表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
duality  作者: eight
PR
76/84

ep75 魔王城

進軍の時を迎え、兵たちの前でオリビアが喋る。

「これが最後の戦いになるだろう。我々は多くの犠牲を払った。しかし、こうしてガイラックを追い詰めるところまで来た。あと一歩だ。世界を救う為、あと少し、皆の力を貸してほしい。」

力強く士気を上げるのではなく、静かに、そして淡々と告げた。

兵たちもそれを真摯に受け止める。

オリビアがレックスに譲る。

レックスは最早、勇者の子孫と言う偶像ではなく、その実力も皆に認められている。


「ガイラックを必ず討たなければならないけれど、これ以上、悲しみを増やしたくはありません。」

多くの者が何かしら失った。それはそれぞれが実感していることだった。

「戦場では難しいかもしれませんが、命に代えてもと言う考えは捨てて下さい。勝利し、必ず生きて帰る。それを胸に刻んで欲しい。」

何人かの兵が頷くのが見えた。


オリビアが剣を取る。

「さぁ、行こう。我々の強さを見せ付ける時が来た。」





ムビアナの北に位置する魔王城。元々は数百年前にヤルグが建てた城だが、その歪な形に面影は無かった。

城を囲うように作られた堀には紫色の沼が広がり、ボコボコと気泡が弾け、周囲に毒の瘴気をまき散らしていた。

魔王城に続く道は、人が3人並んで渡れる程度の幅の橋だけだった。

人間軍は沼の外側の森で進軍を止めた。


「ほとんど、魔物は見当たりません。」

「いくら何でも少なすぎるな。」

偵察兵の報告にオリビアが溢した。

「罠かもしれませんね。」とヴィクトール。

「私とライム王女、レックス、フィーナで先行する。奴らが潜んでいる可能性は高い。注意を怠るな。沼地からも距離を取っておけ。」

オリビアは兵たちに注意を促す。



4人は橋の前に立つ。

周囲を警備していた、いくらかの魔物は倒した。

こちらの進軍には、とっくに気付いているはずだが、一切の慌ただしさが見られない。それが逆に不気味さを際立たせていた。

「渡ってる途中で橋を壊されたら、終わりだね。」

ライムが言った。

フィーナが杖を翳して、魔法を放つと皆が青く光った。

「一応、俊敏さを上げておきました。」

「済まない。」

「行きましょう。」

レックスの言葉に4人が橋を進む。

警戒しながら慎重に進む4人だったが、特に何事もなく渡りきってしまった。


「こうなってくると、いよいよ不気味だね。」ライムが溢す。

「本当に兵が少ないのでしょうか?」フィーナが疑問を口にした。


「ガイラック様の意向です。」


驚いた一同が見ると、扉の前にフクロウの顔をした女が立っていた。

オリビアとレックスが素早く剣を構える。

「誰だ貴様は?」

「お初に御目にかかります。ガイラック様の秘書官を務めておりますヒルダと申します。」オリビアの問いかけに答えながら、女は深々とお辞儀をする。

「ガイラック様は敬意を持って、直々にお相手したいとの事です。」


一同は顔を見合せ、困惑した。

「わざわざ出迎えに来たと言う事か?」

「いえ、そうではありません。万が一、逃走を図られては困りますので。」

そういうと秘書官はふわっと飛び上がり、闇魔法を放つ。

橋に当たると一部が壊れ、そのまま崩れるように橋は沼の中へ沈んでいった。

「あぁ!」

「橋が・・・」

「貴様!」オリビアがヒルダに凄んだ。

「ご心配なく。元より皆様の命はここで終わりですので、帰り道の必要はありません。」

「構わない。」レックスが冷静に言った。

「どの道、退くつもりはないさ。」

レックスはヒルダを真っ直ぐ見つめた。

ヒルダも見つめたが、一瞬だけレックスの持つ聖剣を見た。

「ご健闘を。」


ヒルダは沼の向こう岸にいる兵たちを見る。

「お連れ様がお暇になるといけませんので。」

そう言って赤い光を空に放つ。

それを合図に沼の向こう岸で、沼の中から次々と魔物が飛び出した。


「それでは、御ゆるりとお楽しみ下さい。」

ヒルダは煙に包まれるとフクロウの姿に変わった。

「うわぁ!」とライムが驚く。

そのまま、魔王城の中へと飛んで消え去った。

「何なんだありゃあ。」


「皆さんは大丈夫でしょうか?」

フィーナの言葉に4人は振り返り、沼の向こう岸を見た。

沼の中から出てきた魔物の他に、森の中に潜んでいた魔物も現れていた。場所によっては挟み撃ちの形になっていたが、数としては人間側の方が多い。

遠くでヴィクトールが剣を振り、進むよう合図するのが見えた。


「大丈夫。皆の力を信じよう。」ライムが答えた。


「行こう。」レックスが扉に手をかける。

「僕たちの力で、終わらせるんだ。」

そうしてゆっくりと扉を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ