ep66 決戦②
バルドスが走り出す。以前よりも速度が上がっていた。
咄嗟にレックスが剣を振るが、それを搔い潜るように躱し、腹部に一打入れた。
レックスは衝撃で少し下がったが、すぐに斬り返す。
バルドスは後ろに下がって避け、勢いをつけて切り掛かった。
レックスはそれを剣で受け止める。
「最早戦争なんて関係ねぇ。ただお前を殺すだけだ。」
「狂人め。」
「戦争なんて、ただの殺し合いだろう?身を投じてる奴は皆狂ってるさ。」
どちらともなく剣を弾き、互いの剣撃を受けあう。
「僕は人々を守る為に戦ってる!」
レックスが剣を振る。バルドスが一歩下がって躱す。
「そのてめぇに都合の良い理由で、どれだけ殺した!」言いながら体当たりをした。
レックスは肩を前に出し、踏ん張ることで体当たりを止めた。
「自分を正当化したいだけだろ。」
「一緒にするな!」レックスは肩に力を入れ、バルドスを押し弾くと切り上げた。
バルドスは剣で受ける。レックスは魔力を込めたが剣は光らなかった。
ルークスヴェインの本質を見抜いたバルドスが、剣がぶつかる瞬間に一瞬だけ剣を引いていた。
「お得意の奴はどうした?」
「くっ!」
「右手の借りは返させてもらう!」
バルドスは一瞬剣に力を入れて弾くように見せかけ、レックスが力を入れた瞬間に剣を引き、往なすとそのまま回し蹴りを繰り出す。
まともに喰らったレックスは吹っ飛び転がった。
追撃で闇球を放つ。レックスもすぐさま光球を放ち、両者の間で爆発が起きた。
レックスは殺気を感じ、すぐに横に跳んで回避する。
爆発の中からバルドスの牙突が跳び、レックスがいた場所に剣を突き刺す。
「ちぃ!」
今度はレックスが仕掛けた。剣から光の衝撃波を連続で放つ。
バルドスは剣で受け続けたが、耐えきれず吹き飛んだ。
聖剣の力により衝撃波の威力も速度も上がっていた。
「てめぇ、その剣・・・」
「勇者アレンの物さ。」
「それはヤルグが持ってたはず・・・あの野郎。魔王の癖にとんだ恥晒しめ。」
二人の攻防は続いた。
ライムの回し蹴りをジェニアがふわりと浮いて躱す。
続け様にサマーソルトを繰り出すが、それも躱した。
ライムの動きは速かったが、宙に浮き、回避に徹しているジェニアに当てるのは困難だった。
「ちょこまかと逃げてないで、ちゃんと戦いやがれ!」
「嫌よ、蹴られたら痛いじゃない。」
「このアマ!」
フィーナが火球を放つ。ジェニアは即座にハート形の魔法を飛ばして相殺した。
「お嬢ちゃんの魔法程度じゃ、当たっても痛くないけどねぇ。」
ライムが拳を構えたところでジェニアが魔法を飛ばす。
ライムはバク転して躱した。
「くそっ!」
ライムの強力な技は少なからず力を溜める必要があった。だが、ジェニアはその隙を与えないように魔法を飛ばして、それを妨害する。
どちらも攻撃を与えられないまま、攻防が続く。
持久戦になればジェニアに分があったが、フィーナが補助魔法で持久力と速度を上げ、定期的に回復魔法を使っている為、引くことのない戦いが続いた。
痺れを切らしたジェニアが標的をフィーナに変えた。
「お嬢ちゃんを先に倒さなきゃダメね。」
ジェニアが連続で魔法を飛ばす。
魔法自体の速度はそれほど早くなかった為、連続ではあったがフィーナは跳んでそれを避ける。
ジェニアが魔法を飛ばしている間に力を溜めたライムが勢いよく飛びながらアッパーを繰り出す。
油断していたジェニアの足に当たった。
「いった~~い!!」ジェニアが太ももを押さえながら高く飛ぶ。
「アンタ、馬鹿じゃないの?今、お嬢ちゃんと戦ってる時でしょうが、この卑怯者!」
「ずっと飛んでる奴が卑怯とか言ってんじゃねーよ!さっさと降りて来い!」
「なんちゃって~」ジェニアはニタリと笑うと人差し指をクイっと上に曲げた。
次の瞬間、フィーナが避けていた魔法が地面に残っており、それが一気に爆発した。
「きゃあ!」フィーナが吹き飛び、倒れた。
「フィーナ!!」
ライムが駆け寄ると倒れているフィーナが掠れた声で二三喋るとそのまま気を失った。
ライムがジェニアを睨みつける。
「おお、怖。王女様でもキレるのね。」
「ふざけやがって!」
再び、ライムが仕掛けるも、ジェニアが難なく躱す。
「そんなに力んで大丈夫?もうお嬢ちゃんの援護はないのよ?」
それでも力任せに攻撃を続けたライムの体力は徐々に無くなっていった。
頃合いを見てジェニアが言う。
「そろそろ私のターンかしら?」
息を切らし始めたライムに向けて、強力な魔法を溜めようとした時、急に身体が重くなり地面へと落ちた。
「え!」
ジェニアが驚き、後ろを振り向くと倒れたまま杖を翳すフィーナがいた。
「ちょっと待って、アンタ僧侶の癖に重力魔法使えんの?」
フィーナは一時的に浮力を奪い、飛行出来なくする魔法をノビエ砦にいた時、ギザから教えてもらっていた。だがフィーナの魔力では詠唱に時間がかかる為、気を失った振りをして時間を稼いでいたのだ。
「おい!今は私と戦ってる時だろうが!」
ジェニアが振り向くと同時にライムの零禅掌が腹を捉える。
「かはっ!」声にならない呻き声を上げる。
そのままライムが力の限り、連撃を打ち込み、フィーナが止めた時には顔の原型が無いほどボコボコになったジェニアが声を出すこともなく倒れ、動かなくなった。
興奮冷めやらぬ状態で息を切らしているライムを回復しながらフィーナが声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう。」
「終わりましたね、敵討ち・・・」
「いや、まだだよ。」そう言って横を見た。遠くでベイルたちと戦うリベルが見える。
ライムが空を見上げた。
今にも雨が降りだしそうだった。
「フィーナちゃん。雷耐性を上げる魔法掛けてくれない?」
「はい。でも雷を使う敵は・・・」
「いいから、お願い。」




