを見越して、ヤルグが魔法を放つ。
ヒルダは剣から水の衝撃波を飛ばし、それを相殺するとライムの攻撃を躱して背中を切りつける。
転がるように躱したライムが足払いをかけるが、跳んで躱したヒルダがそのまま水魔法でライムを吹き飛ばす。
そこへ切り掛かったレックスの斬撃を剣で弾くと前蹴りを入れ、同時に剣でオリビアとフィーナに衝撃波を飛ばし、追撃を防いだ。
そして、足元に放った紫水で滑るようにヤルグへ切り掛かる。
ヤルグはそれを剣で押し弾き、ヒルダの足元で魔力を弾けさせるが、バク転で躱したヒルダは再び突進した。
両手の曲剣に寄る素早い連撃を何とかヤルグが弾いている隙に、オリビアが背後から強襲するが、足元から噴き出した紫水がオリビアを襲った。
ヤルグが薙ぎ払うように白炎を放ち、ステップでヒルダが下がった瞬間に牙突で飛び込むが、身体を反らすように躱したヒルダの水魔法で反撃された。
横から来たライムに掌底を躱した瞬間、フィーナの雷撃を腕に受け、一瞬止まったヒルダだったが、背後から切り掛かるレックスの斬撃を屈んで躱し、そのまま回転するように蹴ると追撃にきていたライムに当てて、二人を吹き飛ばす。
ヒルダは剣をフィーナに向けて、ニヤリと笑う。
「貴方が初めに当たてわね。大したものよ。」
そう言って剣から衝撃波を飛ばす。
咄嗟に避けたフィーナだったが、避けた先にもう一方の剣から衝撃波が飛んでいた。
「あ!」
身構えたフィーナだったが、横から飛んできた闇球が当たり、フィーナに辿り着く前に爆発を起こした。
「あ、ありがとうございます。」
「気にするな。」
ヤルグは余裕を見せるヒルダを睨みつけた。
ガイラックの死肉を喰らった時点で形態変化は予想していたが、予想以上に力となっていた。
5対1と言う数的優位はあまりないと言っていいだろう。
「次は誰から来るの?そちらから来ないなら私から行くわよ。」
そう言うとヒルダの周りに紫水が沸き上がり、彼女を隠すように水柱が出来る。
皆が身構える中、水柱の中から飛び出し、レックスに切り掛かる。
レックスはその攻撃に合わせて、カウンターを放つ。
ヒルダに当たる瞬間、ルークスヴェインを発動して剣が輝く。
ヒルダの剣と共に、その身体を切り裂いた。しかし、切り裂いた瞬間、ヒルダの身体は紫水になり消えた。
「偽物!」
直後に水柱から飛び出した本物のヒルダがレックスを切り飛ばす。
レックスは呻き声を上げ、地面に転がる。
追撃に紫水を飛ばそうとするヒルダにオリビアが切り掛かる。
オリビアは連撃でヒルダを後退させていく。
片手の剣で弾きながら下がっていたヒルダは、もう片方の剣から足元に紫水を放つ。
水に浸り、滑らかに動くヒルダに対し、オリビアは足を取られてバランスを崩した。
ヒルダは両手の剣を球体へと変化させ、オリビアの腹部に直撃させて吹き飛ばす。
「ぐはぁ!」
その先にいたエミリアを巻き込み、壁に激突する。
「きゃあ!」
2人は倒れ、痛みで動けないでいた。
ライムが跳び蹴りを入れるもヒルダは巧みに躱し、足払いを掛ける。
跳んで躱したライムはそのまま踵落としを仕掛けるが、片手で受け止めたヒルダがねじる様に叩きつける。
素早く立ち上がると同時に足払いを掛けたが、ヒルダはバックステップで避けた。
ライムが掌底で追撃をかける。
身体を開いて避けたヒルダはライムの首を掴み、そのまま壁まで投げ飛ばし、直後に水球を放つ。
壁に激突し、水球を喰らったライムは、立ち上がろうとしたが、力尽き倒れた。
フィーナの方を向いたヒルダが水球を放つ。
フィーナがマジックシールドを展開するも、その強さに防ぎきれず被弾した。
その瞬間、ヒルダの手から紫水がムチのように伸び、フィーナの足首に巻き付くと、放り投げられ地面に叩きつけられた。
ものの数分で5人を制圧したヒルダがヤルグに向く。
「メインディッシュの時間ね。」
やはりこのままでは勝てない。
ヤルグは悟った。最早、属性相性だけの問題ではなく、力の差が大き過ぎた。
この差を縮める手段はひとつだけ。
ルグリアスと話したあの日から、心の何処かにあったシナリオ。
人間として王になる。
王になる気はないが、それでもこの地に生きる以上、人間足り得る必要を感じていた。
だが、そんな事を言っている状況ではない。
人間を止める時が来た。
ヤルグは拳を握り締め、力を込める。
ヤルグの周りでバチバチと魔力が弾け、大気が震えていく。
起き上がろうと膝立ちになっていたレックスが呟いた。
「・・・ヤルグさん。」
細身だったヤルグの身体の筋肉が盛り上がり、腕が太くなる。
髪の毛は青みがかった灰色へと変わり、肌は蒼白くなっていく。
爪が鋭く尖り、側頭部から2本の角が生える。
筋力だけでなく、魔力も向上していた。
黙って見つめていたヒルダがにニヤリと笑いながら言う。
「それが貴方の本当の姿かしら?」
「こうなった以上、元の姿へは戻れん。」
ヤルグは剣を投げ捨てた。
「だが、貴様を殺せれば、それで構わん。」




